ちょっと怖い小説(1)。
新興住宅地からの転入生が多いこの学校にはわりと変な奴も集まって来る。新
しく出来た俺の友人の中で、とにかくインパクトのあるのがこの足代(あじろっ
て読む。念のため。)って奴だ。
とにかく豪放とゆうかまんま野生児とゆうか、授業の途中でもぶらっと現れては
寝るだけ寝て帰っていく。御法度のバイクを乗り回すが暴走行為をするでもなく
ひたすらウィリーの練習をしては「落馬」して喜んでる。空手もならっていて、
「羽柴、お前なら片手で殺せるかな〜?」と物騒なことを口走る。このあいだなん
か花壇の草を食ってやがった。
ただ頭ン中はまるきり北京原人ちゅう訳ではなく、趣味はギターと油絵。今は俺と
同じ美術部だ。前の学校じゃアイドル研究会に入ってて菊池桃子のファンだと言う。
ゴリラが繊細な神経を持っているのってのとたいした差はないと俺はみた。
歩くテポド・・・おっとっと。爆弾級のこの男だが先生や仲間の受けはすこぶる良
い。(敵に回すと厄介だとゆう話もある。)とりわけ俺は平々凡々としてるせいか、
妙に馬があうようだ。他の奴には言わないこともよく話してくれる。
その中で、こいつが経験した、ちょっとだけ、恐い話をしよう・・・。
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『扉のむこうの、 あなたは、 だ・あ・れ?』 |
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-前編- |
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隣じゃまた転校生の自己紹介が続いている。サイジョウヒデキぃ?どっかで聞い
たような名前。音楽が好き...ふ〜ん。あ、やっぱり足代にからまれた。「菊池桃子
とヴァン=へイレン以外は認めん!」だと。んなコトより美術部の勧誘しろよ・・。
足代が前の学校じゃ顔に似合わずアイドル研究会に入ってたってのは話したっけ?
こいつが前の学校にいた時の事だ。
もちろんそんな軽薄な集まりに部費も部室も与えられず、足代たちは近くの空き地
にある使わなくなったプレハブ小屋の2階をねじろにしていたらしい。
お決まりの桃子ちゃんの歌の大合唱と、マージャン大会も佳境にはいったある日曜
日の夕刻。雀牌をかき回す音でそこにいた全員、耳が遠くなりそうだというのに、
足代だけが何かを聞き入るようなしぐさをしていた。
「ん?どしたぁ」
「・・・ああ、なんか今扉をノックする音、しなかったか?」
「やば!先公かよ?」足代のとりまき連がどよめいた。
「ば〜か、先生ならノックなんかしないで怒鳴り込んでくるだろっ。ちょっとお前
見てこいよ」
「うえっ、俺がかよ」指事された小太りなのが悪態をついた。とは言えマージャン
の負けが込んでいるのを見すかされた上での御指名である。二つある扉の片方に、
小太りは及び腰で近付いていった。
・・・いつの間にか、誰も音を立てなくなっていた。
「−お化け、かもな。」
「なっっ!? ばばっばか言うなよ! それよか足代、また喧嘩でもして狙われてん
じゃねーのかヨ?」悪党は一人でニタニタしている。「かもな」
「ちくしょーっ、開けるぞお、1、2、3、ダアーっっ!」
ギギッ。キイイイイ・・・
軋むような音をたててスチール製の扉は開いた。恐る恐る小太りが外を見回す。
部屋はプレハブの2階、出れば非常階段しかない。辺りは陽が落ちた空き地に薄闇
が覆いかぶさって・・誰もいない。
「は、ははは。やっぱ誰もいねえジャン。足代〜お前耳か頭、医者に診てもらった
ほうがいーんじゃねえかぁ?」
卓を囲んでいた他の二人もやれやれとでも言いたげな顔をする。足代の...表情は、
変わらなかった。
はあっと、小太りが息を吐き出した、その時。
今度は全員が聞いた。さっきとは反対の、もう一枚の扉を、小さく、でも確かに
叩く音を・・・!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・とん、・・・とん。
吐き出した息を引っ込めるかのように、小太りが「ひょっっ」とおかしな悲鳴を
上げた。
ガシャアッ!「うああああーっ!」
今度こそ大絶叫だ。何のことはない、やせぎすの、「いかにも」なアイドル好きが
雀卓をひっくり返してしまっただけだ。つられて奥に座っていた天然パーマ系は叫
び声をあげる。静かな日曜の夕方の社交場は一瞬にして阿鼻叫喚轟く修羅場とあい
なった。
取り乱していないのは足代だけだった。焚き付けたのが自分だということもあるん
だろうが、非常事態には慣れっこらしい。それとも超にぶなのか?
腕まくりし、スタスタとその扉に近付いた。周囲の動揺した様子を歯牙にもかけず、
「こっちは中からしか開けられねえよ、鍵、付いてんもん。」
ガチャガチャ鍵を鳴らしながら言った。それから扉に向かって声をかける。
「誰か居んのかぁ?」・・・返事は、なかった。
(何かが居る気配はする。) 試しにこちらから1つ、ノックする足代。すると。
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・・・とん・・・。 ちゃんとノック1つで返したって言うんだ・・。 |
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『扉のむこうの、あなたは、 だ・あ・れ?』 |