平赤井の華蔵院で畜犬慰霊祭
  モラルの向上で犠牲は減っているというが

 

華蔵院で開かれた畜犬慰霊祭

 平赤井の華蔵院で23日、平成12年度畜犬慰霊祭が行われた。殺処分される犬や猫の霊を慰めるため、県獣医師会いわき支部が毎年、開いている。関係者によれば、殺処分される犬や猫の数はここ10年、減少傾向。飼い主のモラルや意識のアップが想像できるという。しかし、それでも人間の都合で犠牲になる犬猫は年間1,000匹以上。課題も決して少なくない。

 降りしきる雨の中、慰霊祭は本堂で行われた。支部員、市保健所に市支所職員など約35人が出席。高木凡夫支部長が「動物愛護のため活動し、犠牲になる数は減っているが、今年も畜犬祭をやらなければならない」とあいさつした。

 朝比奈章悟保健所長もあいさつし、「人間にとって最も身近な動物は犬と猫。犬は盲導犬や狩猟犬としても活躍。最近はコンパニオンアニマルの名前で人間の心の拠り所や、心身の健康など、人間社会の中で貢献している。狂犬病や人に危害を与えるなどと抑留所において殺処分されているが、私たちの目的とするところではない。共存社会を目指し、努力し続け、犬猫の慰霊に対して冥福を祈りたい」と語った。

 この後、阿地照康住職が読経し、読経の続く中、参列者一人ひとりが焼香して犬や猫の霊に手を合わせた。

 市保健所によると、同所では平日は毎日、車両で市内を巡回し、捨て犬や苦情のあった野良犬を捕獲している。一時は死者まで出た狂犬病の予防などに基づくもの。さらに「飼えなくなった」「要らなくなった」などと飼い主が持ち込むケースもあり、同じ理由で猫も持ち込まれている。


焼香する高木支部長と
朝比奈所長

 これら犬猫は、平赤井にある犬抑留施設に運ばれる。猫は翌日に、法律で抑留期間が決められている犬は3日間以上抑留され、毎週金曜日、炭酸ガスで窒息死させられる。「逃げ出してしまった」「もしかしたら捕まってないか」などと飼い犬を探しに来る人も中にはいるが、飼い主と一緒に帰れる犬は数%。昨年は、捕獲と引き取りを合わせて犬858匹、猫467匹が保健所に集まり、犬824匹、猫467匹の計1,291匹が殺処分された。飼い主が連れて帰ったのは犬49匹だけだった。

 市保健所によれば、これらの数は、ここのところ減少傾向にある。平成元年をみると、捕獲と引き取りを合わせて犬1,798匹が集まり、1,736匹が殺処分された。猫は関連する法律が出来ていないため記録がないが、犬の数だけでも昨年より多い。ペットブームの昨今、手続きが簡単になったこともあって登録犬数は増えており、約1万4,000匹。そういった中、殺処分数の減は、飼い主のモラルや動物愛護意識が上昇し、正しく飼われているとの見方もできる。

いわき市の犬・猫殺処分件数(市保健所提供)

 
捕獲数
返還数
受入数
殺処分数
受入数
殺処分数
1989年
1,159
62
639
1,736
 
 
1990年
1,025
52
661
1,634
 
 
1991年
967
52
627
1,542
782
782
1992年
865
47
568
1,386
744
744
1993年
918
57
514
1,375
679
679
1994年
976
60
349
1,265
611
611
1995年
893
65
251
1,079
555
555
1996年
779
56
286
1,009
521
521
1997年
798
51
237
984
398
398
1998年
859
37
子犬
成犬
822
子猫
成猫
383
61
111
327
56
1999年
681
49
81
96
824
396
71
467
※単位:匹、1991年から猫の数も記録、また1998年からは子犬、成犬のように分けて記録している。

 しかし、一方では「悲しむどころか、保健所に渡すとせーせーしたような顔を見せる飼い主もいる。動物たちを育てるために勉強してきたのに…。憤りを覚えて腹が立つ」と職員は話す。好きでやっている仕事ではないのに、心ない言葉をぶつけられる回収職員もいる。「その怒りを、励みや問題意識に変えて頑張ろうと思っている」とも職員は話すが、殺処分日の職員の思いは想像に難くない。しかもこれらには年間、約1,193万6,000円もの予算が使われている。抑留所は希望があれば公開しているが、訪れるのは引き取りの飼い主や、愛護団体ぐらい。今年初めて中学生が見学に来たが、「もっと実態を知ってほしい」と職員は言う。

