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1 『セイヴ魔法学校』
魔道師が多く集い、魔道士の卵を生み出す、魔法学校がある町、セイヴ。
創始者であり、元魔法ギルドのメンバーであるハーフエルフのアーサー校長
の行方不明と『黒い牙』の紅蓮の魔道師ダグラムの陰謀により、壊滅的な損
害を被ったが、ようやく回復の兆しを見せていた。
特待生のマリア、そしてその仲間の活躍により、取り戻した学校の誇り。教
師や生徒の信頼や友情。何より学校自体を再建し、アーサー校長を探そうと
いう情熱が全員に満ち満ちていた。

「ふあ〜、ねむ」
そんな活気ある授業中、場違いな緊張感のないボヤキ声。
制服もまとも着ない、胸元も大きく開け、態度も芳しくない生徒が1人。
以前の学校なら悪名高い『特待生グループ』が存在したが、彼らの大部分は
未だ療養中である。
「あ、あの…授業中だから、その、あくびは…」
隣席の丸眼鏡にオサゲの少女がおずおずと言った。
「あら、ごめんね〜。うふん」
他の生徒と違い、成熟した女性だ。しかも褐色の肌、とがった耳…人間では
ない。
ハーフダークエルフの娘、ぬー。
「そうですよー、メッ!」
眼鏡少女のそのまた隣り、こちらはカールした髪も可愛らしい幼い少女。
彼女の名はベッキー。
両隣どちらも年齢が極端すぎる。
(うう、なんで私のまわりって変わった子が集まるんだろ…ラッキー様〜)
心の中で思い人の名を叫び、自らの不幸を嘆く眼鏡の少女。彼女自身も極端
な趣向の主では持ち主ではあるが。
彼女の名はスズメ。
何故か3人は席を並べていた。
「いやー、私も勉強なんてガラじゃないんだけどさ」
食堂で話す3人、ぬー、ベッキー、そしてスズメ。異彩を放つ3人、とりわけ
セクシーなぬーに男子生徒や教師まで顔を赤くしたりうつむいたりガン見し
たり。ぬーは余裕で視線を受け止め、逆にウィンクや投げキスを返した。
「私の連れのミミってのが頑丈なのと腕っぷしだけがとりえでね。その子が
パノレコって町で武者修行だとかで、もう一人の連れのイーノって子も連れ
て行っちゃったわけよ。元軍人の子達と仲良くなっちゃってさ。」
「ふーん、ぬーさんは行かなかったの?」
ベッキーの問いに
「私ゃ身体鍛えるって苦手でねー。カラダはもっと良いことに使わなきゃ…
って、ベッキーちゃんには早いよねーメンゴメンゴ」
艶然と笑うハーフダークエルフ。
「でも、全然勉強してないのに、魔力や超能力があるんだから、すごいよ!
ワタシはベイシァって町にいたんだけど、そこにいたセフィロスさんって魔
道師さんが実は悪い人で、えと、代わりにワタシが魔法を勉強したんだけど、
町の本を全部読んじゃって。このセイヴ魔法学校ならイッパイいっぱい勉強
できるって町長さんが…えと、すいせんしてくれたの」
明るく、年上のスズメたちにもはきはきと話すベッキー。
「べ、ベッキーちゃんも、すごいです。その歳で飛び級で編入してくるんだ
もん…」

2人に圧倒されながらも徐々に心を開いていくスズメ。友達も少ないエキセ
ントリックな彼女も、先のサイクロプス騒動の時以来少しずつではあるが社
交的にはなってきたようだ。
「まあ、それもこれも"あの子"のせいなんだけどね。気色悪い鎧を着た…」
「いつか、あのお姉さんのようにみんなを守れたら…」
「ああ、ラッキー様。まだあの、綺麗なお嬢さんと一緒に旅してるんだろう
なあ…」
3人は思い浮かべる。金髪碧眼、気高い魂と勇気を持つ美姫を。
「バーサーカープリンセス…え?」
少女たちはお互いの顔を見つめあった。食堂の外では大きな猫の影がす
るりと動き、立ち去って行った。
(おしまい)
2 『ヴェニマール』

