ショート・ヒロイニック・ファンタジー

 ばーさーかー

ぷりんせす!

<番外編>

ワグ=テイル博士の
愛した○○


注:これはキリリクでWagtailさんの作ったキャラクター「Wag博士」をもとに創作した
キャラ、ワグ=テイル博士とバサプリメンバーとの出会いを描いた番外ストーリーです。
…念のため本編及びWagtailさんとはあまり関係がありません。ご了承下さいまし^^;
 

1

 春ののどかな陽光が差し込む「陽気な子豚亭」。いつもながらうさん臭い

客が出入りしては消えて行く中、フロリーナ姫とその一行はいまだ借金が返

せず(宿代を含めて)下働きをしていた。

「困ったねえ。フンゴ」

女将のリオが恰幅の良い体を揺らし、考え込んでいる。周りには占い婆、ナ

イフ投げのイワン、巨体のスリーピング=ブルたちの姿も。

「んちわー」

「どうされましたの? 女将さん」

掃除を終え、歩み寄ってきたフロリーナ、マリア。他の客には目配せをしつ

つリオが返事をする。

「ああ…この先の貴族の領地で女の子の神隠しが多発しているらしいのさ。

村娘の変装で潜り込ませたネイネイ(鞭使い)まで帰ってこなくなっちまって

ねえ。」

「領主の貴族は?」

フロリーナの問いにリオは素っ気なく、

「んな奴ぁ、前の魔族襲来の時とっくに逃げちまったわ。誰かが空き家に住

んでいる、って噂もあるがね。しょうがない、私が美しい村娘に化けて…」

かなり真面目に実行しようとしているリオを必死で止めるイワンたち。

「わーっ、リオ姉さん、それはやめたほうが」

「女将さんを危ないめに会わせる訳にゃあ、ちょっと」

「とゆーか女将さん、村娘に化けるって無理があり過ぎ…」

バキャア!

一言余計だった男がリオの張り手で吹っ飛んでいく。

「うっさいわね! シャレよシャレ。うーん、仕方がないね、あんたたちに

頼むしかないか」

「オッケー! やっとこさ仕事だー。姫さま…いえ、フレア様、家事ばっか

でストレスたまってたもんね」

はしゃぐマリアに、姫は顔を赤らめてばつの悪そうな顔をする。

「たっだっし、この依頼を受けられるのは女の子だけだ。執事の爺さんやゴ

キブリ男はNGだよッ」

  

 かくしてフロリーナ、マリア、ルーシーの三人による少女たちの捜索が始

まった。行く手に待つのは誰か? そして…

「ぐふふふふ、オイラがいなきゃ鎧は運べないもんね。このまま一緒に潜り

込めば…女だらけの園じゃ酒池肉林じゃ〜!」

やはり不謹慎な下心を持ちつつラッキーも、ヘンテコリンな冒険へと旅立つ

のであった!

 

2

 貴族が住んでいたであろう古い屋敷。北方の別荘であろう。広大な領地を

管理する者たちは先の魔族襲来の時にその責任を放棄し逃走してしまってい

る。しかし…。

「ご主人様、おはようございます」

「朝食が出来ています」

「ご主人様、御召し物をどうぞ」

薄暗い寝室にメイド姿の少女が続々と現れる。

「やあ、ありがとう。私の可愛い子猫ちゃんたち」

青白い肌、華奢な体躯、美麗な顔立ち。青年は起き上がり、素肌に(現世で言

うところの)白衣をまとった。ベッドの傍らには長髪の女性らしき姿が見える。

「ハニー、君はまだ眠っていていいよ。僕の研究が完成したら、一番に見せ

てあげるからね」

頬にキスをし、メイドたちを引き連れ寝室を出る青年。青紫のストレートの

長髪。赤みがかった瞳に、この世界には珍しい眼鏡をかける。

「くす、くす、くす。もうすぐだ―――私の、この"蒼紫の錬金術師"、ワグ=

テイルの美しき研究がまもなく完成する―――!」

美青年は軽やかに笑った。

  


