ちょっと怖い小咄。


 
小咄其の六拾伍   イ ン フ ル エ ン ザ

 木枯らしの吹く街。たちの悪い風邪が流行り、人々は皆 マスクをかけ、厚着

をしてふらふら歩いていた。ビルの巨大なパネルに映し出されるニュースも不景

気だ。 官は汚職、民は不祥事、学校はいじめ、家族は殺し合い。

(これも流行り病だろうか…?)

そんな馬鹿げた考えさえ浮かんでしまう。

「地球の皆サん、コンんにちわ」

唐突に画面は切り替わり、銀色の、いかにもな宇宙服を着た人物が映し出される。

異様に黒く大きな目がゴーグルから覗く。

「まるで宇宙人だな」

誰かの嘲りの声が聞こえる。 その声に呼応したかのように、大音響で音声が響く。

「我々は"オーナー"でス。地球の皆さんにはタイヘン申し訳ないいいのデスが、

悪質な病原菌が流行しましタタ」

ザァ。

突然の雨、と思うとそれは消毒液の臭い。それを撒いているのは…本当に巨大な、

銀色の円盤だ。

「お、おい」

「マジで、宇宙人、だ…」

人々の不安そうな声。

「本当ででででス。皆さんは、"
病んで"いまス。我々は必要なぶんだけ育て、搾

取してきましたガ、もうここまで感染しては仕方がありまセンン」

よく見れば彼の着ているのは、レトロな宇宙服ではない。

感染防止のためのスーツだった。

「この星は全部消毒して、『養人場』は閉鎖しまス。残念ながら全員、処分しな

けれバ。アア、大赤字ダダダダ」

"オーナー"はゴーグルを下ろし、ガスボンベらしき物を操作し始める。

 ・・・
本気だった。


 ========おしまい 。=========


(養鶏場の皆様たいへんたいへん失礼しました)

2007/2/2(金)  up

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