☆01年11月 30日(金)於 新宿 PIT INN
  『辛島 文雄 NIGHT』

   
出演: 辛島 文雄(pf)、桜井 郁雄(b)、本田 珠也(ds)
     ゲスト 〜 高内“HARU”春彦(g)


ファースト・セット
 @ソーラー、A酒とバラの日々、Bエキノックス、Cブラック・ナイル
セカンド・セット
 @カムレイド Y、Aスピーク・ノー・イーブル、Bエンジェル・アイズ、C枯葉
アンコール
 ラウンド・ミッドナイト




今、正に心技体が絶好調、一つの頂点を極めつつある、と言いたい辛島文雄さん。 先月に続き、ホームのPIT INNでの『辛島文雄 NIGHT』にやって来ました。  今月の『辛島 NIGHT』は、80年代の辛島トリオ(クインテット)のレギュラーを長く務めた桜井さん(b)、そして、奥平真吾さんの後を受け、90年代のレギュラー・ドラマーを務めた本田珠也さんと、辛島さんにとっては最高の仲間が久しぶりに勢揃い。  その上、ゲストには、前夜のライブで楽しませてくれたHARUさん(g)が加わる、という豪華版。  これを聴き逃すわけにはいきません。  


辛島 文雄(pf)



ファースト・セットのスタートは、辛島さんのライブではよくあることですが、どうやら何の曲をやるのか打ち合わせなしだった模様で、辛島さんが始めるピアノ独奏に他のメンバーは真剣に耳を傾けます。  なんとも言えない、緊張感が快感で、観客のこちらもピリッとした気持ちに。  曲がマイルスの『ソーラー』と分かり、バンドが一気にフル・スロットルで駆動を開始します。  平然とした顔をして、ブーン!と『急所』に切り込んでくる桜井さんのベース。 リズムの最先端をザックリと刻みながら、グングンと演奏を広げて行く珠也さんのドラミング。  この2人のリズム陣の演奏は凄まじく、それに対峙する辛島さんは、触発されつつ輪を掛けて深くて大きな世界を提示。 しかし、肩に力が入ってる感じもなく、実にリラックスした感触のある演奏で、まるで鉄板焼のマスター・シェフが、目にもとまらぬ早業で両手包丁を巧みに操るような(?)イメージ。 いやはや、これは本当に凄い!!  

2曲目からはHARUさんをフィーチャーした選曲で、先ずHARUさんアレンジによる『酒バラ』。  軽快でロマンチック、しかし何処か男臭さも漂わせる素晴らしい演奏が続きます。  続いては、HARUさん得意のコルトレーンの『エキノックス』。  エルビン・バンドのレギュラーを長く務めた辛島さんも、勿論、コルトレーンのスピリットを熟知。  辛島トリオが、変幻自在に『至上の愛』のリフを展開し、それに乗ってHARUさんがマジカルなソロを披露。  微妙にアウトさせながら絶妙なコードをコンプしていく辛島さん。 そして、独特の感覚でリハーモナイズを展開するHARUさん。  唄いまくる珠也さんのドラミング。  凄まじい世界が展開されます。  ファースト・セット最後は、ウェイン・ショーターの名曲、『ブラック・ナイル』。  HARUさんのトリオでは、神秘的に静々と流れていくナイル河を思わせる演奏でしたが、ここでは、豪放な辛島トリオと共に、数千年の激動の歴史を内在したかのような、深みのある河の激流を思わせます。



HARU(g) & 桜井 郁雄(b)



本田 珠也(ds)



辛島さんがPIT INNの佐藤社長に捧げたオリジナル曲でスタートしたセカンド・セットも、ウェイン・ショーターの『スピーク・ノー・イーブル』、そして『エンジェル・アイズ』と、ゲストのHARUさんが得意とする曲をフィーチャー。 この辺りは、年少ながら、ジャズの本場NYで20年以上活躍する“HARU”というジャズマンへの、辛島さんからの敬意が感じ取れます。  私事ながら、ウェイン・ショーターのアルバム、『スピーク・ノー・イーブル』は、僕が高校生の時、初めて接したジャズ演奏だった事もあり、非常に思い入れがあるのです。  そう考えると、ウェインから多大な影響を受けているHARUさんの演奏に、僕が感じ入るのも当然の事なのかも知れません。  

最後は、ファースト・セットの冒頭と同じく、辛島さんのピアノ独奏から、曲は『枯葉』。  ここは4人のジャズメンの裸のブツカリ合い、といったエキサイティングな展開に。  ストレート・アヘッド・ジャズの深みと格好良さがコンデンスされた凄い演奏となり、場内は大興奮。  アンコールとなり、辛島さんのライブでは御馴染の『ラウンド・ミッドナイト』。  ここではHARUさんが、ウェス・モンゴメリーのバージョンをも彷彿とさせる指弾きで思慮深い表現を魅せてくれ、一層、感動的な演奏となりました。  

今宵はHARUさんのストレート・アヘッドなジャズ・ギターも最高でしたが、何と言ってもピアノ・マスター、辛島さんのプレイに又々ノック・アウトされた、といった感じでした。  ジャズ・ファンや業界人の中には、『今更ストレート・アヘッド・ジャズなんか面白くない』と言う方も居ますが、辛島さんの演奏に触れると、『上質なストレート・アヘッド・ジャズには終わりが無く、永遠に深みを増す、魔力に満ちている』と痛感します。  

さあ、今日も、明日もライブで漫遊?! 貴方も、是非、どうぞ!