LIVE偵察日記2001
プレ21世紀・・・2000年12月末


☆12月23日(土)於 新宿Pit Inn
  『富樫 雅彦&JJスピリッツ』
  
出演: 富樫 雅彦(per)、峰 厚介(ts、ss)、佐藤 允彦(pf)、井野 信義(b)


1960、70年代からジャズ・シーンの第一線で活躍し続けてきたベテラン・ミュージシャンの最高峰が集結した、Japan Jazz最強のコンボ、『富樫雅彦&JJスピリッツ』の年末2daysの初日です。 開場前から、広い年代層のファンが多数集まり、店内は、ほぼ満席。  ミュージシャンと共に歩んできた、といった風のベテラン・ファンのみならず、一流ジャズメンの格好良さに魅了されたらしき、若いオーディエンスも少なからず居たことは、なにか頼もしい気持ちすらしました。  


富樫さんのライブは、いつも最前列で鑑賞し、兎にも角にも、富樫さんのドラミングを堪能することにしています。   下半身が不自由な富樫さんのセットは、ご覧の通り、変則的な構成になっており、バス・ドラムは向かって左奥に位置し、キックの代わりにスティックで叩くような格好です。 ハイハットは、中央やや右寄りにあり、絶妙なアクセント付けに利用されます。  大小のタム類、そしてシンバル、ベル類が半円形に配置され、背後には小型の銅鑼が用意されています。  通常のドラム・セットに比べ、可也の大装備ですが、一つ一つの楽器を無駄なく、全て『ここぞ』という場面で、『これしかない』という形で使い、音楽を表現する富樫さんの、凄い音楽性には、只々、驚愕するばかりです。



ファースト・セットは、バンドのテーマである、御馴染みの『モンクス・ハット・ブルース』でスタート。  僕自身、風邪の為、体調が悪く、演奏に今ひとつ集中出来ないこともあり、先ずは、富樫さんのプレーだけに照準を合わせます。  富樫さんのプレーは、なんと言っても、右手のシンバル・レガートが繰り出す美しいビートの素晴らしさが印象的です。  右手一本が、平凡なドラマーの千人分以上の仕事をしている、と言っても過言ではありません。 そして、スネア、タム類でのアクセント。  峰さんのテナー、あるいは佐藤さんのピアノが発する『歌』の合間のスペースに切れ込み、また、同時に、『歌』が響くスペースを切り裂き作り出す、絶妙なアクセントです。  かつて、少年時代の日野元彦さんが、富樫さんのスティックさばきにカブリツキ、その奥義を学ぼうとしていた、という話しを聞きますが、今の若いドラマーにも、是非『富樫さんのドラムが語るところ』を学んで欲しいと思います。

   
 


峰 厚介(ts) & 井野 信義(b)
聴く者の心をグイッと吸い込むような峰さんのテナーは、逞しさと切なさの渾然一体。
激しくも色気あるボーイング、そして演奏を抉るようなビートを繰り出す井野さんのベース。
暗めの照明の中、PIT INNのステージに立つ姿は、ベテランながらの貫禄と魅力に溢れている。



休憩中、仮眠を取り、体調を取り戻したセカンド・セットは、いつも通りの集中力が持て、より一層、演奏が楽しめました。  上半身を上下左右、激しく動かしながら、音を組み立て、表現していく富樫さんのドラミング。  各コーラスの締めくくりを、ベルやシンバルでバチッと極め、演奏全体にメリハリを付けます。 これが出来る、ドラマーが、なかなか居ないのです!  言いたくないですが、売れっ子ドラマーでも、その殆どが、シンバルの鳴らし方がイマイチと言わざるを得ません。 勿論、体力的な問題などからか、若干、4ビート・リズムがブレ気味かな、と思わせる場面もありましたが、シンバルの扱い方という、細かな部分がシッカリしている富樫さんは、日本ジャズ界、いや世界的にも最高レベルのドラマーと言えるでしょう。  



セカンド・セットは、御馴染みのスタンダード・ナンバー 『春の如き』、『イフ・アイ・シュッド・ルーズ・ユー』、そして『クリフォードの思い出』等が続きます。  味わい深さの中に、風格を漂わす峰さんのテナーが、なんとも素晴らしく、街中のクリスマスの馬鹿騒ぎを忘れさせてくれます。  特に名曲中の名曲、『クリフォードの思い出』の演奏は、4人のプレイヤー共に、筆舌に尽くし難いほど素晴らしいものでした。  そして、フッと『もし、45年前に、クリフィードが亡くなっていなかったら、ジャズの世界は、どうなっていたのだろう?』という思いが、脳裏をよぎり、ジャズ音楽の摩訶不思議さを痛感した次第です。



 


佐藤 允彦(pf)
常に新しいチャレンジを続けている佐藤さん、いつ観ても若々しい。  
サウンドを纏めながら、自らも暴れる、という縦横無尽ぶりを聴かせてくれる。
 



富樫 雅彦(per)
フリーな展開をも見せたライブながら、決して混乱を見せなかったのは、
富樫さんの揺ぎ無い音楽性の成せる業だろう。