小咄其の拾弐 転 生
「・・・火付け、追い剥ぎ、かどわかしは言うに及ばず。殺人の際、快楽の為に死
体を切り刻む所業は悪鬼の如し。よって下手人の榊原薔薇太郎を牛引きの刑に処す」
悪逆非道の限りを尽くした薔薇太郎にも最期の時が来た。
「けっ、死んでも生まれ変わって、また同じ悪さをしてやらあっ!」
呪詛の言葉を吐き続ける男に、奉行はさらりと言った。
「生まれ変わるんなら身も心も綺麗になって、人に役立つことをするんだな」
この時代の極刑、「牛引き」とは五体に縄をかけ、それぞれを猛牛に引かせてバラ
バラにするという残酷極まりないものである。因果応報。流石の極悪人も、手足も首
も引きちぎられての無惨な死を遂げた。
ところが。
神の気紛れか悪魔の陰謀か。薔薇太郎の執念がそうさせたのかもしれぬ。時は移り、
平和な現代にその男は転生した。
「けけけけ。またこの世でも面白可笑しく暮らしてやろう。お、ちょうど前から可愛
いガキが・・・。」
純粋可憐な少女を毒牙にかけようとしたその時。榊原薔薇太郎は自分が野に咲く一輪
の薔薇に生まれ変わったことを知った。
「まあ、きれいなお花。」
少女は歩みを止め、道に埋まった彼の身体を無理矢理引きずり上げた。下半身はちぎ
れ、刺や枝葉といった腕や肌の一部はもがれ、彼は声にならない叫び声をあげた。
少女は花の香りを楽しんだ後、好きな異性でもいるのだろうか、花占いを始めた。
(綺麗になって、人に役立つ・・・)
引き裂かれだした頭で、薔薇太郎はぼんやりと奉行の手向けの言葉を思い出した。
少女は占いの結果が気に入らなかったか、花の頭をぶちりともぎ取り、投げ捨てて
去っていった。