
☆02年1月 16日(水)於 六本木 alfie
『上西 千波 & 石井 彰トリオ』
出演: 上西 千波(Vo)、石井 彰(pf)、上村 信(b)、吉岡 大輔(ds)
ファースト・セット
@オール・オブ・ユー(trio)、Aイン・ア・センチメンタル・ムード(trio)、Bモーニン(以下 with ボーカル)、C誰も知らない私の悩み、Dバイ・バイ・ブラック・バード、Eコーリング・ユー、Fフィーバー、Gアメイジング・グレース
セカンド・セット
@ラバー・マン(trio)、Aウッディン・ユー(trio)、Bオール・ブルース(以下 with ボーカル)、Cジャイブ・サンバ、Dソウルズビル、Eジー・ベイビー・エイント・アイ・グッド・トゥ・ユー、Fマイ・フェイバリット・シングス
01年12月に『注目のボーカリスト』として、既に2回のライブ(@新宿J & @赤坂KEI)をご紹介している上西千波さん。 当夜は、デビューCD『Gee Baby』でピアノ&編曲を担当した石井彰さんとの共演です。 石井さんと言えば、01年は、メイン・ストリーム・ジャズの人気ユニットの殆どに参加したのではないか、と思わせる大活躍ぶりで、その上、自己のリーダー・トリオでのCDリリースもあり、現在のJ-JAZZシーンで『質』、『量』ともに第一級のピアニストの一人。 又、今回のようにボーカリストのサポートも多く手掛けており、そのJ-JAZZへの貢献度には頭が下がる思いがします。
さて、上西さんのボーカルの特徴については、過去2回のライブで感じた印象を既に書いていますので、今回は細かなことは省きます。 前回も、前々回も、或る意味、『ゲスト・ボーカル』という位置付けでの登場だった上西さんですが、当夜は『メイン・アクト』としての出演。 そういう意味で、当夜、個人的に最も注目していたのは、上西さんの『主役』としてのMCや歌唱表現を含めたステージングです。 基本的にボーカリストというものは、例え『ゲスト』であろうが、『飛び入り』であろうが、一旦歌い始めれば『私が主役』であって良いし、突き詰めれば、そうあるべきだと僕は思っています。 しかし、『ジャズ』に限らず、『音楽』というものは、『不自由(規律)の中に自由を見つけていくもの』だとも思うので、当然、そこには『不文律』と言いますか、『主演』と『助演』の間に何かしらの『越えてはならない一線』があるべきです。 プロのシンガー(ミュージシャン)の中には、(誰とは言いませんけど・・・)『主役を食った』ということを『お手柄』のように自慢する人が偶に居るのですが、僕は、そ〜ゆ〜人には『カラオケで“モー娘。”でも歌っとれ、ボケ!』と言ってやりたくなってしまいます(笑)。 あ、勿論、ご当人を目の前にしては言いませんよ、そんなこと、なにせ気が小さいもので・・・(爆)。
しかし、この『ステージの不文律』には、『ゲスト』だから、あるいは『後輩』だからと言って、遠慮し過ぎるのも逆に良くない、という非常に難しい側面もあり、厄介なもんだと思います。 実際、前回、前々回の上西さんのステージからは、ちょっと遠慮が感じられました。 勿論、広島から東京に活動の拠点を移したばかり、という背景もあり、これは、これで致し方ないのでしょうが。 で、当夜のステージでは、東京のジャズ・シーンでは老舗のalfieに初登場、しかも、石井トリオとの共演ということで、若干、緊張気味かなと思わせた上西さんですが、小柄な外見とは裏腹に中々の存在感を放っており、堂々としたステージングでした。 『ゲスト・ボーカル』での出演と、『主役』としての出演・・・この二つの違いをキチンと意識して切り替えているのでしょう。 この辺りは、上西さんの『プロ』として資質を感じさせます。
又、当夜のステージでは、ナット・アダレイの『ジャイブ・サンバ』や、ホレス・シルバーの『ソウルズビル』など、ジャズメンのオリジナル曲も聴かせてくれ、上西さんは、ボーカルものだけでなく、ジャズ(器楽)演奏も幅広く聴いているのだろうな、と思わせます。 同時に、ゴスペル曲や、ブルース曲が多く歌われ、個性的な声質のアピールも忘れていない、といったところでしょうか? 中でも、『アメイジング・グレース』は、アップ・テンポかスローか、何れかで歌われることが多い曲ですが、当夜は珍しくミディアム・シャッフル(と言えば良いのか?)で歌われ、なかなか面白かったと思います。
ところで、個人的な好みもあるのですが、上西さんは、アップ・テンポの曲やシャウトする曲よりも、ミディアム・テンポ以下(バラッドも含めて)での歌唱に、より良さがあると感じました。 シンガーにしろ、プレイヤーにしろ、その表現の『世界』には色々なタイプがあって、(イメージ的な話しで恐縮ですが)『天井なしにグングンと突き抜けて世界が広がって行く』というタイプや、『天井を保ちながら、膨張するように、内在される世界が広がっていく』タイプがあります。 上西さんは、後者のタイプで、そういう意味で『突き抜けタイプ』が得意とするであろう、アップ・テンポやシャウトよりは、ミディアム・テンポ以下に良さがあるのでしょう。 ピアノの石井彰さんも、どちらかと言えば似たタイプだと以前から感じていましたので、上西さんとの相性も悪くないと思われます。 只、それだけに、上西さんが構築する『世界』よりも、やはり石井さんのプレイが作り上げている『世界』のほうが、圧倒的に広い(奥深い)、ということが目立ってしまったことは否定出来ません。
上西さんは、他のシンガーにない個性的な部分を持っているだけに、これからその歌の『世界』(スケール)を広げられれば、同世代のシンガーの中では抜きん出た存在になるのではないでしょうか? いつも書くことですが、『音楽(ジャズ)』の広さ、奥深さに『これで充分』なんて事はないんですよね、きっと。