
☆01年12月 5日(水)於 新宿 J
『渡辺 匡彦カルテット + 上西 千波』
出演: 渡辺 匡彦(vib)、野口 久和(pf)、大表 秀具(b)、今関 和彦(ds)、飛び入り〜栗山ゆうすけ(g)
上西 千波(vo)
ファースト・セット
@スイート・パンプキン(カルテット)、Aアワ・ラブ・イズ・ヒア・トゥ・ステイ(カルテット)、Bスプリット・キック(カルテット)、Cナイト・アンド・デイ(以下 with vocal)、Dモーニン、E虹の彼方に、Fバードランドの子守り歌、Gストーミー・マンディ・ブルース
セカンド・セット
@朝日のようにさわやかに(カルテット+1)、Aマイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ(カルテット+1)、B情事の終わりに(カルテット+1)、Cオール・ブルース(以下 with vocal)、Dイマジン、Eバイ・バイ・ブラックバード、Fコーリング・ユー、Gイズント・シー・ラブリー?
当HPの『勝手に応援ページ』でもお馴染みの野口久和さん(pf)のプレイを久々に聴きたいなあ、と思い、野口さんがレギュラーで参加している渡辺匡彦カルテットのライブに参上。 当夜のお店『J』は、司会者、サックス奏者、タレントとしても知られるバードマン幸田さんが、早大ジャズ研OBの協力を得て78年に開店したお店で、『取締役宣伝部長』には、あの森田一義氏(タモリ氏)が就任している事でも良く知られています。
さて、階段を下りて『J』のある地下に足を踏み入れると直ぐに心地好いビブラフォンの音色が耳に入ってきます。 既に演奏が始まっているようです。 黒いドアを、ガチャッと開け、入店。 ステージでは、渡辺カルテットの『スイート・パンプキン』を演奏中。 何か小粋でスインギーな演奏が聴きたいなあ、と思っていた僕の気持ちを読んでいたかのような(?)軽快なプレイです。 生演奏に限らず、ビブラフォンの演奏を聴く機会は、バグズやボビ・ハチ、デイブ・パイク等以外、今まで殆ど無かったのですが、こうやってライブで聴くと、やはり良いものですね。 ウキウキする軽妙さと、なにかグッと切なくなる深さがあります。 カルテットのリーダー、渡辺さんは体全体をダイナミックにスイングさせながらの熱演です。 野口さんのピアノは、オーケストラの時もそうですが、終始スインギーでお洒落。 心憎い演奏が続きます。 普段は渡辺さんがMC担当だそうですが、当夜はドラムの今関さんがマイクを握り、ユーモラスな饒舌ぶりを披露。 ドラミングもMC同様に絶好調でスイングさせてくれます。 ブレーキーのバードランドでのライブ盤で御馴染のホレス・シルバー曲、『スプリット・キット』といったバップの名曲の飛び出し、とても良い気持ちに。 ベースの大表さんは、べーシストらしい(?)クワエット・マンぶりですが、プレイは、所々、ポール・チェンバースのように“プン、プン、プンッ”と他のメンバーを刺激してきます。 ベテランならではの安定感あるプレイです。
L to R: 大表 秀具(b)、渡辺 匡彦(vib)、今関
和彦(ds)
ところで、今宵は、ボーカルが入るとのことで、さっきミュージシャン控え席に居た小柄な女性が、そうかな?と思いながら、メンバー表を見ると、『上西千波(vo)』となっています。 あれ? おおっ? ・・・と、ここで“totorom勘ピュ-タ”が作動して、あれやこれや情報処理。 ああ、あの人かあ〜! あの石井彰さんが、ピアノとアレンジを担当しCDデビューしたという事で、個人的に要チェック人物(?)として赤丸をつけていた、広島在住のシンガー、上西さん! う〜ん、ここで聴けるとは、嬉しいねえ〜、こういうのも何かのご縁なんでしょうか? ということで、ワクワクしながら、彼女の登場を待つことに。
