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6
ルーシーを探すべく、いったんロウ村へ戻ったフロリーナたち。捜索を手伝って欲
しいと頼んだが、村長たちはけんもほろろだ。ラッキーも言葉巧みに取り入ろうとす
るが、これも惨敗。
「そんなことより、化け物はやっつけたのか?」
「そんなこと、ですって・・・」
ドレスに着替えるのももどかしく、他人の前ではシーツを魔鎧の上に羽織っただけの
フロリーナ。魔鎧にはまだ呪いがある。長時間の使用は精神肉体ともに己を魔の属性
へと変えていく。また極端に布の類いを嫌い、シーツ一枚をまとっても鎧はただの重
く動かしにくいものへと変わってしまう。非常事態にシーツ姿で応じた姫だが、他人
に無関心な村びとに怒り、蒼白となっていた。
「グガギグゲゴガゴぐやじいいいー! いい、アンタたち、ここに居いらっしゃるの
は…」
マリアも悔し涙を浮かべ歯軋りをする。フロリーナの身分をあかし、強制的にでも従
わせよう…とするがギャリソンがそれを制した。
「あの生き物は魔物ではなく、ハナサキガニ…では、ありませんかな? 狩猟も殺す
ことも禁止のはず。縁起のよい、天からの使い、この地方では大事にされていると思
いましたが」
鋭い眼光とともに執事の投げた言葉。村人たちは明らかに動揺した。
「と、とにかくこっちはあの化け物を倒すことを依頼したんだ。」
「契約反故なら、せ、責任をとってもらうからな」
その時。
ゴゴ・・・ゴゴゴゴ・・・・
雪原の方向から地響き。そして。
「ガガガーーー!」
巨大蟹たちの咆哮。

「また出やがった。きしょう、姫、こいつらほっといて逃げようぜッ」
「今回はラッキーに賛成の反対の大賛成!」
ラッキーとマリアが叫ぶ。だが。
「――止めてみせますわ。民を守ること、それはわたくしの使命ですから」
フロリーナは毅然と、立ち上がった。シーツを払いのけ、雪原へ歩きだす。
魔鎧には呪いがある。正しい心を持つ者、純粋な者には見えない呪い。フロリーナ
は素裸になっているのも同然だ。正しい心を持つ者の前、では。
「ひいっ!」
「なんだ、あの鎧は?」
「お、恐ろしい…」
彼らロウの民には魔鎧の戦士にしか見えなかった。無論、兜の下の少女の涙も。

村からはもう数kmしか離れていない雪原に、氷の刺を有する巨大蟹の群れは終結
していた。
「ガガッ」「ガガガガ…」
うなり、泡を出し、氷の下の黒いくぼみからは怒りに燃える赤い目が光る。雪の浅い
場所を駆け抜け、岩場で跳躍し、フロリーナはやって来た。
「蟹の皆さん…どうか引き下がって。あんな自分勝手な民のために、あなたたちを傷
つけたくありませんの!」
悲痛な叫びだった。しかし彼らの進軍は止まらない。
ドドドド!
