ちょっと怖い小咄。


 
小咄其の四拾  ユビキタス

 空港にて。

「ナニ、最近のパソコンって指紋を感知するの?」

ちょっとツッパリ入った哀川笑さんが隣席の男に尋ねた。

「そっスよ。あ、指紋は微妙に違うから触っちゃ駄目スよ」

ノートPCを広げつつ、木村蛸哉くんは自慢げにボソボソ言った。

「今じゃー、ユビキタスっつんですか、データの持ち出しもすげぇ楽で、ホントに指一本なんすよ」

木村くんが指差すpcの先には…CDやフロッピーを抜き差しする入り口も、他の機械をつなぐUSB

コードの端子もない。

あるのは…

「? ナニこれ、指を入れる穴…なワケ?」

指一本ぶんの穴がPCには空いている。いぶかしむ哀川さんに、木村くんはにんまり笑って答えた。

「そ。爪の表面に直接データを書き込むんっス。これなら無くさないし、個人情報も守れるし、

"指、きたーっ(゜▽゜)/!っス"つうコト」

自慢たらたらの説明中、いきなり哀川さん、その穴に指をつっこんだ。

ぅわナニするんスか!?」

「いいじゃん俺にもやらせてよ。あ、でも俺、指先ケガして爪ないんだけど…」

どか。

言うが早いか、哀川さんは突然硬直し、痙攣を起こしブッ倒れた。慌てた木村くんが抱き起こすと、

哀川さんはいきなり木村さんの喉に噛み付いた。

うぎゃ! あああナニを」

「ナニ、あんたこのPC、
ウィルスに感染してるよ。どうもウィルスのでででデータが細胞に直接

上書きされて、他に感染させるようめめめ命令してるようだナナナナナ」

小刻みに震えながら哀川さんは噛み続ける。

指先からワーム(虫)がのたくるように「何か」が蠢いている。木村くんが痙攣を起こしだした頃、彼は

内側からDNAを書き換えられ、"何か別のもの"に変わり始めた。

 ========おしまい。=========

2004/07/29(木) 初出

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