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「最近、マスクしている人が多いですねえ。かくいう私もですが」
春、のどかな昼下がりの公園で。半平太さんはベンチのとなりに座
った男に話しかけられた。ちょくちょく見かける公園の常連さんだ。
大ぶりの白いマスクのまま、ふごふご語り合う。
「まったくですな。去年の風邪がまだ抜けんのですわ。おたくもです
か?」
「いやあ、私はインフルエンザで。ようやく治ったと思えば、今度は
花粉症ですよ。杉の花粉が終われば次は檜、その次は、えっと…」
くしゃみと咳が交差しながら男は指を折る。
「マスクを外す暇もないですなあ、はっはっは」
「まったくです。」
挨拶をして別れた後、半平太さんは気が付いた。
「…そういえばお隣りさん、去年の夏もマスクをしていなかったか
な?」
数日後、半平太さんの近所で逃亡中の殺人犯が逮捕された。
男はマスクをして顔を隠し、数年間に渡り潜伏していたらしい。聞け
ば半平太さんを含めご近所一帯、誰も顔を見たことがなかったという。
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