迫りくる伝説の神獣、ハナサキガたち。姫は斧を置き、全身でそれを受け止める。足
場は雪ですべり、今や十数匹になった大蟹はますます詰め寄ってくる。数匹を受け流
し、放り投げ、パンチやキックでショック状態にさせるが、それも限界だ。
「ぎへ、雪山から離れたここなら、俺様の火炎攻撃も使えるかもしれないぜえ?」
「…」
魔鎧の声にも耳を傾けない姫。戦いは続く。
遠めにフロリーナの姿を目で追うマリア。
「うーん姫さま、苦戦だなあ。」
「姫の決断です。お任せして、我々はルーシーを探しましょう」
何もしようとしない村人をにらみ、マリアたちは雪崩ではぐれた友を探そうと村を離
れようとした。が。
「う〜〜〜ん…」
「? あれ、今、ルーシーの声が聞こえた気が」
「へ?」
ラッキーが、マリアが耳をすませる。
「…よいしょ〜」
少し間延びした穏やかな、どちらかと言えば緊迫感のない声が聞こえた。
「ややや、あそこに!」
ギャリソンが指さしたのはなんと村の井戸だ。
そこを頭にハナサキガニの幼生を乗せ、もたもたとはい上がる人影が。
「わ――――っ、ルーシーちゃ――ん!」
歓喜の叫びを上げるマリア。一行は駆け寄り、シスターと子蟹を引き上げた。
「ふわあ、皆さん、ご無事でしたか〜」
アザや打ち身を作り、雪や泥でシスターの服もどろどろだ。それでも彼女のくちから
出るのは仲間を思いやる言葉。
「あなたこそよくぞご無事で。手持ちの薬や包帯は?」
「この子たち(子蟹)に使っちゃいました〜。それより、この枯れ井戸を伝って行く
と、地下の洞窟があるんですぅ。そこにニカちゃんの仲間が、まだ捕らわれているん
ですよ〜」
ギャリソンが考え込む。
「…貴重な動物の子供や卵を密猟し、外国に売りさばく者たちが数年前多発し、憲兵
が捕らえましたが一部北へ逃げた、という話を聞いたことがありますな。」
ラッキーが村長たちに向かい叫んだ。
「てめーら、その泥棒の一味だったのか! あの蟹たちが怒ってたのは、子供を取り
返そうと…襲われて、当たり前だっ!」
村長を始め、村人数人が青ざめる。
「わーん、ルーシーちゃーん! えらいよカッコイイよ優しいよごめんよー! ルー
シーちゃんはオレの嫁〜〜〜!!」
マリアが泣きながらルーシーを抱き締めた。なだめながらも、彼女は戦闘の起きてい
る雪原を見据える。
「まだ、終わってません。この子たちを、親蟹さんに、返さないと〜」
さすがに村人が叫んだ。
「ま、待ってくれ。俺達は密猟者じゃない。」
「よその村から密猟の話を聞いて、蟹の子をさらったが、売り方もわからねえんで、
地下に隠してたんだ。」
「そうでもしなきゃあ、雪だらけで生活もできねえし」
「生きていくため、だったんじゃあ」
村人たちの弱々しい弁解も、自身のケガも気にせず、ルーシーは大蟹と姫の場所へと
ニカを連れ歩いて行く。
マイペースで、しっかりと。
7
「た、頼むから俺たちに蟹を返してくれ」
「今更あいつらに返したって、俺達はただで済む訳がねえ」
引き留める村人。思い余って石をルーシーに投げ付ける。
ガツッ。
ひとつが彼女の肩に当たるが、彼女の歩みは止まらない。
「てめーら…」
「ぶつぶつ、ぶつぶつ」
いつもは飄々とおどけているラッキーもさすがに怒ったようだ。マリアとふたり、間
に入り、道をふさぐ。村人はひょろっとしたラッキーと子供のマリアには居丈高に叫
ぶ。
「どけよガキ共」
「お前らの敵は蟹のほうだろ」
追いかけようと迫ってくる村人。7〜8人はいるだろうか。ラッキーの隣りをすり抜
けた途端、ズデン、と全員が転んでしまった。
「うぎゃ、あ、あれ、ズボンが」
「靴紐が、いててて」
見れば全員の靴紐やズボンの帯、ベルトが外されている。もちろんラッキーの手技、
高速服脱がしの応用だ。

「ちぇ、この技は可愛いコ専用なんだけどな」
ラッキーの足止めは成功した。一方マリアは。
「ぶつぶつ、チャージ・・・チャージ・・・」
なんと手には稲光をまとった光の玉が。
「わたしはガキだから、姫さまやギャリソンみたいには大人しくは出来ないよ。
…ルーシーちゃん、いじめたなー! マジックチャージ!」
マリアの魔法はパワーが少ない。しかし先の魔法学校で彼女は魔法の倍掛けを学ん
だ。魔力をチャージして、さらに大きくすれば、時間はかかるが並みの魔法攻撃も出
来るようになったのだ。
「電撃! マリアのサンダーボール作戦!」
ビシャアッ!
