ちょっと怖い小咄。

 小咄其の拾参  国家からのプレゼント

 軽佻浮薄なこの国で、最初は勢いが良かったが今やすっかり落ち目の首相から全国

民に向けての演説があった。

「あー、国民の皆さん、景気回復も構造改革もまだまださっぱり進まず、ほんとーに

申し訳ない!」

全然申し訳なさそうではない声がこだまする。

「せめてものお詫びに、政府は国民ひとりひとりに、新型携帯を無償でプレゼントす

ることにした! おじいちゃん、おばあちゃんから赤ちゃんの分まである。存分に使

ってほしいっっ!!」

税金も援助もいやだがタダならなんでも欲しい、という国民性にこの政策は受けた。

瞬く間に携帯普及率は100%を超えた。首相はまた「時の人」に返り咲いた。

 官邸でにやつく首相に秘書が静かに声をかけた。

「総理、今回はうまくいきましたな」

「ああ、おかげで国民全員にID番号を登録することが出来たよ。やつら勝手に個人情

報もドンドン入力するし、代金は税金で引かれていることも気付かんし。・・・住基

ネットなぞ使わんでも最初からこーすりゃ良かったんだ、わははははは、は。」

得意満面で部屋を出ようとする首相は思い出したかのように秘書に囁いた。

「待ち受け画面に私の顔写真、着メロに我が党のテーマソングをそれとなく紛れ込ま

せるのも、忘れるなよ、うん」

秘書は頭を下げ、首相を見送った。

            

 ========終わり=========

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