ファースト・セットは、『ナイト・アンド・デイ』から始まり、ボビー・ティモンズの曲にジョン・ヘンドリックスが詞をつけたボーカリーズで『モーニン』と続きます。 上西さんのボーカルの第一印象は、なんとなくケイコ・リーさんに近いものがありましたが、ケイコさんよりも声質がシッカリしていて、中音域がとても逞しい感じがします。 丁度、背格好や体格が綾戸智絵さんと同じくらいで、綾戸さんのような爆発的な声量はありませんが、小柄なのに、過不足なく、タップリ、ハッキリと声が此方に届いてきて、ボリュームとして声量ではなく、声の質 = クオリティとしての『声量』に長けているように聞こえました。 あとでプロフィールを拝見するとぺコさん(伊藤君子さん)に師事していたとの事で、このあたりのテクニック、唄い回しは、ぺコさん譲りで見事です。
野口 久和(pf)
今回は広島から上京してのライブなのかな、と思いきや、CD発表を機に東京に拠点を移したとの事。 そういうわけで、『新宿J』にも初登場なら、共演の渡辺カルテットも初対面という事で、当然、緊張気味ではあるのでしょうが、慣れた調子のMCや堂々とした唄いっぷりは、自信に裏打ちされたものを感じさせます。 又、歌伴でも引っ張りダコである野口さんは、流石のプレイで、痒い所に手が届くサポートぶりで、唸らせてくれました。 曲は続いて、『虹の彼方に』。 この曲は、個人的に、どうも綾戸さんの強烈なイメージがあるのですが・・・何せ数十回とライブで聴いてますから・・・、上西さんの歌唱は見事にそのイメージを払拭してくれます。 地声は低目で、それを活かして中音域でストレートに唄うと、とても良いのですが、加えて、高音域にスーッと抜けていく部分も素晴らしく、力が抜けているのに、ちゃんと神経が末端まで通っているような、かなり不思議な魅力を放っています。 こういった個性的な歌唱(唄い回し)は、セカンド・セットの、『イマジン』や『コーリング・ユー』といった、或る意味、既に多くの女性シンガーによって歌い尽くされた感がある人気楽曲でも、同様に聞けました。 ファースト・セット最後は、『ストーミー・マンディ・ブルース』で、細身の身体に太目の声、というアンバランス感が面白かったですね。 でも、僕としては、敢えてブルージーに・・・という楽曲よりは、バラッドでの表現の方が、より魅力的に感じました。
上西 千波(vo) with 野口 久和(pf)
セカンド・セットは、“栗山ゆうすけ”(?)なる若手(と思しき)ギタリストが飛び入り。 この栗山さんが中々のプレイヤーで、MJQとジム・ホールの共演を思い出させる『朝日のようにさわやかに』に始まり、3曲ともシッカリとして演奏を聞かせてくれました。 その上、上西さん登場後の歌伴にも加わり、恐らく初見と思われる譜面で見事な演奏を繰り広げていましたので、可也の実力者かも知れません。 セカンド・セットの上西さんの歌唱は、マイルスのブルースから、現代のシンガーらしく、ポピュラー曲も取り入れた構成です。 先ほども書いた通り、圧倒的な声量がある、というタイプではないので、インパクトは強くありませんが、優れたシンガー(プレイヤー)に不可欠な『瞬発力』を持っている事は確かで、しかも、それが他の同年代の女性シンガーが『走り幅跳び』のような『瞬発力』を持っているのに対して、この人は『立ち幅跳び』、つまり助走なしの静態から、スコーンと出てくる・・・そんな不思議なテクニックを身につけているように思います。
終演後に、石井彰さん(pf)、安ヵ川大樹さん(b)、藤井学さん(ds)と入れたデビューCD・・・自主制作盤のようです・・・を購入させて貰ったのですが、石井さんとは、今後、共演ライブが予定されているとの事です。 (後になって聴いた)CDでは、ライブで感じた個性の端々が現れていましたが、『録音』という特殊環境が故でしょう、ライブで聴けたリラックスした『静態からの瞬発』というよりは、若干『唄おう、唄おう』としている作為的なものも感じられました。 しかし、今後の石井さんとのライブ共演を通して、素晴らしい個性を伸ばしていくことでしょう。 いずれにしても、2002年は、“もしかすると、もしかするかも知れない”(?)、要注目、大期待のシンガーである事は間違いありません。 因みに、石井彰トリオ・・・上村信(b)、吉岡大輔(ds)・・・とのライブ予定は、12月17日(月)横浜BarBarBar、02年1月16日(水)六本木alfie、そして、2月7日(木)新宿J、と既にブッキングされているそうです。 こういう新たな才能との出会いがあるから、ライブ現場は楽しいですね。 止められません。