「ぎょわあああーー!」
村人たちはズボンも下ろした状態で感電、気絶した。
苦闘が続くバーサーカープリンセスに、希望の光がいま歩み寄ろうとしていた。
8
地下の洞窟。捕まえた子蟹の監視をしていた村人のもとに
「た、たいへんだ。この蟹どもを誰かよそ者が見つけたらしい」
別の村人が上の騒動を伝えにきた。
「いつの間に見つかったんだ? ちくしょう、捕まえて餌を与えただけで、儲けにも
なにもなりゃしねえのに」
「とにかく、いったん逃げ…」
その時。
「そうはいかないよ」
いつの間に入ったのか、数人の人影が。たくましい体躯の女性。細面と大柄な男、そ
して小柄な女性と老婆。『陽気な子豚亭』の女将、リオと子豚亭の客たちだ。
「…こういうことだったのかい。密猟者の逮捕の後にもハナサキガ二がいなくなる、
って聞いてたけどまさか村全体が真似事をしていたとは…フンゴ!」
リオが怒りの形相でにらむと村人は立ちすくんだ。
「こりゃあ、クエストの契約違反、どころじゃない。あんたたちを密猟者で吊るし上
げることもできるわ」
「う、うわーーっ!」
逆上し仲間を呼び、武器をとる村人たち。10数人はいるだろうか。しかし、リオたち
は動じない。
ビュウッ。ナイフが、トマホークが飛び鞭がうなる。そして…
イワンが呪文を唱えるとナイフは自在に方向を変え、村人を追った。トマホークも同
じ。鞭は炎を吹いて村人の逃げ場を絶つ。
「ふん、素人がこの魔道師ギルドのメンバーに敵うと思ってんのかい!」
怒号が洞窟に響き渡った。
魔道師ギルド。
上級魔道士たちが集い、報酬でクエストを受ける秘密結社のことである。100年程昔、
初代フロリーナ女王とともに戦ったとされるが、その後内部分裂を起こし、解体分散
したと人々は噂した。
率先して内部の腐敗を糾弾したルーキーグループが賢者プロメテウス、呪術師マスタ
ーヘル、占星術師かをる、である。逆に上層部の改革を進め、保守に回った若者が氷
雪の女王、ハーフエルフの魔法学校長アーサー。
もともと篤い友情で結ばれていた彼らにどんな物語があったのか、それは…また別の
話。

「姫さまぁ〜」
「ルーシー! よく無事で…いけない、こっちに来てはだめ!」
フロリーナの周りはすでに巨大蟹、ハナサキガニに取り囲まれていた。
「ガガガガァ!」
赤い目を光らせ迫る神獣の群れ。しかしルーシーもまたひるむ事なくやって来る。そ
の胸にひとつの小さな命を抱え。
「カニさんたち、ごめんなさい〜。私たち人間の仲間がぁ、この子たちをさらってい
ったんです〜。」
ニカを持ち上げ、涙を浮かべ謝罪するシスター。
「ニカカカカ」
―――聖女の涙が、掲げられた子蟹のニカが説得したか。
「ガガ」「ガガガァ」「ガ、ガガァ・・・」
ルーシーに道をあけ、次第に蟹たちの目から攻撃の色は消えていった。
(そういう、ことだったのですね…)
状況を理解したフロリーナもまたルーシーの隣りで膝をつき、同胞の愚かな所業をわ
びた。
「カカカ」「カカ、カカカ」
どこからか地下にいたはずの残りの子蟹たちも現れる。
「ガガガァ」「ニカカカカ」
ハナサキガニたちは少しずつ撤退し始めた。
