LIVE偵察日記2001
2001年 11月
☆11月 23日(金・祝)於 吉祥寺サムタイム
『ギラ・ジルカ &南 博 トリオ』
出演: ギラ・ジルカ(vo)、南 博(pf)、水谷 浩章(b)、松山 修(ds)
ファースト・セット
@ 愛は海よりも深く(trio)、Aハウ・アバウト・ユー(trio)、Bア・フォギー・デイ、Cイパネマの少年、Dマイ・ファニー・バレンタイン、Eソー・メニー・スターズ、FL.O.V.E.
セカンド・セット
@黄昏のビギン(trio)、A上を向いて歩こう(trio)、Bバードランドの子守り歌、C虹の彼方に、Dティーチ・ミー・トゥナイト、Eルート66
サード・セット
@タイトル不詳(trio)、Aフォーリン・グレース(trio)、Bワン・ノート・サンバ、Cフライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン、Dお正月ブルース、Eス・ワンダフル
久々に『昼夜ハシゴ』です。 新宿からJR中央線で下り、吉祥寺サムタイムへと。 お仕事で上京中という、旧知のジャズ友(?)Aジさんと此処で合流。 当夜の出演は南博さんのトリオと、神戸出身のボーカリスト、ギラ・ジルカさん。 このユニットを聴かせて貰うのは2年強ぶりです。
さて、3連休初日という事で、吉祥寺の街は人出が多く、サムタイム店内も開演前から殆ど満席の状態。 先ずは、南さんのトリオで2曲。 バークレー音楽大学時代の学友というドラムの松山さん、そして、南さんのユニットには無くては成らない、といったベースの水谷さんとのトリオは、長くレギュラーを組むユニットならではのリラックス感と、そこからくる遊び心が誘発する緊張感ある触発etc.・・・安心しつつも『何が起こるんだろう?』とゾクゾクさせるプレイが展開されます。 ここで、いよいよギラさんの登場となり、Bの歌詞の内容と曲のイメージを手馴れたMCで紹介し、グッと観客を心掴んでから唄い出す、という心憎いステージング。
2年前に聴かせて貰った時は、『少女のような無垢さ』と『奔放なコケティッシュさ』が渾然一体となった印象を持ったのですが、当夜は何やら『大人の落ち着いたムード』を感じさせる、貫禄あるステージとすら言いたくなる歌いっぷりです。 厳密に言えば、所謂『ジャズ・シンガー』ではないのでしょうが、声の『ボリューム』、そして、『高低』の幅広さは、単なる『声域(レンジ)』という意味だけでなく、歌声の『構成要素』の『質量』に、非常に広く、深いものを感じさせます。 従って、とても幅広い表現が無理なく可能となり、ギラさんの歌唱には、音楽の“ジャンル”各々に要求される『テクニック』や『表現力』が包括して存在しているように感じました。 又、唄われたレパーリーに対して、ギラ・ジルカというシンガーが、非常に“ネイティブ”な存在という気がします。 これは、単純に『ギラさんの英語表現はネイティブ』という意味でも、『ギラさんはインターナショナルな環境で育った』とか、そういう意味ではありません。 ギラさんの歌には、『ジャズ』に対しても、『ボッサ』に対しても、変な『身構え』のようなものが感じられず、まるで使い慣れた歯ブラシのように、唄いまわしていたのが、実に見事でした。 勿論、ここに到達するには、天性のものだけでなく、凄まじい努力をしてきたに違いありません。
ギラ・ジルカ(vo)
ファースト・セットでは、観客は食事をしたり、飲んだり、又、誕生パーティを始めるグループもあったりと、今ひとつ乗りが充分でなかったのですが、セカンド・セットになると、南トリオの『深みがあるのに、どこかハジケテいる』といった不思議な魅力の演奏、そしてギラさんの圧倒的なボーカルと楽しいMCに乗せられ、相当な盛り上がりを見せます。 幾分お客さんが入れ替わったサード・セットでは、ギラさんが“爆風スランプ”のバーベキュー和佐田さんと共演した時にバーベキューさんから教えられたという、『お正月ブルース』をコテコテな日本語で激唱。 南さん以下、トリオもブレークしまくりのウルトラ・ブルース大会となり、店内、騒然?! 最近のシンガーには『ジャンル等には拘りません』という人が多いですが、ここまで拘りなく、屈託なく(笑)、『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』に続いて、『も〜〜〜い〜〜〜くつ寝る〜〜〜と〜〜〜♪』と唄える人が他に居るでしょうか? いや〜、ギラさん、凄いわ、もう降参・・・といった気分。
こういった強烈なギラさんのパフォーマンスに、誕生パーティで騒いでいたグループも、それどころではない、とばかりに、パーティを取り止めて(?)、半地下の席からステージのあるフロアに上がってきて、階段付近で立ち見しながらスイングし出す事態に。 嗚呼、凄いなあ、これが本当にパワーのある音楽なんだろうな、と目から鱗が落ちる思いがしました。 観客だけでなく、南さんも乗り乗りで、普段は試験管が似合う白衣の天才“科学者”(?)といった雰囲気の方が、ほとんど“リトル・リチャーズ”と化して、踊りながらピアノを引き出すまでに・・・。
ギラさんは、南さんとのジャズ・セッションだけでなく、ファンク(J-POP?)の『ニーナ・クラギーナ』なるユニットや、ゴスペル・クワイアでも活躍中のようですが、恐らく、そういった様々な活動が相互に良い作用をしているのでしょう。 『ジャンルに拘らず・・・』というシンガーが主流になりつつある現在の音楽界(ジャズ界)にあって、ギラさんの活動は、その理想形の一つとして、これから注目されるでしょうし、されるべきでしょう。 皆さん、是非、是非、ギラさんのライブにお出かけ下さい。 新しい発見が多くある筈です。
最後になってしまいましたが、セカンド・セットの南さんのトリオ演奏は、『黄昏のビギン』、そして“SUKIYAKI”こと『上を向いて歩こう』の中村八大ソング・ブックといった構成になり、それは素晴らしいものがありました。 又、店頭より一足早く、ライブ現場で購入させて貰った、南さんのカルテットによる新作CD『GO THERE』で繰り広げられる演奏は、南さん特有の“突き抜けた(突き抜けようとする)サウンド”で、物凄くエキサイティングです。 21世紀になり、盛んに『ジャズ・ビヨンド』という言葉が囁かれるようになりましたが、真の『ジャズ・ビヨンド』とは、イタズラに目晦まし的な目新しさを追い駆けることではなく、培ってきた音楽を土台に、更に“突き抜けて行こう”とする所からスタートするのではないか? その具体的な良い例の一つは、南さんの活動に聴けるのではないか?と思います。