ちょっと怖い小咄。


 
小咄其の伍拾伍   キッチンドランカー

 「あなた、今度のボーナスは絶対システムキッチン、買ってよね」

「うーん、額も少ないだろうしなぁ、車もガタついてきてるし。」

妻のツクネさんのお願いに、半平太さんは上の空である。

「そう言って自分の買いたいものばかり。もう、ヤケ酒飲んじゃおうかしら」

「おいおい止めてくれよ。最近酒の減りがはやいぞ」

ストレスが溜まり、引きこもりがちになる毎日。ツクネさんの飲酒量は日に日に

増えて言った。



 ボーナスの支給日。遅くまで帰ってこない亭主にツクネさんは携帯に連絡した。

「あなた! いつまで遊んでるの? キッチンの件…」

「ああ、ゴメンゴメン。車の販売会社の友人と飲んじゃってさぁ、新車の契約

しちゃった〜」

「・・・・・・・・」

ぶちっと携帯が切られた。



さすがにまずいと思った半平太さんが深夜に帰宅すると、台所に人の気配はある

が真っ暗なままだ。

「おい、ツクネ・・いるんだろ? 悪いな」

暗がりに人影があるが、ぶつぶつと何か言っているが動かない。

「まさか酒で…倒れちまったか?」

あわてて電気をつけ、

半平太は言葉を失った。

古びた台所のキッチン、調理器具、もろもろが「ない」

何もない。

「ふふふ、おかえりぃ。お酒といっしょにぃ、キッチン、
"飲んじゃった"

・・・新しいの、買ってね〜・・・」

いびつな妻の腹部を、ずっと半平太は見続けた。
                     


 ========おしまい。=========



2005/11/19(土)  up

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