「許して、くれたんですね〜。ありがとう、ニカちゃん…」
夕日が雪山を赤く染め、ハナサキガ二を迎え入れる。ルーシーと姫は手を取り合い、
親子蟹たちを見送った。
いつまでも、いつまでも。
9
戦い済んで。
「負け戦、でしたわ。依頼もまっとう出来ず、民を傷つけ、ルーシーや皆さんも危険
にさらして…」
「しかしながら教えられたことも多いはず。」
執事が慰める。ドレスに着替え、落胆を気丈に隠してフロリーナは『子豚亭』へ戻っ
てきた。
「お帰り」
送り出した時と変わらぬ女将、リオのつっけんどんな声。
「あ、わたくし…お仕事を」
「なにトロトロ歩いてたんだい? ロウの村から使いが来てたよ。依頼は取り消し。
それと…契約を結ぶ前に先方に違反があったとか。正直に答えてたよ。フゴ」
驚くフロリーナ。
「どうすんのさ? 王様がいないこの国じゃあ、村のやつら全員が犯罪者ったって私
刑…リンチにしか出来ないよ」
少し間を置き、答える。
「―――いいえ、罰する必要はありませんわ」
リオと酒場の客が見つめる。しばらくして。
「依頼のお仕事を完遂できなかったのは間違いありません。どんな罰もわたくしが受
けますわ。でも罰金だと、ちょっと、待って…」
ドン!
カウンターに大きなワインのボトルが置かれる。
「あんた頭悪いのかい? 契約はチャラ、あんたは無駄骨を折った。この上罰なんて
言ったら、紹介した私が悪者じゃないか! フゴー!」
「え?」
「いいから、これでも飲んで忘れな。」
それだけ言うとリオは炊事に行ってしまった。
「おとがめなし? ひょー、ラッキー」
ラッキーやマリア、ルーシーもやっと顔がほころぶ。
「ほいよ」「はい」
客たちが次々にフロリーナに酒を注ぐ。ルーシーのもとにイワンが仏頂面でホットミ
ルクを持って来る。それを機に宴会が始まった。
「よぉーっし、歌って踊るぞー! ルーシーちゃんも、ほらお立ち台っ」
「は、は〜い〜」
マリアがルーシーをテーブルに引き上げ、両手で兎の耳のマネをし腰を振り踊りだす。
「ほれウッウッウマウマ!」
観客も手拍子足拍子ではやし立てる。
「ほっほっほほーい!」
宴はいつ終わるとも知れず続き、夜は更けていった。

深夜。
「あーあ、姫、飲み過ぎだ。ムチャばっかりしやがって」
慣れぬ酒を勧められ、ぐでんぐでんの姫を運ぶ羽目になったラッキー。なんとか寝
室の前までたどり着いた。
「あ、ありがと〜じい」
「爺さんじゃねえよ、ったく」
「ん? なによらっきいじゃにゃいですの〜。寝室をのぞいたら、許しましぇんで
すわ〜」
怒ったり笑ったり泣いたり。大トラだ。
「へいへい。んじゃ、オイラは第2ラウンドを…なに?」
ぎゅう。
フロリーナが抱き着いてきた。肩が震えている。
「ひく…彼等にも生活があります。他を犠牲にしても、欺いても生き延びたい、そう
も思うでしょう。判っていても、わたくしはロウの村人を憎んでしまいました。統治
もままならない王族だというのに。こんなことなら民の身分となり、平凡に暮らすほ
うが…」
今度は饒舌になり、ラッキーの薄い胸に顔をうずめる姫。
(な、な、なー!)
