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小説家の水木夏彦は睡眠不足で悩んでいた。最近頻繁に悪夢を見、そして必ず枕が足元に移動し
ているのだ。今夜もそうなるかと思うとなかなか寝付けない。
「それは妖怪の仕業に違いありません」
突如寝室に現れた少年は敢然と言った。茶髪ワンレンは今風だが、阪神ファンだろうか、レトロな
学生服の上に虎縞のベストを着ている。
「僕は葉加馬きたろうです。安心してして下さい。父さんこれは妖怪<枕返し>の仕業ですね。夜な
夜な枕を足元に移動する、悪戯好きなヤツです。」
面食らった夏彦だが、とりあえず反論した。
「父さん、て…とにかく、毎晩、ってワケじゃない。枕も動かず、安眠できる夜だってある。妖怪
なんていやしない。私の寝相が悪いだけで、世に不思議なし…」
「それは妖怪<枕返しがえし>の仕業です。<枕返し>のやった事を逆さまにする、悪戯好きのヤツで
す。大丈夫、僕は妖怪のプロフェッショナルなんです。最近東京に茶屋を出しました。」
葉加馬くんは敢然と言い切った。
「んなコト言ってたらキリがないじゃないか。それじゃ、朝までずっとその二匹が悪戯しあってる
と?」
夏彦の問いに葉加馬くんは敢然と言い放った。
「妖怪は一度しか悪さはしません。ほら」
開け放った寝室の窓の向こうには、<枕返し>らしき子鬼の妖怪と、それによく似た妖怪が終点が見
えないほど遠くまで、一列に、自分の悪戯の順番を待っていた。
帰り支度をしながら、葉加馬くんは敢然と言いぬけた。
「まず1匹めが<枕返し>、2匹めが<枕返しがえし>で3匹めは<枕返しがえしがえし>。その後ろが
<枕返しがえしがえしがえし>……」
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