ちょっと怖い小咄。


 
小咄其の七拾四   選 挙 へ G O !

「皆さん、まもなく『さんいんせん』が始まりまーす!」

 渋谷の某有名ビル前に作られた特設ステージ。景気の良い女性の声がスピー

カーでガンガン響く。

「おおー!」

暑さにも負けず、集まってきた若者たち。歓声が、喝采がうねりを上げる。

「待ってましたッ」

「俺、今年20歳でさ、去年は投票できなくって悔しかったんだー」

「私も〜」

「お、おれ今度2度目。誰に投票しようかな? ウヒヒ」

若者達の晴れやかな笑顔とは対照的に、ステージには青い顔をさらにどす黒く

した政治家の面々が顔を並べる。政界を騒がせ、失言を繰り返し、マスコミに

スキャンダルを振り撒いた者もいる。全然見かけたこともない地味な政治家も

いた。

「お・・・・」

一人が口を開く。わなわなと震え、いつもの饒舌さは微塵もない。

「お願いです! な、何でもします」

「今度こそ国民の皆様のためになることを!」

「身を粉にして尽くしますううう」

「わ、わたしを犬と、犬畜生と呼んでください! あ、ああ動物愛護団体の皆

様、これは言葉のあやで…」

全員が必死にアピールを始めた。若者たちはニヤニヤとその醜態を見つめる。

「だ、だから」

「お願いします、
今度の選挙では、選ばないでええぇ…


 

 

 相次ぐ失態と不祥事、経済破綻のため、暴動はおろかクーデターまで起こり

そうになった国家は、打開策として人身御供を差し出すことを苦渋の末決定し

た。国民の投票でワースト順位を決め、選ばれた者は役職、地位財産すべてを

放棄し、全国を苦情対応にのみ回る、というものである。

 

司会の女性の声がまた響く。

「さあ、皆さん投票の準備はできましたか〜? それでは、
惨疑院総選挙

スタートです!」


 有権者皆が絶叫し、投票所に駆け込んで行った。

                   ・・・おしまい。          





2007/7/7(土)  up

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