|
あるところに年の離れた夫婦がいた。 「はあ…どうしたらいいんだろう? 彼女の願いがかなうなら命だって掛けるのに」 その時、暗がりから唐突に嗄れ声がした。 「ぎゃっぎゃっぎゃっ。それなら話が早い。オレと取り引きしろ」 現れたその黒い影は、世間一般に言う「悪魔」の姿をしていた。 「ひいっ! あ、あんた悪魔か? 取り引きって…ままっまさか俺の命と引き換えに、って? そ れじゃ困るよぉ」 神も仏もない、という顔で男は泣いた。 「なに恐れることはない。お前の強い愛情に感激しただけさ。ちょいと辛いが、命まで取りはしな い。彼女の若返りは約束しよう。さ、取り引きしろぎゃっぎゃっぎゃっ。」 結局、男は悪魔と取引をすることにした。はたして女は若返り、命の躍動に満ちた美しさを取り戻 した。代わりに男は命までは取られなかったが、見る影もなく老け込んでしまった。 「お、お前…!」 |
|
おまけ それでは悪魔は本当に慈善事業をしたのだろうか? 「ぎゃっぎゃっぎゃっ。オレはちょっとだけ寿命のパイプをつなぎ代えただけ。一番コストのかか らない魔法さ。 男は間もなく寿命で死ぬから不当に命を取るわけじゃあない。女は最愛の伴侶を見つけた途端、長 い後悔の余生を送る。死と不幸、一挙両得ってわけ。ぎゃっぎゃっぎゃっ。」 |