ちょっと怖い小咄。


 
小咄其の八拾六   究極の水着


「いよいよ五輪を目前にわがミデックス社にもチャンスが到来した!

ハイスピード社の水着が世界記録を続々と塗り替えたため、日本でも

水着が自由競争となったのだっ」

「これでみんなハイスピード社の水着が買えますね、鶏冠部長。」

「牛尾君、君は馬鹿か? うちもスポーツ製品を売っておるのだ。こ

こで名と実を上げんでどうする? 馬鹿だ馬鹿だと思っていたが想定

外の馬鹿だ。馬鹿は死んでも治らない」

「え〜だって日本の大手メーカーが軒並み競合して負けてんですよ〜。

三流会社のうちが太刀打ち出来るワケ、ないですよ〜」

「いいか牛尾君、他がやらないことをやらんでどうする? ない知恵

を絞れ!」

「あだだだ、頭絞ってもなんも出ませんよ〜。かたちが変わるううぅ」

「しぼってしぼってしぼって…
あ!

 

 ミデックス社の発売した新作水着は体を流線型に引き締める、とい

ったハイスピード社の水着とコンセプトは変わらなかった。ただ、足

をつま先まで豪快に引き絞り、さらに水掻きや尾びれの形にまで変形

させる、といった他にはないオリジナリティがあった。まさに”着た

だけで人魚になれる”究極の水着。

 

 

・・・もちろん、誰も買おうとはしなかった。


 ・・・おしまい。

2008/6/28(土)  up

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