 また、犬の捕獲や殺処分数は減っているものの、猫に関しては関連の法整備が遅れていて、放し飼いが良くない犬とは性格も異なるため、対処が課題になっている。子猫・子犬が持ち込まれた場合、生かして活用する国も出ているが、現状では、病気の有無や予防接種をはじめ、飼育しておく場所に職員の配置などの問題があり、市保健所では課題となっている。

 捨て犬猫、野良犬猫を増やさない方法のひとつに、避妊があり、1972年(昭和47年)に動物愛護法が出来た当時は、関東や関西の自治体を中心に、避妊の助成が普及した。しかし、現在、市民のモラルが上がってきたこともあって辞める自治体もあり、「『正しい飼い方は飼い主の義務。避妊も飼い主がすべき』の意見もある。犬や猫を飼っていない市民も多く、市民全体の盛り上がりでもなければ、簡単には実施できない」と保健所は説明する。

 とはいえ、殺処分関係に1,000万円以上もかかっているのであれば、その費用を避妊にも回し、不幸な犬猫を作らせないのも、ひとつの方法かもしれない。同時に関係者は「最も大切なことは市民のモラル」と話しており、市民がこの現状に気づき、問題意識を持って声を出していくことが求められそうだ。

(いわきタイムズ編集室 times-info@iwaki.co.jp

 写真ルポ 平赤井の犬抑留施設

 畜犬慰霊祭の翌24日、平赤井の犬抑留施設を訪ねた。市内には、訪ねて写真を撮り、市民に現状を訴えている「いわき犬猫を捨てない会」もあるが、実態はほとんど知られていないという同施設。目を背けてはならない現実がここにはあった。その断片を写真で紹介するが、本紙発行の毎週金曜日は同施設の殺処分日。掲載されたほとんどの犬は、この世にいないことを付け加えておく。


 ひっそりと……施設は住宅街奥の山際にある。トタンぶき平屋建てで、延べ床面積は約53平方メートル。抑留棟と焼却場がつながった形であり、約265平方メートルの敷地に立つ。ほかに管理人のいるプレハブ管理棟があるが、全体的にひっそりとしている。

 見つめる目……抑留棟の中には、移動式と固定式のおりが計14個あり、この日は固定式の中に5匹の犬がいた。しっぽを振る犬、おびえて体をふるわせる犬とさまざま。しかし、どの犬もじっとこちらを見つめ、目をそらそうとはしない。別の場所からは「キャンキャン」という鳴き声が。5匹の子犬だった。

 

 遠いまなざし……訪ねた時間に回収車で運ばれてきた犬がいた。車の写真を撮ろうとすると「やめてくれ」と職員が叫んだ。「好きでやっている仕事じゃないんだ」の言葉を残し、車で去っていった。おりに入れられた犬はよだれを垂らし、遠くを見つめていた。

 ホワイトボード……犬が入っているおりにはホワイトボードが掛けられ、捕獲した日や場所、性別、種類、体格、特徴が書かれている。管理上の理由と、飼い主が問い合わせてきた場合、確認できるようにだ。捕獲される犬のほとんどは首輪をしているという。

 

 処分用のかご……正式の名前はないが、こう呼ばれているのが約1メートル四方の四角いかご。細かい網状になっている。殺処分の日、犬たちはここに入れられる。10匹ぐらいずつで、多い時は2回に分けられるという。

 20分で窒息死……処分用のかごは、吊り上げられ、ステンレスの容器に入れられる。炭酸ガスが入っており、かごが入るとさらに炭酸ガスを追加。ふたをして約20分後、犬たちは死ぬ。窒息するのだ。その苦しさは想像できない。

 

 白い小さな骨……死んだ犬たちはかごから出され、この後、焼却炉に入れられる。炉の温度は800〜900度。時間は約2時間。残るのは骨。廃棄物として業者に出される。この日は殺処分日ではなかったが、小さな白い骨が落ちていた。

 慰霊の卒塔婆……焼却炉のわきには卒塔婆が立ち、菊やリンドウの花、飲み物、線香が手向けられていた。真新しい卒塔婆は前日の慰霊祭のものだった。毎年、立てているという。殺処分日には毎回、職員が線香を供える。線香が絶える時はない。

 

 (いわきタイムズ編集室 times-info@iwaki.co.jp