 ひゅうううぅぅ…

春を迎えたとは言えここは北方の地である。遠くに見える山々は万年雪を被り、

北へ向おうとすれば寒風が行手を遮ろうと吹きつける。

「うー、シバレルなあ。ルーシーちゃん、神隠し、なんてリオさん言ってたけ

ど、どう?」

「魔族の気配も、もちろん天界のかたの気配もありませんね〜」

例の貴族の打ち捨てられた屋敷の前に到着した一行。金髪を揺らせフロリーナ

がきっと怪しい建物を睨む。

「そんなことより、早くか弱き少女たちを救わなければ。急ぎましてよ、マリ

ア、ルーシー」

「へいへーい。女の子おんなのこ〜〜」

ドガン!

いの一番に返事をするカバン持ちに、姫の容赦ない回し蹴りがはいる。

「おだまんなさいゴケミドロ! 殿方は来ては駄目って言われてるのですよ。

魔鎧とともに隠れてなさいッ」

「ごほげへ、へ〜〜〜〜い」

早々に退散するラッキー。やけに諦めがいい。

「何か手がかりになりそうなものって…アレ?」

マリアが屋敷の門前の立て札を指差す。そこには…

『美少女以外お断り』

と、臆面もなく書かれている。

「――こりゃあ、本決まりだよねえ」

「そ〜ですね〜」

顔を見合わせるマリアとルーシー。

「とにかく行きましょう。その、美少女なんてわたくし、自信はありませんけ

ど」

すたすたと中に入ろうとする姫。

「わーっ! 姫さま、いくらなんでも無防備すぎるよ! 罠の確率99%っ」

「危ないですぅ〜」

ギギギ…ぼすっ。扉を開けるや否や、3人は案の定落とし穴にかかり、そのま

ま地下通路に転がり落ちる。

「わーん、やっぱりー!」

マリアの嘆きも暗闇へと消えていった。



ドスーン! ようやく別の空間へ転がり落ちた3人。

「いたたた、なんで落とし穴なんか…」

「ふわ〜、びっくりしましたあ」

盛大にかぼちゃぱんつをオープンしながら腰をさするマリア、いつもと変わら

ぬルーシー。

「ふたりとも気をつけて。どうやら罠にかかってしまったらしいですわ」

「…」「…」

真剣なフロリーナ、そして顔を見合う二人。そこへ大勢のメイドたちが現れた。

「いらっしゃいませ、お嬢様」

「お待ちしておりました」

敵意のない少女達の笑顔にフロリーナ一行は面食らう。

(ねね、姫さま。教えてもらった顔立ちに似てる子ばっかだよ)

(そうですわね)

(でもぉ誰もさらわれた、って感じじゃあないですね〜)

