近未来、超高齢化時代に突入した日本は交通事情も一変した。 枯葉…もとい高齢者マークの車があふれかえり、あちこちで事故や交通違反が発生 するようになっていた。事態を憂慮した政府は免許定年制を実施し、高齢者は他者 に運転してもらうか、でなければ全自動のロボットカーで制限された通路だけを走
るしかなかった。
核家族化が進んだ世代の高齢者達は身よりもなく、またロボットカーを買うほどの
余裕もない。車は老人にとって富裕層のみの楽しみとなってしまった。 「しかたがない、歩くか」 「自転車でもないよりましじゃろ」 中流層以下のお爺ちゃんお婆ちゃんはしぶしぶ体を動かし始めた。
きこきこ、自転車で走る貧乏爺さんがロボットカーに乗る金持ち爺さんを羨まし
そうに眺める。ため息をついてはまたペダルをこぐ。 いつの間にか筋力もつき、排気ガスも気にならない生活にちょっと若返った貧乏爺
さん。すれ違ったロボットカーには運転の自由も健康も奪われた金持ち爺さんが、
それこそ死体のようにシートに羽交い絞めにされ、何も無い空を見つめていた。