ちょっと怖い小咄。


 
小咄其の九拾壱   新・裁判員制度

「おーい、来たきたキタ―――! 俺んとこにも来たぞ、裁判員制度

の招集状。うひゃひゃ、赤紙青紙黄巻紙〜♪」

「…やめろよ、騒ぐの。これって秘密にしなきゃ駄目なんだろ? 

いやだいやだ、不謹慎な」

ぱんぴーサラリーマン半平太のアパートに悪友、麻太郎が嬉々とした

顔で飛び込んで来た。

「だって俺、これ出たかったんだもーん。バシバシ有罪にしてやるん

だ、けっけっけ。」

「忙しいし、面倒だし、俺ならやりたくないなあ。だいたい愚痴や

不平は言っても、他人を有罪にしたがる奴なんて日本じゃマレだよ。」

半平太はしかめ面で答える。

「思うんだけど、これってランダムじゃなくて適任者を選んでるん

じゃねえ? お前なんか絶対選ばれねーよ。後ろ向きだし覇気無いし、

反体制な事ばっか言ってるし」

憎々しげに口をひん曲げ、暴言を吐き散らす麻太郎。

「…いや、実は、俺んとこにも、なんか来たんだけど…」

「へ? ウソだろ、見せてみ。――なんじゃこりゃ」

封筒には「"被告人役"召集通知書」とある。

「うひゃひゃひゃ、こりゃいーや。お前犯人ケッテーな! お前

世間をうらやんで犯罪起こしそうだもん。やっぱ適任者だ、うひゃ

ひゃひゃ」

半平太は青スジ状態だ。

「…マジかよ? 黙ってりゃ好き勝手に制度作りやがって…もー

あそこにゃ投票しねー」

そこへ、もう一人友人がやってきた。仏頂面の沢一郎である。

「お、おれんとこにも、コレ、来たぞ」

「けっけっけ、なんだよ、今度は"裁判官役"制度かよ?」

麻太郎の問いに、うつろな目をして沢一郎がポケットから取り出

した封筒には、

『"死刑執行人"招集状』

と、あった。

「えへへ、いいや、こ、ここで済ましちまおう…」

「…へ?」

 半平太の目の前で、沢一郎は別のポケットからにぶく光るもの

を取り出した。


 

・・・おしまい。なお、この小咄はフィクションであり、実際の陪審員制度とは(以下略)

2009/1/2(金)  up

小咄indexへ   次へ


●top ●index ●novels ●gallery1 ●gallery2 ●notes ●otehrs ●link