西部にある湿原の町、ヴェニマール。ヒュン、と風を切る音が墓地に響く。
そこで弓の練習をする金髪の少年が一人。彼の練習は続く。朝も、夜も。
「そのへんで休んだらどうなんだい? 弓だけじゃない、手のほうも手当を
しなきゃならんだろ、アレン。」
「叔父さん…はい。」
後ろから現れた青年に気づき、アレンと呼ばれた少年はやっと手を降ろす。
確かに手はマメだらけ、傷だらけだ。
「でも、もっと腕をあげなきゃ。狩りだけじゃなく、またゾンビや魔物が襲
ってきたら―――」
刹那、青年はアレンを抱き締めた。
「おまえは誰より努力してるし、弓の腕ももう一人前だ。兄さん…若いころ
のお前のお父さんそっくりだよ」
少年はぎこちなく笑った。
「あ、ありがとう、ございます。でも、僕はまだ何もできない。引き取って
くれた叔父さんへのお礼も、それから…」
アレンは思い浮かべる。亡き父の魂を救ってくれた、アジロという風変わり
な少年、そして美しき賞金稼ぎのフロリーナ。

少年の様子を見て、叔父はちょっと鼻をすすり、それから朗らかに言った。
「なあ、少し離れたベイシァという町に、軍人さんたちが集まっているって
話だ。軍人になれとは言わん。だがお前の得たい技術や弓矢は手に入るはず
だ。そして、魔物に敵討ちができるかもしれん」
はっと顔を上げるアレン。
「行って…いいんですか? 僕はまだ――」
「ばか、お前はもう俺の息子だ。考えてることだって判る。あのお嬢さんの
ため、お国のため、働きたいんだろ? この町は大丈夫だ。アレンのやる気
が皆に伝わってる。やりたい事を、進みたい道に進め! ただし、必ず生き
て帰ってくるんだぞ…」
そう言って叔父はくるりと背中を向けた。事故で亡くなり、ゾンビと化した
アレンの父親。それを救ったのがフロリーナたちであった。亡き父は今も天
国で見守ってくれている。そしてその父と瓜二つの広い背中。
と う
「あ、ありがとう。叔父さ…お義父さん」
少年は深く頭を下げた。熱い滴がふたつ、みっつとこぼれる。それは亡き
父を見送った時以来の涙だった。
(おしまい)

3 『東の海』
「すまんねえ、海賊さん。助けてもらったうえに、北海まで送ってもらえる
なんて」
穏やかな海の上で。中型の帆船に3人の漁師と2人の少年の姿が見える。浅
黒く小柄だが快活な少年と長身で肌や髪まで白い無口な少年。
「がっはっは。わいら、正義の海賊やもん、そんなん問題ないって。あんた
らこそ、その銛や網の裁き方、たいしたもんやで。海賊団にスカウトしたい
くらいや」
黒髪の少年、ガッツが笑い飛ばす。
「遠洋漁業に出たのはええが、嵐に巻き込まれて、船が壊れて、魔物に襲わ
れた時はどうなるんか思うたけんど」
「これでジャスコゥに帰れるだよ」
白に近い銀髪の少年、ライトも口を開く。
「魚人…マーフォークの半数はあんたたち3人が倒したようなもんや。あん
たら本当に人間か?」

見れば3人の漁師もまた特異な様相である。悪魔のように険しい顔のミック
リー。丸々とした巨漢に小さな目のジンベエ。離れた目と牙のような歯並び
のシュモーク。
「んだな、魔物を退治する時は、オラたちは鬼より怖えでな」
「ああ、フレアさんみだくな」
「賞金稼ぎのフレアがお相手しますわ、ほっほっほ!ってな…ん?」
3人が口にする言葉に、2人と、他の船員も目を丸くする。
バリン!
その時、羅針盤近くの木箱を破り、目に見えない何者かが叫んだ。
「ぎひゃひゃひゃ、えらい偶然やな。臭うで、ワシの相方の獣臭い臭いが。
もうすぐや。それに、もう一人―――」
目に見えぬ何かはそう呟き、またドラ猫のような声で笑った。
(おしまい)

