ちょっと怖い小咄。


 
小咄其の伍拾弐   携 帯 音 楽 の 壺

「へっへっへー、買っちゃった、Rey-Pod。」

林悟(はやしさとる)君は首から提げた、銀色に輝く十字架型の携帯音楽再生機を自

慢げに見せびらかした。

「おー、これって何百曲も入るってアレか〜」

友達の円ヒロシ君もかなり乗り気だ。

「ちっちっち、1000です。1000曲。パソコンの中の音楽ファイル、全部入れても

オッケーだしー」

ノリノリで踊る林君に、円君はやっかみ半分に言った。

「でもそんなにいっぱい入るんじゃ、何の歌が入っているか判らなくなるんじゃね?」

言うや否や。

「・・・・・」

林君の動きが止まった。ヘッドフォンに手をあてる。何かを思い出そうとする仕草。

「な、なんだよ?」

「…いま聞いた歌、どこで聞いたんだっけ…Podに録音して、ないよな…」

もどかしく遠くを見る表情。

「ほ、ほらみろ、だいたいお前もの覚え悪いし…、って、おいどこ行くんだョ?」

円君の言葉も届かないのか、林君はそのままフラフラと去っていった。



 その夜、円君の携帯に林君から連絡があった。

「思い出した、あれ、死んだ婆ちゃんの歌ってた子守歌だ…」

 その後林君の姿を見た者はいない。

似たような、ひどくやつれた男が必死にPodの選曲ボタンを押し続けていた、という

話だけが流れてきた。
                 


 ========おしまい。=========



 単にiPod買って嬉しいので書いたよな作品です。

私にとってPCは永遠の謎であり、つなげる携帯音楽もまた然り。

林君が取り付かれたのは、お婆ちゃんか、もっと怖いナニカなのか?

落としどころは御自分の闇の中、っつーことで、いつもながらの書き

逃げですピュー(^^;)。


2005/08/2 8(土)  up

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