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とにかく怖がりでいけない。 竹之内半平太さん(32)は、会社でも同僚が怪談やホラー映画の話を すると席を立ってしまうし、停電の時など悲鳴をあげてしまったほ どだ。 残業で深夜の地下鉄に乗った時。 彼とて都市伝説や怪談を知らない訳ではない。なるべく乗客の多い、 明るい車両に乗る。例え座れなくても。窓の外は見ない。例え暗闇 だけで反射して見えないとしても。 疲れた顔の並ぶ車内を見ても面白くもないが、眠れもしない。 半平太さんは、少しだけ窓を覗こうか、と考えた。誰か外から覗い ていたり… ぶるぶる! (いやいや、いかんいかん。) 彼は想像すら止めた。だが…。 気になりだすと止まらない。見るべきか、見ざるべきか? そおっと。 恐る恐る車窓を見る。 「ひっ! …あ、あ」 白くぼおっと浮かび上がる顔がひとつ。なんのことはない、見えた のは自分の顔だけだった。 「あ…当たり前だよな、自分の顔が映るのは。はは、は。 ・・・・・・はあ?」 自分の顔だけだった。窓の向こうには半平太さんだけが見える。 その向こうには他の乗客も、車両すら映っていなかった。 急に心許なくなった座席の端を握りしめ、彼は振り返り、生気のな い乗客を見つめ直した。 それから、もう一度だけ、ゆっくりと。 窓の 向こう を 見 た ・ ・ ・ 。 |