☆01年11月 29日(木)於 神楽坂 SOMEDAY
  『高内 春彦(HARU)バンド』

   
出演: 高内 春彦(g)、藍澤 栄二(b)、高橋 幹夫(ds)、池田 誠人(perc)

ファースト・セット
 @星影のステラ、Aビーチ・ウォーク、Bエンジェル・アイズ、Cシティ、Dモリエンダ・カフェ(コーヒー・ルンバ)
セカンド・セット
 @グリーン・ドリフィン・ストリート(ソロ・ギター)、Aエキノックス、Bお馬鹿さん、Cインビテーション、Dパストラル




ニューヨークの御自宅が、9月のテロ事件で被害を被り、暫くは日本に滞在せざるを得なくなったと言う、HARUさんこと、高内春彦さん(お見舞い申し上げます)。  その間を利用して、というわけではないのでしょうが、3月来日時のニューヨーク・トリオでのライブ録音盤『ボイス・オブ・ブルー』(Polystar JAZZ BANK)の発売に合わせての来日ライブがスタート(既に従前、2〜3本あったようですが・・・)。  当夜の神楽坂SOMEDAYは、7月の短期来日時に行われたライブ同様、HARUさんのライブではお馴染みの藍澤さん(b)、高橋さん(ds)とのトリオに加え、パーカッションの池田誠人さんが入り、よりリズミカルに、そしてイマジネーションとユーモアに溢れたライブとなりました。


高内 “HARU” 春彦(G)



ファースト・セットは、最新ライブ盤『ボイス・オブ・ブルー』にも収められているスタンダード曲『星影のステラ』でスタート。 スローな展開から、徐々にテンポ・アップし、池田さんのコンガを交えながら、疾走する4ビートは実に気持ちよく、えも言われぬ浮揚感を与えてくれます。  ピック弾きと指弾きを混ぜながら、滑らかな糸のように紡ぎだされるHARUさんのギター・サウンドは、自らリズムに乗りつつ、同時に、まるで“魔法の空飛ぶジュウタン”の如く、バンド全体を乗せて、フワリと高く舞い上げていくかのようです。 2曲目のオリジナル・ボッサ曲に続いて、3曲目もボッサのアレンジで、マット・デニスの名曲中の名曲『エンジェル・アイズ』。  ここでは、ライブ盤と同じく、アコースティック・ギターを演奏するHARUさん。  切ないメロディ、そして、胸にグッとくる歌詞を噛み締めるかのように爪弾かれるアコギのサウンドが、なんとも言えません。  エンディングは、先ごろ亡くなったバーデン・パウェルに捧げて、『ビリンバウ』のフレーズを取り入れる心憎さ。  

4曲目はムードが一転し、テンポ・アップして、HARUさんが東京お台場のコンプレックス・ショッピング・モール『アクア・シティ』から委嘱され作曲したオリジナル、その名も『シティ』。  基本的にブルースなのですが、トリッキーな構成のテーマ部分は、何が飛び出すか分からない21世紀のムードがムンムン(?)。 う〜ん、その『アクア・シティ』とやらに行ってみたいなあ〜・・・と思わせる、効果バツグンの佳曲です(笑)。  ツボを心得たタイトさを持ちつつ、気持ち良くグルーブする高橋幹夫さんのドラミング、そして、渋味を煎じ込んだような(?)独特なトーンの藍澤さんのベースも最高で、パーカッションの彩りを加えて、観客の気持ちも体もスイングさせます。  このセットの最後は、HARUさんのニューヨーク・トリオ・・・ハービー・シュワルツ(b)、ダニー・ゴットリーブ(ds)・・・でのファーストCDのタイトル曲である『モリエンダ・カフェ』。  御馴染の『コーヒー・ルンバ』をHARUさんがアレンジしたものですが、ユーモラスな中にも、ミステリアスかつロマンティックな雰囲気を醸し出す演奏は、HARUさんのミュージシャンとしての特性が最も顕著に出ているように思います。 途中、それまでクールに演奏していたパーカッションの池田さんが突如爆発。  パーカッションの平手撃ちの連発の後、『イテ〜ッ、イテ〜ッ、痛ぇ、痛ぇ!』と爆笑のパフォーマンス(“バナナ・ボート”?)。  楽しい雰囲気の中、ファースト・セットは終了。
 



藍澤 栄二(b) & 高橋 幹夫(ds)



池田 誠人(perc)



セカンド・セットは、先ず、ソロ・ギターでスタート。  お馴染みの『グリーン・ドルフィン・ストリート』をアコースティック・ギターで奏でるHARUさんですが、いきなりアドリブから入り、途中、所々に、あのテーマ・メロディが、なにか焦らすように(?)、チョコチョコと顔を出してくるあたりが面白く、グッと観客の心を惹きつけます。  続いては、コルトレーンの『エキノックス』。 ライブ盤と同じく、『至上の愛』のリフを利用した、ミステリアスな雰囲気です。  池田さんは、ブラジルの楽器、クィーカー(内部についた竹の棒を擦る楽器)を駆使して、演奏に一層の怪しい彩りを添えます。  そして、興が乗ってきたのか、クィーカーを奏でながら、椅子の上に仁王立ちになる、といったパフォーマンスも披露。  続いては、トム・ジョビンの名曲、『お馬鹿さん(ハウ・インセンシブル)』をロマンティックに。 良い曲、そして良い演奏です。  

お次は、ジャコ・パストリアスの“ワード・オブ・マウス”バンドでもお馴染みの『インビテーション』。  “ワード・オブ・マウス”の最後のレギュラー・ギタリストでもあったHARUさんにとっては、思い入れもヒトシオな曲でしょう。  ここではハード・ボイルドで硬派なムードでの厳しい演奏となりました。  最後は、HARUさんと同郷の渡辺貞夫さんに捧げて、という事で、貞夫さんの名曲中の名曲、『パストラル』。  『日本のジャズメンは、日本の(先輩)ジャズメンが書いた名曲を何故か演奏したがらない』・・・とよく言われるのですが、ナベサダの名曲を取り上げたHARUさんのミュージシャンシップに大きな拍手を贈りたくなります。  丁度、貞夫さんの音楽活動50周年のお祝いライブにも参加する、というHARUさん、ここでは、12弦ギターを駆使して、雄大なイメージと共に、感動的な演奏を届けてくれました。
  





HARUさんのプレイには、派手なテクニックの誇示や、過度なギター・テクノロジーの羅列、といったものが無く、嫌な言い方ですが、どうしても一般的に地味な印象があるようです。  しかし、ニューヨークで、現地のミュージシャン仲間から絶大な信頼と尊敬を集めているというHARUさんの演奏に接し、その真髄に迫ろうとする事によって、我々日本のジャズ・ファンが得られる感動と喜びは大きいと思います。  テロ事件の影響から、ホームであるニューヨークでの活動がどうなるのか、心配な面もありますが、これからもHARUさんの活動に期待しています。 そして、是非、一人でも多くの音楽ファン、ジャズ・ファンに、HARUさんのプレイを聴いて貰いたいものだと思っています。 

さあ、今日も、明日もライブで漫遊?! 貴方も、是非、どうぞ!