3 『ドグル公国』
「やあやあ、我こそは正義を愛し悪を討つ者、バーサーカープリンセス!
闇に生きるスケルトンよ、ねぐらに帰るがよい。さもなくばこの神の斧の錆
となるであろう!」
ジャジャン!
簡素な舞台に響く管弦楽の調べ。小さな見世物小屋の演劇だが、客は満員だ。
老若男女、皆が見つめる中で黒光りする鎧に見せた衣装で見栄を切る少女。
模型の斧とはいえ、構える姿もさまになっている。
従者を演じる男が問いかける。
「勇ましき神の子にして、麗しき姫よ。あなたとあなたの国を見捨てた隣国
まで、何故に救う必要があるのでしょう」
「それが、神の意志だから。たとえ何度裏切られても、私は助けを乞う者た
ちを見捨てるなんて出来ませんわ」
「おお、なんと気高きその御心よ! 私めもついて行きましょう。例え地獄
の果てまでも」
やんやの喝采。
アンコールも済み、幕が下りる。舞台から降りてきた狂戦姫役の女性…亜麻
色の髪、葡萄色の瞳の快活な少女。
「はあーっ、疲れた! どう、トク。私の演技もまんざらじゃないでしょ?」
タオルを持ってきた従者役だった男…少年が労う。付け髭をはずし、メイクを
落とす。薄い金髪に空色の瞳、それ以外は驚くほど少女に似ている。
「ドグル王宮のオペラには負けるけど、気持ちは入ってたよ。お疲れ、ナミ」
双子の芸術家として最近はこの国、ドグル公国でも有名な二人、トクとナミ。
彼らは以前旅行先で出会った女性に感銘を受け、それを帰国後に戯曲化したの
だ。亡国を救う魔鎧に身を固めた乙女の冒険譚は大好評を博し、王宮はおろか
民間の舞台劇にまでなったのである。そしてもともと英雄譚が好きなナミは自
ら舞台にまで立ったのだ。
「ん? どしたの?」
考え込むトクを覗き込むナミ。
「いや…フレアさんは今でも戦っているんだろうな、って。僕、思うんだ。舞
台が成功したら、この国に逃れてきた亡国の人々も勇気を持ってくれるかもし
れない。国はまだ動かないけど、ドグルの人たちだって助けようとするかもし
れないって」
「…うん、そうだね。きっとそうなるよ!」
ナミが微笑む。心配性で気弱だったトクもいつの間にかたくましくなってきて
いた。男女の差はあれ、そっくりだった双子。それも今ではもう見間違うこと
はないほど成長していた。
「だから、だからね、ナミ…僕…」
決意を固めた少年の目。
「ほえほえほえ、行きたいんじゃろお? またあの国へ」
見世物小屋に入ってきた老婆がいる。シワだらけの顔がそのまま笑顔になる。
小さな身体、細い手足だ。いったい何歳なのだろうか。
「あ、スティナお婆ちゃん! 来てくれたんだ。ありがとう〜!」
ナミが抱きつく。
「立派になったねえ、ナミちゃん。良いお芝居だったよ。わたしも若い頃を思
い出したよ。」
「スティナお婆ちゃんの若い頃の戦乱のお話を聞いてたから、お話も書けるよ
うになったんだよ。えへへ」
曾祖母、スティナの賛辞にてれるナミ。そして老婆は少年に向かい、再び同じ
言葉をかける。ゆっくりと、穏やかに。
「行っておいで。なあに、ニルヴァーナにはわたしが執り成してあげるよ。ほ
えほえほえ」
震えるように笑う。
「お婆ちゃん…ありがとう。僕にも、あの国を救う手助けが何か、なにか出来
ると思うんだ。だから!」
「おっと、私も忘れちゃダメだからね。」
2人は手を取り合った。この前は助けられてばかりだったが、今度は、今度こ
そ。海の向こうへ思いをはせるナミとトクであった。
「あ、わたしも行こうかね?」
スティナはぼそっと言った。目がマジ、である。さすがに双子も驚いた。
「え…ええ〜〜〜?」
(おしまい。)
4 『どこか。』

