
☆02年1月 13日(日)於 新宿 PIT INN
『南 博 カルテット』
出演: 南 博(pf)、竹野 昌邦(ts、ss)、水谷 浩章(b)、芳垣 安洋(ds)
ファースト・セット
@#1、AOracion、BDeep Thoughts between the Fourth、COne Kat、DCriss Cross
セカンド・セット
@Thelonious、AM、BFour Distinction、CGo There、DHope
アンコール
Blue Monk
一昨年、昨年と、トリオでの作品が続いた南博さんの、レギュラー・カルテットとしては『Bird in Berlin』以来、久しぶりのレコーディングとなったCD、『Go There!』の発売記念ライブがあるとの事で、南さんのホームグランドとも言える新宿PIT INNへ。 CDショップ店頭では1月からの発売の同CDですが、実は、昨年のうちにライブの際、南さんから直接購入させて頂いていました。 『出たぁ』のコーナーでもご紹介した通り、このCDには、本当に“やられます”。 ライブでも、同様に“やられてしまう”のか? 期待でワクワクします。
さて、通常、サックス入りのカルテットの場合、ステージ上のセットアップは、左右にピアノ、ドラムが配置され、ベースは中央奥、そしてサックスがステージ中央前面、となります。 ところが、当夜のPIT INNのステージは、左から、ピアノ、ベース、ドラム、サックス、というセット・アップ。 ステージいっぱい、まるで『パノラマ』のようです。 考えてみると、無限にグングンと広がっていくように感じる、南さんの音楽性も、『音のパノラマ大眺望』と言えなくも無いかも?
南 博(pf)
ライブは、先ず、南さんの闇を切り裂くような、鋭い無伴奏インプロビゼーションからスタート。 曲は、CDのオープニング同様『#1』。 南さんのピアノに竹野さんのサックスが絡み出し、そこにベース、ドラムが飛び込み、ウネリにウネリまくるビートは、ジャム・バンドなんて子供だまし(?)なことは言いません・・・、これは、も〜殆どヘビ・メタか、ハード・コア・パンクの世界。 オール・スタンディングの会場ならば、間違いなく両足シャッフルの上、ヘッドバンキングしてしまうことでしょう(笑)。 サックスが抜けて、トリオ演奏になると、いよいよ理性が吹っ飛び、渦巻状の底無しブラックホールに突入! しかし、混沌としていそうにみえて、その演奏は、辻褄のあわないフリー・ジャズには決してならず、ジャズ演奏が伝統に持つサムシングのエッセンス・・・・それは、『恍惚感』をもたらす『営み』・・・・に満ち溢れています。 同心円状に広がっていく南さんのピアノ、ディーゼル動力のようにグウィングウィンと攻め立てる水谷さんのベース、そして芳垣さんのドラミングは“リリカル・バイオレンス”とでも言いたい、詩的に刺激的。 2曲目は、CDの通りに、『Oracion』。 アフリカのサバンナを進軍する原住民の戦士の雄叫びか、あるいは、アマゾン奥深くをボートで進む漁師の舟歌か? 何処かにありそうで、何処にもない、そんな世界に連れ出されるような曲想です。 曲は、CD収録曲が続き(曲順は自信なし)、そのどれも、『何処かにありそうで、何処にもない世界』を感じさせてくれます。 ファースト・セットの最後は、モンクの『Criss Cross』の南バージョンで終了。
水谷 浩章(b)
芳垣 安洋(ds)&竹野 昌邦(ss)
セカンド・セットは、再び、南さんが敬愛するモンクのナンバーから『Thelonious』でスタート。 続いて、新作からミディアム・バラッドで『M』。 セカンド・セットも、そのまま新作からの曲が続きます。 ファーストもセカンドも、殆どMCなしのメドレー構成。 ビッチリ、タップリと、聴かせ、そして、『連れ去って』くれます。
終盤に、南さんから、『決して、お客さんを無視していたわけではありません・・・』というMCがありましたがあり、これが、なんとなく、妙に笑いのツボを刺激する、ナチュラル・ユーモアを感じさせます。 南さんの音楽は、先鋭的でありながら、決して高圧的ではなく、(少なくとも僕には)非常に入り込めてしまうのですが、その理由は、きっと、南さんのMCからも感じ取れる、(“お笑い”という意味ではない)『ユーモア』にあるように思います。 兎にも角にも、『異次元体験』といったメクルメク世界が展開されるライブです。
セカンド・セットは、平和への願いと希望を託した、南さんの美しいオリジナル・バラッド、その名も『Hope』で終了。 気持ちが解き放たれていくような曲想が素敵です。 CD発売記念ということで集まった熱心なファンの喝采から、アンコールとなり、当夜、3曲目のモンクで『ブルー・モンク』。 ここは、遊び心に満ちた、ブイブイな演奏となり、南さんは、キース・ジャレットの両足バタバタなんて目じゃない、ほとんどリトル・リチャード状態のロケンローラーと化し、最後はストライド・ピアノまで披露。 熱くも、何処かユーモアを感じさせる演奏で大団円。
1月中旬から、デンマーク・ジャズ協会の招きで、彼の地でのツアーが予定されている、という南カルテット。 きっと、あちらのジャズ・ファンも、この演奏には『やられちゃう』こと間違いなしでしょう。