パニックを起こしたのはラッキーのほうである。いつもとは違う、か弱き少女が目の
前にいる。抱き締めようか、肩に手を回そうか、逡巡したあげく・・・・
ムニュー。尻を、もんだ。
「キャーッ!」
ドゴオッ! 酔いも吹き飛んだ姫の鉄拳が炸裂した。
「もう、これだから下賎の者は!」
ぷんぷんと怒りながら寝室へと消えていった。
「ぐはあ! そ、そーだよ、姫はそうでなくっちゃ。げほごほ」
顔面を血で濡らし鼻血さえ噴水と化しているのに、ラッキーの顔には安堵の笑顔が
あった。
10
明朝。
少々飲み過ぎたようだ。どうやって寝室に戻ったかさえ憶えていない。フロリーナは
頭を押さえながら寝室を出た。すると。

「姫さま! 外を見て!」
マリアがあわててやって来た。窓を開けると鈍色の空と降り続く雪。街道にも前の広
場にも白い絨毯。昨日と変わらぬ景色だ、が。
「カカカカ」
小さな蟹が広場の先の丘にいる。
「あれは?」
「昨日ルーシーちゃんが助けた子蟹だよ、きっと」
ルーシーが丘に向かっている。すると、丘の向こうから…
「ガガガー」
親蟹がぞろぞろと現れた。
「いけない! ルーシーを助けなければ!」
ところが。

「ニカちゃん、どうしたんですかぁ?」
ルーシーの問いに、
「ニカ〜」
子蟹が叫ぶ。と、甲羅が割れ、中から柔らかな新しい甲羅が見える。そして茶色の表
面はそのまま縦に伸びて…。
ポン!
見事な花を咲かせた。
「ふわあ! すごいです。本物の桜みたい〜」
それに呼応するかのように。
「ガガガ〜」
パキパキパキ・・・ドン! ボボン!
巨大蟹たちも表皮の氷を割り、中から樹木そっくりの体を現わした。どんどんと咲き
始まる桜。街道沿いは見る間に桜で満開になっていった。
「すごい、きれいです〜!」
ルーシーがはしゃぎ出す。マリアも駆け出して行く。
「あ、ああ。なんて綺麗な」
フロリーナも感極まったようだ。
「ハナサキガニたちの、お礼の気持ちなのでしょうか。冬は氷に擬態し、春は花とな
る。ゆえに春を呼ぶ幸せの生き物と呼ばれているらしいですな。」
ギャリソンもほほ笑む。ラッキーは…怪我で寝込んだままだったが。
そして、それを『子豚亭』の最上階から見る者が。
「あの蟹たちが心を開くなんてね…ふん、しょうがない。春を呼んでしまった以上、
冬は退散させなきゃね。」
リオがつぶやく。
「大地と氷の精霊よ、我、氷雪の女王リオが願う。解呪!」

シュウウウ…彼女の周りを青い冷気のオーラが包みこんだ。そして雪と氷が舞い…次
の瞬間、彼女の姿は一変した。アイスブルーの瞳、カールしたロングヘア。サファイ
ヤを散りばめた白と青のドレス。氷雪の女王は魔杖を取り出し、外に向かい振りかざ
した。
キュアアアッ!
閃光が辺り一面を覆う。すると…。ハナサキガニのいる場所から雪が消え、凍土が溶
けだし、新芽が伸び出す。空は、一点から徐々に青空が見え出した。
「あ、ああ。奇跡、ですわ!」
「きゃほーいっ、スプリングハズカーム!」
フロリーナと仲間も突如始まった春に驚愕し歓喜の声をあげた。
それを遠くから見つめる者がいた。ロウの村長たちである。
「お、おおお」
「奇跡じゃ。また桜が、雪解けが見られるとは!」
「…そうじゃ。わしらは忘れておった。冬を耐え忍べば、やがて春はやって来るとい
うことを。欲に目がくらみ、春を拒んでいたのは、わ、わしらのほうじゃった…」
暖かな風と草木と花の香りが漂う中、老人たちは子供のように泣きじゃくっていた。

ニカたちと遊ぶルーシー。それを見つめるフロリーナ。
「わたくし、気づきました。民を救うのは貧困や苦しみだけでなく、心をも救わねば
ならないのですね。」
ギャリソンがうなずく。
「責任重大ですな」
姫の頬には赤みが差し、目はいつもの澄んだ青に輝き始めた。
「ええ。でも、とてもやり甲斐がありますわ!」
終章
後日、フロリーナはリオ(その時には前の恰幅のよいリオに戻っていたが)に依願
し、ロウの村の修復と怪我人や病人の手当に出向いた。村人たちにも少しづつではあ
るが、他者に笑みを向けるようになっていった。
「修繕費とお薬代は宿屋で働いて返しますわ!」
と、意気揚々と言ったフロリーナ。しかし…
ガシャーン!