「屋敷のご主人様がお待ちです。どうぞこちらへ」

メイドの誘いに乗ることにした一行。地下から、屋敷の広場へと。すると…

「くす、くす。ようこそ美しいお嬢様たち。ワグ=テイルの美の園へ」

青い薔薇を口にくわえ、白衣の美男子が現れた。



「うっゎー、明らかに怪しいの、来たー」

マリアとルーシーがドン引きしつながら警戒する。が、美しき錬金術師は気

にすることもなく陶然とした笑みを浮かべ、あらぬ方向へ手をかざしている。

「くすくす、幼い子には私の美しさが判らないんだね。そちらの麗しい姫君、

君なら判るだろう?」

「そんなことより、あなたが村の娘さんたちを誘拐したのですか?」

フロリーナの生真面目な問いに、白衣の男は物憂げに首を振り、くわえてい

た青薔薇をメイドのひとりに投げた。キャア、と歓声があがる。

「何を莫迦な。彼女たちは私の美しさに感銘し、愛の僕(しもべ)となった

のだよ。子猫ちゃんたちの協力で間もなく美の化身が誕生するのだ…くす、

くす」

ワグ=テイルは眼鏡をかけ直し、赤く光る目でフロリーナを見つめる。

「どういうことですの?・・・あ、あああ・・素敵な殿方・・!」

数秒が経ってから、姫はいきなり頬を赤らめ目を潤ませ、ふらふらと男につ

いていった。

「―――ふつう、偏光ラブ眼鏡、通称"バンコランズ・アイ"で見つめると、

どんなレディでもすぐに恋の虜になるんだけどね。この子、よっぽど鈍いの

かな?」

傍らにやってきた姫をふわり、と抱き抱える錬金術師。

「わーっ、姫さまを返せ!」

電撃魔法を唱えようとするマリアを、白く細長い指が優雅に待て、と形作る。

「おチビちゃんたち、見ての通り、彼女は自らの意志で私に仕えようという

のだ。邪魔をすれば…彼女自身が危険な行動に出るよ」

「ぐ、ぐぐぅ〜〜」

(マリアちゃん、ここはぁ、おとなしく従ったほうが良いですよ〜。あの人、

今は危害を加える気はにようです〜)

 しかたなく、マリアとルーシーも自称"蒼紫の錬金術師"ワグ=テイル博士

に仕えることを余儀無くされた。彼の正体は? その目的は?

 フロリーナたちの運命や如何に?

5

 ゴシゴシ、キッチンの食器を拭くメイド姿のマリア。

「わーん、これじゃ子豚亭にいる時と変わんないよー!」

ぶうぶう文句を垂れていると、なんと白衣…看護士姿のルーシーがやって来

た。

「マリアさ〜ん、検診ですよ〜」

と、言ってからペロっと舌を出しほほ笑んだ。

「ルーシーちゃーん、寂しかったよーう! なにこの服? 可愛いネっ、プ

リプリ〜♪」

抱き着くマリア。

「ご主人さま、いえ、ワグ=テイルさんに頼まれてぇ、私が作りました〜。

あの人がもと住んでいた世界の〜、ナースさんって人の服らしいです〜」

二人は情報を提供しあう。わかったことは…

 1、失踪した少女は全員この屋敷にいた。
 2、子豚亭のネイネイもいたが、姫や他の少女同様、ワグ博士のことし
   か考えられなくなっている。
 3、博士の白衣やナース服など、明らかに別世界の服や道具が混在して
   いる。セーラー服もあった。
 4、彼の寝室に謎の少女と、そのまた奥に秘密の部屋があるらしい。
 5、どうやって少女達の心を支配しているか? 不明。

