ちょっと怖い小咄。


 
小咄其の伍拾八   お ね だ り

「ねえママ、空き地でさ、子犬、拾っちゃった。飼っても、

いい?」

夏休み。ケンタくんは台所に立つ母親におずおずと聞いた。

「だーめ。いつも飽きちゃうでしょ。ママが世話するの、目に見え

てるもの。もとの場所に戻してきなさい」

にべもない。

「今度こそちゃんと育てるよ。そりゃ、文鳥とカメのときは失敗し

ちゃったけど。」

「いけません。金魚もそうでしょ? それに玉ゴッチだってフンだ

らけでしょー。」

ママは炊事の手も休めず反論する。

「ああ〜、ゲ、ゲームは見ないでよお。ぐす、じゃあ前にママが話

していた猫は? 夏休みの宿題に、観察日誌をつけないと先生に怒

られるんだよ〜。」

「ああん、猫ねえ。可愛いけど…パパのボーナスが出てからね。決

めるのは」

諦めきれないケンタくんは最後の交渉にうって出た。

「じゃあ、ニンゲンは?」

「だめですあんな劣悪種。私達が管理しなきゃ、星ごと滅ぼすとこ

だったのよ。…でも保護のために手当が出る、って回覧にあったわ

ね…。すぐに悪さをしたりメスを見ると襲ったりするから気をつけ

て飼うなら、いいわよ」

「はーい。ちぇ〜、ニンゲンでガマンするかぁ。」

 ケンタくんは褐色の大きな手を降り、子犬をぽいっと放り投げる

と器用に大顎で挟み、そのまま六本足で外へ駆けていった。
   
                     おしまい。


 ========おしまい。=========

2006/07/29(土)  up

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