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1
木枯らしの吹く中、旅路を行くフロリーナ姫の一行。
「ぶるるる〜。すっかり寒くなっちゃったなあ。休みたいなあ」
ラッキーがいつものように不満を漏らす。姫は新しいドレスで足取りも軽い。
「良い香り。軽やかで、寒さも薄らぎますし、さすが“妖精のドレス”です
わ。」
マリアもルーシーも風の子寒さには強い。ギャリソンも寒がってはいない。
精神力が強いのか、防寒対策はすでにしているのか。
「ようございました。妖精達の魔力もあなどれませんな。」
「でも、キャンディたちってちっちゃいからね。魔力なら私だって負けてな
いゾ。」
マリアが胸をはる。
「そう言えば、文献に…おお、お菓子の妖精のことが」
ギャリソンが鞄から古い小さな本を取り出す。一行は立ち止まる執事を置い
て先に行ってしまった。
「ありました。古代“チョコとキャンディは愛する者同士の永遠の心を示す
もの。その妖精がそろう時、相思相愛になれるお菓子が出現する”…とか。」
ビュン!
全員が猛スピードで戻ってきた。
「お、おいソレって」
「好きな人に〜、好きになってもらえるぅ〜」
「媚薬、チャーム、惚れ薬、ってこと?
ドヒャー!」
「―――ほ、惚れ薬、ですの?」
(伝説のキャンディとチョコのお菓子かー、
うひひ、ラッキー)
(ガッツさん、エッチなのがぁ、治るかしら〜?)
(ステディなしに、これでさよーならだーっ)
執事を除く全員目が燃えている。姫がいつにも増して真剣だ。鬼気迫る、
というものか。
(永遠の愛を成就できると…。そ、それなら、マルエッツの王子様と…い
え、アジロ様と…いえいえ、流浪の騎士様と…それからそれから…あ、
あ、あ〜〜)
ぷしゅー。姫がオーバーヒートする。
「む、ルーシーちゃん、何か企んでるな?」
「マリアちゃんこそ、にこにこソワソワ、変ですよ〜」
「お二人とも、おやめなさい。はしたないですわ。そ、そんなお薬で愛を
得ようだなんて」
姫が一番落ち着かない。女性陣にきな臭い雰囲気が流れる中。
「ん? あーっ、ラッキーがいない!」
ラッキーは亜光速でもと来た道を逆走していた。
「たいへんだー! あいつに惚れ薬なんて使われたら、全世界の女性のピ
ンチだあ!」
「皆さん、追いかけますわよ。飢えた狼から乙女達を守らなければ!」
2
ピクシーのいるサクルッケの森に戻ったラッキー。
「あれ? どしたの細い人。戻ってきたの?」
訝しむ二人の小妖精、キャンディとチョコボン。
「んなこたどーでもいー。あ、いや、妖精さん、ひとつお願いが」
ラッキーの要求に、
「二人一緒のお菓子か〜。やったことないけど…」
ちら、とチョコボンを見る。
「ぼ、ぼくならかまわないんだな。」
話し合い、協力しあうピクシーたち。
(ぐふふふ、こ、これで世界中のねーちゃんは、オイラのもんだ。超ラ
ッキー! まずは姫を、いよいよ我が手に! オイラが王様! 王様の
仕事はナンパと子作り! 誰にも文句は言わせないもんね〜)
ニヤケまくるカバン持ち。そうこうするうちに…
「出来た! チョコミント・アラモード。」
「う、うまく出来て、良かったんだな」
ミントとチョコのアイスに奇麗なデコレーション、繊細な透明の容器も
飴細工だ。
「やった〜♪ サンキュー!」
びゅーん。
ラッキーはつむじ風となって去って行った。

ようやく追いつくフロリーナたち。
「はあ、はあ。ラッキー! あなた、まさか良からぬことを」
姫の怒号にも悪びれることなく、
「どーしたんっすか姫? お疲れでしょ、おやこんな所に美味そうなデ
ザートが。グフフフどーぞー!」
ドガ! マリアの飛び蹴りが炸裂。
「そんな安直な手に乗るかー! 召喚! ナベシマ、やっつけちゃえ」
.ポン。軽い破裂音とともに現れた黒猫。
「んにゃ〜〜!」
バリリリリッ。猫爪の引っ掻き攻撃に続いて姫のランニングラリアット
が煩悩男に迫る。
「逃がしませんことよ!」
ガゴン!!
