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「へっへっへー、買っちゃった、Rey-Pod。」
林悟(はやしさとる)君は首から提げた、銀色に輝く十字架型の携帯音楽再生機を自
慢げに見せびらかした。
「おー、これって何百曲も入るってアレか〜」
友達の円ヒロシ君もかなり乗り気だ。
「ちっちっち、1000です。1000曲。パソコンの中の音楽ファイル、全部入れても
オッケーだしー」
ノリノリで踊る林君に、円君はやっかみ半分に言った。
「でもそんなにいっぱい入るんじゃ、何の歌が入っているか判らなくなるんじゃね?」
言うや否や。
「・・・・・」
林君の動きが止まった。ヘッドフォンに手をあてる。何かを思い出そうとする仕草。
「な、なんだよ?」
「…いま聞いた歌、どこで聞いたんだっけ…Podに録音して、ないよな…」
もどかしく遠くを見る表情。
「ほ、ほらみろ、だいたいお前もの覚え悪いし…、って、おいどこ行くんだョ?」
円君の言葉も届かないのか、林君はそのままフラフラと去っていった。
その夜、円君の携帯に林君から連絡があった。
「思い出した、あれ、死んだ婆ちゃんの歌ってた子守歌だ…」
その後林君の姿を見た者はいない。
似たような、ひどくやつれた男が必死にPodの選曲ボタンを押し続けていた、という
話だけが流れてきた。
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