ちょっと怖い小咄。


 
小咄其の六拾六   笑いのユニバーシティ(前編)

 20XX年。

クソ真面目と堅物を足して2をかけて、朴念仁でコーティングしたような超タカ派

の党首がこの国の代表となってからというもの、この国にあった「笑い」というも

のは忌み嫌われる存在となった。

その勢いはますます時流を飲み込み、翌年にとうとう出された「禁笑法」により、

笑いというものは絶えて久しくなった。

無論、関西地方を中心に反対勢力は勃発したが弾圧と粛清の嵐は激しく、少数のレ

ジスタンスが無差別テロと称し野外ライブ漫談で茶を濁す程度のことしかなくなっ

ていった。

 どのくらいの時が流れたのだろうか…。

「関東にも昔は反対勢力はたくさんいたのにな」

苦虫を噛み潰したような顔で稲垣広司はつぶやいた。レジスタンスは祖父の代から

続けている、いわばレジスタンスのサラブレットだ。

「まったくね」

困ったような顔で側に立つ美女、三谷喜子が返す。笑う、というものがどういった

ものか、生まれた時には法制化され、弾圧されていた二人は知らない。ただ、現状

の陰鬱とした状況を打破するためには「お笑い」を復活させる、それを長老から受

け継いでいるだけである。

年配者の中には顔を歪ませ、口元に妙なひきつれを挨拶代わりにしている者もいる

が、若い彼らには実のところその意味が飲み込めないでいた。

(笑いってなんだ?)

現状を打破したい、無論テロリストではないのだから国家をどうにかしたいワケ

じゃあない。答えが出ないまま若者たちは悶々としていた。

 対策室のある地下のアジトで。今日も彼らは苦渋に満ちた顔で明日を模索してい

た。一人の仲間がうろうろと歩き回り、

「ズル」

何故か捨ててあったバナナですべり、

「ドゴ」

もんどりうって壁にぶつかり、

「ガンッ」

なぜかタライが落ちて頭に当たり、鼻から青ハナと鼻血を片方

づつ吹き出して失神した。全員がその男に注目する。

「…痛そうだな」

「不注意な」

「たいへんね」

皆それぞれ怒り困り、悲しげな顔をした。何か忘れてるな、と心の片隅では思い

ながら。

バン!

突然アジトの隠し扉が開く。稲垣、三谷他、レジスタンス全員が殺気を帯び振り

返る。そこには、関西地区メンバー、役所吾郎がいた。

「みんな、ええええ〜か、驚くな。伝説の"お笑い芸人"が、おったんや! マフ

ィアが芸人を隠し、その"お笑い"っちゅうのを密売していたんやああああぁ!!」

「なんだって?」

「どうしてそんな非合法なことが…」

言葉を失う関頭のメンバーたち。

「ンなこと、知るかーっ!」

絶妙の役所の切り返しに、稲垣も応えた。

「そうですね。」

 邪悪な陰謀があるのかもしれない。皆、眉間のシワを深くしながら天を仰いだ。しれない。皆、眉間のシワを深くし
ながら天を仰いだ。          


 ========= 続く =========




2007/04/07(土)  up

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