「ごーぎゃん!」
手にしたチョコミントは、
「わー、飛んじゃった!」
ひゅー・・・
「あ〜、伝説のお菓子があ〜」
弧を描き、
「あああ、どうしましょう」
ひゅーん・・
「オイラのもんだ〜〜!」
ぱく。
全員が手を伸ばした、が。なんと、ラッキーが食べてしまった。
「あああー、この考えなし、単細胞! ばかばかばか〜〜!」
「! あ〜、姫さまぁ」
「あ、らら、ら」
最後までチョコミントに手を伸ばしていたフロリーナ。そのまま口いっ
ぱいにお菓子を頬張ったラッキーに抱きついてしまった。
「ひいーっ!」
「もぐもご。あれ? あれれれ…なんかドキドキするぞ。やっぱホレ薬
のせい? た、たまらんっっ姫、オイラを好きにして〜」
3
静けさを取り戻したサクルッケの森。二人の妖精が湖上を飛び交う。
「初めてだったけど、お、美味しそうなお菓子が出来てよかったんだ
な。」
「…あんたのおかげダヨ。チョコボン」
「な?」
いつもワガママなキャンディとは思えない言葉にチョコの妖精が驚く。
「知ってるよ。いつもキャンディのこと助けてくれてたの。今のデザー
トも、村の人にいじめられた時も。キャンディのことかばって、励まし
て。あ、あ…りがと…」
頬を染め、つぶやく。
「キャンディ…ぼぼぼぼくは、その」

ちゅ。
軽い、キス。
「いつも、いつもキャンディのそばにいなきゃ、駄目だぞ。キャハハッ」
その頃、ラッキーは。
「バーサーカー・ドライバアアー!」
ずぎゃらぎゃぎゃ!
ドレスの裾がふわりと浮き、花びらのように回転する。優美に見えるが
その下は…。豪快な姫の回転キックを喰らい、餓えた狼は大地にキスを
していた。
そしてその頃ギャリソンは。
「・・・皆さん、何か勘違いをされているのでは? “お菓子の妖精たちは
相思相愛になる”と言いたかったのですが」
一人残されたギャリソンの呟きを聞くものはいなかった。
・・・ちゃんちゃん。
皆様、素敵なバレンタイン&ホワイトデーを(^^
あとがき。
2月は前に節分ネタ(それも掟破りなラ○ちゃん)をやっちゃったので、
素直にバレンタインデ〜にしてみました。チョコミント、に関しては
カヲルさんからアイデアを頂いているんで感謝しております(^^)。
もともとお菓子の妖精、好き勝手に甘くさせておきましゃう。
さて、ラッキ〜については万年発情男なので(笑)さしたる変化・成長
はないのですが、基本的には姫を守りたいという心情の変化が「たま
〜に」顔を出します。この世紀の逆玉が成功するかどうかは…不明で
すけどね(^^;
マリアはおしゃまさんですが恋愛感情は…こっちも微妙ですね〜。
お師匠へのジジイコンプレックスは強そうですし、何より作者が若
い子の恋話なんか嫌や言うてますし(爆)。それでも、そろそろボー
イフレンドくらい出すべきか? 悩むところであります(^^;
次回は…まだまだ暗中模索ですが雪山編、魔導師ギルド&魔道学園
編、等を考えております。気長にお待ち下さい(^^;
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