「ナノ=ブラック!」「ナノ=ホワイト!」「以下省略!」
「5人そろって愛壺戦隊ナノレンジャー、なの!!」
5色の戦闘服をまとった乙女がキリキリとポーズをとる。
「ななな、なんぢゃお前ら? いつの間にわいて出おった!」
血相を変える老人…白髪に凶悪な面構え、そして灰色のマント。ネクロマン
サーにして呪術師のマスター=ヘルである。
「いやですわ、マスター。わたし、エボニーなの。」
「わたしはアイボリーなの。で、妹たちですわ」
「私達5人がマスターをお守りしまーす」
あまりの姦しさにふらつくマスター。
「そんな馬鹿な。人造人間が成長したり、妹が出来るなど。だいたいお前た
ち双児の両親は戦争で…」
「あら、私達が親代わりじゃないの? ヘル…」
会話に割って入ったのは、ひとりの女性。長い艶やかな黒髪に黒い瞳。赤い
魔法使いの帽子とコート。穏やかに微笑むその顔は。
「か! か、かをる! お前なのか!?」
微笑みながら白い光に包まれていく女性。ヘルは手をのばし、その姿を追う。
いくら伸ばしても届かない手。思い。
「…むうううー。」
気が付くとそこは行商の旅のテントの中。子供の双児がヘルにかぶさるよ
うに寝ている。朝焼けの光がテントの継ぎ目から差し込む。
「−ふん、とっくに夢だとわかっておったわ。なにがナノレンジャーぢゃ、
親代わりぢゃ! 夢も光も賑やかなのも、わしゃ大っ嫌いぢゃー!」

ヘルのあげる大声で目覚めるエボニーとアイボリー。
「むにゃむにゃ。マスター、おはようございますなの」
「あれ? マスター、お顔がお水でずぶぬれ。目も真っ赤なの」
「うるさいわ〜〜〜っ!」
老人と双児の朝の喧噪は、いつものように始まった。
おしまい。
お読み頂きありがとうございました。
今回の特別編は次の話に向けて、というよりラストに向けて、って意味合いのほうが強い
かなあ? もちろん、まだまだ先の話です。ただこういった「小さな力の集結」ってのは
やっぱ書いてて燃えますネ。雪玉のようにキャラが増えてますんで、全部が再登場とはい
きませんが(^^;
例えば閑話休題編の変なアイテムや、特別編のあぷりん博士&mike子さん、「ナカヒト」の
メンバー、ワグ博士などの皆様はちょいと無理があるんで(汗)。それと夢オチも(笑)。
足代…は微妙。彼の登場した時のアレンも出てますし、プロメテウスが会話の中とはいえ
出たのもこの回だし。
あと、再登場の有力候補はサーシャ、ヘル&なのズ、ウィル&マシュー、メロディ、ピク
シーズかなあ? 時空の巫女が出るとすれば…流浪の騎士、18歳マリアも出るかも?
今まで国名はぼやかしていたのですが、あまりこだわっても仕方がないと思い、今回から
ドグル、アビスといった過去の作品のものも使おうと思います。いよいよスティナお婆ち
ゃん(実際は某作品のヒロインの…100年後!)まで出ちゃいました。どうなることやら?
たまに密偵に近況を話させているサブキャラたちですが、ちょいと自分のアイデア整理の
為にも書き綴った次第です。この後また本編と絡むかどうか、それは作者もわからない(爆
間接的には戦っている(ゾンビやゴーストを通じ)ヘルと足代ですが、前回登場時にはい
い感じに終わっちゃってるんで、一緒に出るとしたらどういうパターンかなあ? などと
考えてます。いえ、突飛なことは出来ませんがネ。
セバスちゃんたち鎧・剣・盾のそろい踏みもそろそろあるかと思います。どんな相乗効果
があるかは未定です。たぶん、凄いウルサイ…それだけは間違いない(笑
それと、そろそろリオさんとシアンの出自とか、考えなきゃなあ…それも後付かい!(^^;
大団円はまだ掛かりそうですねえ。いまだ広げた風呂敷を片付けてませんし、まだ広がり
そうですし穴あいてるし(笑) どうぞ長い目でみてやってくださいまし。
2008.6.28 up
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