ちょっと怖い小咄。


 
小咄其の八拾四   み ら い の く る ま。

 近未来、超高齢化時代に突入した日本は交通事情も一変した。

枯葉…もとい高齢者マークの車があふれかえり、あちこちで事故や交通違反が発生

するようになっていた。事態を憂慮した政府は免許定年制を実施し、高齢者は他者

に運転してもらうか、でなければ全自動のロボットカーで制限された通路だけを走

るしかなかった。

核家族化が進んだ世代の高齢者達は身よりもなく、またロボットカーを買うほどの

余裕もない。車は老人にとって富裕層のみの楽しみとなってしまった。

「しかたがない、歩くか」

「自転車でもないよりましじゃろ」

中流層以下のお爺ちゃんお婆ちゃんはしぶしぶ体を動かし始めた。

 きこきこ、自転車で走る貧乏爺さんがロボットカーに乗る金持ち爺さんを羨まし

そうに眺める。ため息をついてはまたペダルをこぐ。

いつの間にか筋力もつき、排気ガスも気にならない生活にちょっと若返った貧乏爺

さん。すれ違ったロボットカーには運転の自由も健康も奪われた金持ち爺さんが、

それこそ死体のようにシートに羽交い絞めにされ、何も無い空を見つめていた。


 ・・・おしまい。

2008/5/4(日)  up

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