「うーん、確かに魔法で心を操ってんなら私のアンチマジックで解放出来る

んだけど、違うみたいだし。プロメテウス師匠と同じ、お薬や機械の道具を

使った、えっと、れ…錬金術、ってのかもね。」

「そうかも、ですね〜」

別世界、博士、前に似たようなトラブルに巻き込まれたような? そこまで

考えて首を振り回すマリア。今は老執事はいない。難しいことを考えても無

駄である。

「そういえばぁ、ネイネイさん、何を話しかけても無反応でしたけど〜、

フゴーッって女将さんの真似をすると一寸だけ気を取り戻しました〜」

ポンっと手をたたくマリア。

「そっか、本人にとってきついショックを与えれば…」



 謎の少女が眠る寝室、そしてその奥の間。

ブー…ン…怪しげな機械の音、点燈するランプ。パイプから溢れる溶液、蒸

気。そこはワグ=テイル博士のラボであった。

「美しさは罪〜。微笑みさえ罪〜。私の瞳の奥を見てごらん〜♪ くす、く

す。凄い値だ…お嬢さん、君の心も体も魂も、私の研究にささげてもらおう。

くっくっくくくく!」

しなやかに、優美に蒼紫の錬金術師は装置を操る。その機械にはフロリーナ

が虚ろな瞳のまま拘束され、何かしらのデータを測定されていた。

 その頃、老執事ギャリソンは『陽気な子豚亭』のスリーピング=ブルと

ともにロウ村よりいくぶん南方に位置する町、ココに来ていた。

「ふむふむ、これで買い出しは終了です。経費は六割におさめました。」

算盤を片手にギャリソンが言う。

「あ、ああ。じいさん、すごいな。まだ半日も経っていないのに、あらかた

用事が済んじまった…」

大荷物を背負ったブルが感心している。

「――あまり早いと、足止めにはなりませぬかな?」

執事の言葉にギクリとするブル。

「町内で情報も集めました。北方の旧貴族領近くでの連続少女失踪事件。

それから子豚亭にもいつも見かけるネイネイ様が見えませんでしたな。そ

こで私とフレア様たちを別行動にし、見張りにブル殿も付ける、と」

「あうあうあうぅ〜〜」

「子豚亭の皆さんが何か隠しているのは不問としましょう。おおよその見

当はつきましたが。――帰り道は、急いでもらいますぞ、ブル殿。」

柔和な老人の瞳がギラリと別人のように光る。大量の冷や汗をかきつつ、

大男はコクコクとうなずくしかなかった。



「くすくす、美しい。実に良い眺めだ。お嬢さんには何を着せてもよく似

合うね。」

「ああ…そんな。光栄ですわ…」

ほんのりと頬を赤らめ、目を潤ませるフロリーナ。身体のラインも肌も露

な黒の衣装。網タイツにウサギ耳の飾り。ワグ博士がルーシーに作らせた

のは、現世でいうところのバニーガールのスーツだった。

「くわーん、姫さま、エロかっこ良すぎ〜! は、いかんいかん。ルーシ

ーちゃん、どう? ラッキーはいた?」

ルーシーが服を届けた後、こっそり部屋に忍び込んだ二人。姫の官能的な

姿に見ほれながらも、マリアとルーシーは脱出の方法を探す。ようやくネ

イネイだけは電撃魔法で目覚めさせ、子豚亭に返したところだ。このまま

なら、リオやイワンたちが助けにくるかもしれないが・・・。

「駄目です〜。ラッキーの姿も気配も今のところは」

「うー、頼りにならないにゃー」

援軍もあてに出来ないまま、事態は急を告げる。

ズズズズ…地響きと揺れる屋敷。

「くくく、完成だ。私の野望、究極のドールが! もうすぐだよ、し○○、

君に永遠の命を与えよう。」

ワグ博士に寝室より連れてこられたのは、精巧な等身大の人形であった。

ガガガ…屋敷の揺れがさらに激しくなる。壁は崩れ、怪しげな機械、そし

てその周辺には無数の人形、刀剣、鳥籠が並べられている。

「このお嬢さんは巫女として最適でした。溢れる生命力、強い精神力、愛

に殉ずる感受性…これらすべてのエネルギーをドールに注ぎ込めば、究極

の生命体が完成するのですよ!」

高らかに叫ぶ錬金術師。さすがのマリアも顔に縦線である。

「うわ〜〜〜、電波だと思ってたけど、こいつ最大マックスだ! 姫さま

を返せ、マッドサイエンティスト!」

たまらず二人は飛び出した。ワグ博士は相変わらず麗しい顔を崩すことは

ない。

「くすくす、やはり裏切るのだね、なんと愚かな子雀ちゃんたちだ」

「あのぉ、じゃあ、この服はなんだったんですか〜?」

ルーシーの問いに、博士が答える。

「ん? ただの趣味ですよ。優雅な趣味でしょう? 人形も、刀剣も、薔

薇も鳥たちも…くすくす」

ぞろぞろと集まるメイド…村娘たち。手にはモップやホウキ、包丁に鍋な

どを持っている。

「さあ、その子たちにもお仕置きをしてあげなさい。私の野望を邪魔する

者はなんぴとたりとも許しません。皆にはご褒美に、他の人形に魂を移し

てあげましょう。し○○の人形ほどではなくても、他の人形たちにも私の

愛情が詰まってますからね。」

並ぶ人形には馬や鳥が擬人化したもの。悪魔の尻尾やゼンマイを生やした

ものもある。

「たいへんだ。みんな人形にされちゃう!」

「姫さまぁ、お願い目を覚まして〜」

マリアとルーシーを囲むメイドたち。

 絶体絶命のピンチを一行はどう切り抜ける?


