
☆02年1月 30日(水)於 吉祥寺 SOMETIME
『辛島 文雄 トリオ』
出演: 辛島 文雄(pf)、増原 巌(b)、小松 伸之(ds)
セカンド・セット
@ラブ・フォー・セール、Aトニー・ウィリアムス、Bマイ・ファニー・バレンタイン、C天国への7つの階段、Dノー・グレーター・ラブ
サード・セット
@星影のステラ、Aマイルストーンズ、Bアップ・ジャンプド・スプリング、Cユー・ドント・ノウ・ファット・ラブ・イズ、Dラバーマン、Eラウンド・ミッドナイト
毎月お馴染み、ピアノ・マスター、辛島さんのライブです。 当夜は、僕がやっている、もう一つのページ、『totorom_X』(ジャズ以外の音楽のページ)でのライブ偵察からのハシゴで、SOMETIMEに到着すると、既にファースト・セットが終わるところでした。 今回は、辛島さんのプレイは勿論ですが、特に注目したいのが、大阪から東京に拠点を移して以来、引っ張りダコで大活躍中のべーシスト、増原さんと辛島さんの絡みです。 それと、久しぶりに辛島さんのトリオで聴く、若手ドラマー、小松くんが、どんなプレイを聴かせてくれるか?
さて、当夜、演奏された曲目は上記の通りですが、いつもの通り、殆どメドレー的に、間髪入れずに進行。 演奏は、その場、その場で辛島さんが曲を決めて、先発し、そこに、ベース、ドラムが飛び込んでいく、という、辛島トリオではお馴染みの、緊張感のあるピリッとした内容です。 只、ちょっと当夜の演奏は、今まで聴いた辛島さんのライブと違う感じがします。 これは、あくまでも僕の受けとめ方なのですが、今までの辛島さんのライブは、@(特に奥平真吾さんとの時)ドラマーを中心に、共演者と(良い意味で)ブツカリ合いながら『高み』を目指していく、A(静かなバラッドでも)アグレッシブに『高み』を目指していく辛島さんに(特に若手の)共演者が必死に着いて行く・・・というパターンがあったように思います。 しかし、当夜は、その何れでもなく、なにか『トリオ』として非常に良くバランスが取れているようです。 勿論、辛島さんの音楽性や訴求力が抜きん出ていて、『三者対等』とまでは行かないのですが、『トリオ・ユニット』としての纏まりがある上で、3者がアグレッシブにブツカリ合っている感じがします。 これは、SOMETIMEのステージの位置関係・・・3者が至近距離で向かい合って演奏する・・・によるところも大きいのかも知れませんが。
しかし、僕が強く感じたのは、増原さんの存在です。 ご自身、元ドラマーであり、又、エルビンをはじめ、トニー・ウィリアムス、ジョージ大塚、日野元彦・・・といった名ドラマーと数多く共演してきた辛島さんは、今まで、どうしても『ドラマー』との対峙が演奏の基盤になっていたように思います。 ベースを蔑ろにしていた、ということではないのでしょうが、やはり『ドラマー』に比重が大きかった筈です。 ところが、当夜、丁度、辛島さんの表情や動きが良く見える席だったので、分かるのですが、 珍しく、べーシスト(増原さん)を非常に意識しながら、視線でシグナルを送ったり、ベースに触発されてフレージングを作り出していったりしていたように思います。 そして、その雰囲気から、辛島さんが、増原さんのことを、ミュージシャンとして、或る意味、非常にリスペクトしているように感じました。 勿論、キャリアが違いますから、辛島さんの増原さんへの気持ちは、『リスペクト』(尊重している)というよりは『アプリシエーション』(評価し、認めている)と言った方が近いのかも知れません。 増原さんのプレイは、『俺が、俺が・・・』という目立とう根性はありませんが、演奏の流れの中で、決まりきった『位置』に音を出すのではなく、『自分は、ここだと思う』という自分が信じた『位置』に音を出してきているように思います。 それは、時として、辛島さんが考えている『位置』とは違う、ということもあるのでしょうが、しかし、それが逆にジャズ演奏に不可欠な『ケミストリー』を発生させているようです。
又、ドラムの小松くんの頑張りも目を見張るものがあります。 僕は、3年くらい前のライブ・・・小松くんと辛島さんの2回目の共演・・・から彼のプレイを見ていて、途中、ちょっと伸び悩みというか、過渡期があったように思いますが、野球で言うならば『一軍ベンチ定着を狙う若手選手』のような彼のアグレッシブさがとても気に入っています。 僕は、いつも、小松くんには、ジャイアンツの阿部慎之介捕手を思い出してしまいます。 小松くんも、阿部くんも、まだまだ未成熟なプレイヤーでしょうが、失敗にクヨクヨせずに、自分の好きな信じた道に屈託なく、真っ直ぐに向っているように思うからです。 阿部慎之介が、レギュラーの座を確保したように、小松くんも、J-JAZZ界の『正捕手』の座を射止める日も遠くはないでしょう。 当夜の小松くんのプレイからは、今までのアグレッシブさを保ちつつ、辛島さんのプレイにイタズラに『喰らいついていく』だけではなく、辛島さんのプレイを『良く聴いて、理解しよう』とする姿勢も感じ取れました。 彼よりも上手いドラマーは、同世代にも少なからず居ますが、彼のように『何か』を感じさせてくれるプレイヤーは、なかなか居ません。
というわけで、辛島さんのライブは、いつも、いつも、ジャズの奥深さを感じさせてくれて、ジャズを聴いていく上で、とても勉強になります。 格好良くて、気持ちよく、その上、勉強にもなる、という、一粒で二度も三度も美味しい(笑)、辛島さんのライブは、やはり月に一度は聴きたくなってしまいます。