「あ〜あ〜、どうすんのさ! もう店には皿はないよッ! フンゴー!」
リオは顔を真っ赤にして怒鳴る。彼女は知らなかった。食器を扱うマナーは王家仕込
みの超一流でも、フロリーナはそれを洗う側…炊事、洗濯、家事の類いは壊滅的に下
手なのだ。
「あのその、ごめんなさい、ですわ…」
鼻先をすりむき、あちこちススだらけのフロリーナは小さくなっている。店の食器を
あらかた割り、風呂場を焦がし、ギャリソンたちが止めようとした時には借金のほう
が確実に増えてしまった。
「なんてこったい。当面、大きな仕事が入ったらこの子たちを使うしかないか…」
大きなため息をつく。リオが持ち込む危険な依頼…クエストを受けるしかなくなった
狂戦姫とその仲間たち。彼女が、魔道師ギルドが正体不明のまま、何より敵か味方か
さえわからないまま、春ののどかな日は過ぎようとしていた。
・・・以上、11話、おっしま〜い!
あとがき。
おつき合いありがとうございました。11話、なんとか春に間に合わせましたよ。
(…いえ別に同じ時間軸ではないので、無理に合わせる必要もないのですが^^;)
中盤からはルーシーメインも趣向変え、かなり…ぶっちゃけ…王蟲やもの○けっぽ
くなっちゃったんですが(爆)、勘弁してくだせえ(^^;;) それから『ばさぷり』はフ
ァンタジーですし中世に近い時代背景です。現世の日本では”お酒は二十歳になっ
てから!”でございます。
考えてみると滅び行く国や世界、というのはまあ戦記ものでは避けられない設定で
あり、実際「幼き反逆者」や「忘却の罪科」もそうだったんですが、抵抗する者、
こころ折れる者、やはり双方存在し双方言い分があるんでしょうネ。今回「ばさぷ
り」もそこをクローズアップした形となりましたが、やっぱ文が冗長になった気も
します。…ルーシ〜に合わせてスローモーになったかも〜(笑
ゆったりと世界観だけ生かして日常を描きたい、それも本音ですが、"ショートギャ
グファンタジ〜"を目指す以上、タイトに物語をまとめたい、ってのも事実だし。バ
ランス、難しいっすねえ(^^;
ずっと名前だけ出ていた氷雪の女王、そして魔道師ギルドもやっとこさ登場です。
「師」と付くからにはかなりの上級魔法使い、となりそうですが、今のところ女王リ
オ以上の使い手はギルドには存在しません。他のメンバーはあくまで魔法も使える賞
金稼ぎ、冒険者、という位置くらいかなあ?
変身前と後のギャップは…ほら、魔女っ子だったら変身もお約束、とゆ〜ことで(^^;)。
眼光の鋭さ意外はほぼ別人。(それよりキャラの描き分けがそろそろ危ないかも^^;;)
まだ姫たちはギルドも女王も目と鼻の先にいることに気付いてはいません。逆に女王
側は使い魔(白いコウモリ)や他からある程度情報は得ているはず。
なぜ正体を隠すのか? そもそも彼女たちは敵か味方か? そのあたりも次回以降、
ちょとずつ説き明かしていければと思います。
まあ余りに強いキャラははじく拙作ですので(^^;)、女王バージョンの活躍は少ないと
思います。無敵の魔鎧の無駄使いというか使い切れないところが好きなんで、まだま
だ姫には苦労してもらわなくちゃ(黒笑)。次は子豚亭のクエスト編〜氷雪の女王編、
となる予定です。
んでわお読みいただき、ありがとうございました〜♪
2008.3.29(土) up
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