6

 怪しげな機械に取り付けられた二つのカプセル。

「くすくす。思えばこの別世界になぜ私が連れて来られたか謎でしたが…

究極の生命体を造るには最適の世界だったのだね。さあ、美しいお嬢さん、

こちらへ」

片方に少女の人形が入れられ、もう片方へ夢うつつのフロリーナが招き寄

せられる。メイドたちの攻撃を避けるので精一杯な二人は近寄れない。

「ああ〜、姫さま〜!」

「しかたない、例の作戦だ! 召喚ッ」

ポン。白煙を上げてマリアの使い魔、黒猫のナベシマが現れた。メイドた

ちの頭上を乗り越え、フロリーナのもとへたどり着く。そして、

「ふにゃああ」

彼女が着ているバニーガールのスーツ、その裏面にある紐を引っ張った。

ズル

なんと服は細切れのなり、パラパラと落ちだしてしまった。マリアが大

声で叫ぶ。

「姫さまー、男性の目の前で、服が脱げちゃってますよー!」

途端、

ガッシャーン! 窓ガラスを蹴破り、一人のメイドが乱入してきた。

巨大なカバンを背負い、ガリガリの体躯、しょぼいあごヒゲを携えて。

「オイラ、参上! どこどこ、姫のヌード、どこ〜〜!?」

カバン持ちのラッキーであった。スカートからのぞくゴボウのような足も

スネ毛まじりで気色悪い。

「うう、なんだお前は? 醜い、キモイ、おぞましい!」

ワグ博士が華麗によろめく。その時、フロリーナは…

「……き、き、きゃあああーーッ! なんで、わたくし、こんなはしたな

い格好を?」



瞳に光が宿り、恋の洗脳から解き放たれた。こぼれ落ちそうな服の切れ端

をかき集め、その場に座り込む。

「あー、人足早かったか、残念んゴブ!」

ドカーン! マリアのキックがラッキーの顔面に決まった。

「遅いんだよもー! それにそのメイド服、なんでそんなカッコしてんの?」

「いででで、いやその、この格好ならバレないかと思って」

「いいからカバンを渡して。錬金術師がふらついてる間に、姫さまにセバ

スちゃんを着てもらわなきゃ。ラッキーはメイドさんたちの足止めをお願い」

 役者は出揃った。精神的ダメージが抜け切らないワグ博士がもたつく間、

ラッキーの毒牙が少女たちを襲う。

「きゃー」

「いやーん」

その場にいたメイド全員がスカートを逆さに括り上げられ結ばれている。視

界を奪われ、身動きもとれない。巾着袋状態で膠着状態だ。

「あああ、私の子猫ちゃんたちが。許さんぞ、ゴミムシが!」

下半分が下着姿で絵にも描けないフザケタ姿をさらす少女たち。ラッキーは

もちろん満足げだが、博士の美意識には合わないようだ。

「――許さないのは、こちらですわ。よくも、よくも人の気持ちを操り、仮

初めの恋心まで…乙女の純情を弄んでくれましたわね!」

鉛色の重厚な鎧、悪鬼の顔のついた胸。そこには早々に魔鎧を着込んだ姫が

立ちはだかっていた。

「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ。悪を倒せとわたくしを。バーサーカープリン

セス、参上! わたくしの名前は引導代わり、迷わず魔界へ落ちるがいい!!」

7


Illustlated by Wagtail,
thank you!



