ちょっと怖い小咄。


 
小咄其の九拾弐   abduction

 あるUFO研究家は言う。

「宇宙人はUFOで人類を拉致し、実験後に記憶を操作し戻している」


と。科学者たちリアリストは反論する。

「数光年もかかる宇宙を行き来してそんなことをする意味があるか?

そもそも宇宙に知的生命が存在する可能性はあるが、確実ではないと

いうのに」

云々。

 山奥県伊那香村で。

「おっかあ、ありゃ何だべ?」

畑仕事をしていた稲田大吾朗さんは天を仰ぐ。

「なんじゃろねえ。」

90度に曲がっている腰を3度ほど傾け、老婆も見上げる。そこには

銀色に光る謎の円盤が高速で回転し浮遊していた。円盤はゆっくり

と着地し、中から…

いかつい灰色の人が、まわし一本の姿で塩を巻きながら現れた。

「オマエ、勝負シロ!」

どうも相撲をとりたいらしい。

「なんだあ、おめえ? オラを村一番の相撲取りと知ってんのか?」

大吾朗さんの問いに耳を傾けもせず、灰色の人はやる気満々である。

「行クゾ! ハッケヨイ…」

つられて大吾郎さんも四股を踏み、かまえ…


「――ダカラ言ッタンダ。アンナ未開ノ原住民達ニ、ソノマタ民間

芸能ノヨウナスポーツデ勝ツナンテ無理ダッテ」

円盤の中、灰色の小さな人の仲間が、ボコボコにされた友人の治療

をしながらボヤいた。

「ウルサイ! 今度コソ勝テルト思ッタノニ。次コソハ…!」

「ソレカラ負ケタカラッテ、
原住民ノ記憶リセットスルノ、

止メロ。

 灰色の人はすごい負けず嫌いだった。


 

・・・おしまい。

2009/2/1(日)  up

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