「ううう、なんて醜い鎧なんだ。美しいお嬢さん、そんなものは脱ぎなさい」

形のいい眉をしかめ、口元を優美に抑えつつも、高飛車な態度を止めない錬

金術師。

「ぎへ、ひでえ言い種だな」

魔鎧、セバスも口汚く応戦する。マリアとルーシーは安堵の息をもらした。

(ふぇー、よかったぁ、姫さまがもとに戻って。ルーシーちゃん、バニーの

服の細工、あんがと)

(でも、姫さま、また裸になっちゃいました〜)

人前で脱ぐ、というのは姫にとって何にも代え難い屈辱である。洗脳すら解

けるほどに。彼女の怒りは爆発した。

ドン! べき、がらがらがら〜。

床を思い切り殴り、研究室と寝室が合わさった広大な広間は姫を中心に凹み、

皆が集まってきた。人も、人形も、機械も。

「おっとっとっと。や、やあ」

「・・・・・」

姫の近くに着いたワグ博士が眼鏡を掛け直そうとする、が、それを姫は奪い

取り、グシャっと握り潰した。

「ああ、私の美しい発明が。バンコランズ・アイが!」

狂戦姫は兜越しにもわかる憤怒の形相のまま、ワグ博士を機械に設置された

空いているカプセルに押し込めた。4〜5m四方はあろうかという装置自体

をガッと掴むと。

「うぅぅううおおおおおりゃああああぁあああ!!!!!」

そのまま持ち上げ、スイングし、屋敷の外へ放り投げた。

ドシャア! ずきゅるるるるーんんん…

「あ〜れ〜。うつくしく、な〜いぃぃ〜……」

叫び声も空しく、蒼紫の錬金術師と美しき人形は謎の機械とともに星となり

消えていった。青い薔薇一輪を残して。

「やったー! さすが姫さま」

「すごいです〜」

「うぐ、うぐ、また殿方に肌を見られて、しまいましたわ…」

 後には破壊された屋敷と泣きじゃくる姫、ほっと胸をなでおろすマリアと

ルーシー、そして…

「うっひょーい、良い眺め。酒池肉林じゃ〜!」

村娘たちの巾着袋に囲まれ大喜びなラッキーが残った。

8

 戦い済んで。

「さ、これで村娘さんたちも無事返しました。眼鏡が洗脳装置だったようで、

すぐに意識が回復できたようです。姫、お疲れさまでした」

翌日の『陽気な子豚亭』。ギャリソンが労いの言葉をかけるもフロリーナは

しょんぼりしたままである。

「――わたくし、まだまだじいがいなければ駄目なままですのね…」

「いえいえ、よく頑張りましたとも。これから、これからです。それに今回

は…どこかの魔法使いが転移の術に失敗し、別世界の科学者を呼び出したの

が発端だとか。姫が責任を感じることはありませんぞ」

ちらと子豚亭の面々を見るギャリソン。リオを始め全員が目をそらし口笛を

吹いたり床を拭いたり。その時、くぐもった声が聞こえてきた。

「ひええ、姫、たしけて〜〜」

子豚亭の窓には奇妙なテルテル坊主がぶら下がっていた。パンツ姿の下半身

がジタバタ動き、スカートが巾着袋になっている。ラッキーが逆さ吊りにな

っていたのである。

「だーめ。姫を覗こうとして隠れてたり、村の子たちが洗脳が解けた後もス

カートまくったまま抱き着いたり。助けてはもらったけど、お仕置きはお仕

置きだべー!」

マリアが窓下から叫ぶ。ルーシーも棒でつんつんとつついていた。

「あーん、あんらっき〜〜〜!」

  

 さて、謎を残したまま姿を消したワグ=テイル博士だが。

「うふ、うふふ。貴方は美しいわ」

「くすくす、君も美しいよ」

どこぞの無人島。色とりどりの鳥達がさえずる中、魂を抜かれた錬金術師の

体に、ささやく少女人形が。無論中身は…ひとり二役も、案外楽しげにやっ

ているようであった。

・・・おしまい。


 今作は特定の登場人物、設定をモデルにしてはいますが、大々フィクションでございます。
え〜私にはお耽美はむずいです。ギャグで逃げて今はこれで精一杯(^^;)
バン○ランは鏡を見ると自分に惚れたりするんかな〜? と思ったりな今回でした。
それでは失礼しました〜(^^;)。

2008.6.1 up


            小説indexへ 「ばーさーかー・ぷりんせす!」INDEXへ 

●top ●index ●novels ●gallery1 ●gallery2 ●notes ●otehrs ●link ●BBS