追悼特集

ありがとう・・・
鈴木コルゲン宏昌さん

既報の通り、コルゲンさんこと、鈴木宏昌さんが、病気療養中のところ、5月21日、逝去されました。 享年60。 子供の頃、ナベサダ、ヒノテルと並んで、僕が知っていた数少ないジャズメンの一人がコルゲンさんでした。 あの優しげな笑顔、ユーモアたっぷりの飄々としてキャラクタ、そして、素晴らしいピアノは、永遠に忘れることが出来ません。


1999年5月、新宿ピットインで行われた『Club Toko Session』・・・(日野元彦さんを励ますライブの予定が追悼になってしまったもの)・・・その2daysの初日。 フッと同行者と『そう言えば、コルゲンさんって、最近、お見かけしないね』という話しをしていると、司会の佐藤允彦さん(初代コルゲン)に紹介されて鈴木コルゲンさんがステージに登場。 『好きなだけ弾いていってください』と佐藤さんに促され、確か、あの時は五十嵐一生さん(tp)、山口真文さん(ts)等とコール・ポーターの“I Love You”を演奏されたような記憶があります。  本当に素晴らしい演奏で、もっと聴きたかったのですが、何故か一曲だけで終了。 コルゲンさん自身も、もっと演りたそうでしたが、『ハイ、終わりで〜す』という佐藤さんのユーモラスな進行で退散(?)。  見た感じ、少し痩せられていたので、何処か体調が悪く、敢えて短い演奏になったのかな、という印象がありましたが、演奏自体の素晴らしさは、そんな僕の不安を掻き消すほどのものでした。 


その後、コルゲンさんの御病気のことを知り、ビックリしたものです。  トコさんをお見舞いに行った際、病気が発見された・・・とのことで、なにか運命的なものを否が応でも感じます。  読売新聞の記事に、そのあたりの経緯が掲載されましたが、ここでのコルゲンさんの前向きな発言、『病気をして得したと思えるのは、退院直後、することもないのでピアノに真正面から向き合えたことかな。 練習するほど音楽の理想が高くなり、目標が自分から遠ざかっていく・・・』を読み、その向上心、探究心、音楽(ジャズ)への深い愛情には本当に感動を覚えました。  既に一時代を築いたベテランが、尚も『理想』に向かって努力している・・・、嗚呼、音楽って、ジャズって、なんて凄いんだろう・・・と思わされます。

2000年11月1日、六本木alfieでの『コルゲン・セッション』(with 多田誠司、原朋直、井野信義、村上寛、サナピー)。 地下鉄六本木駅の階段を上りきり、すぐ横のalfieが入居しているビルのエントランスに入ると、3〜4歩前にコルゲンさんがいらっしゃるのが見えました。 天然パーマっぽい白髪まじりの頭髪。 肩には、恐らく楽譜が入ったショルダー・バッグ。  エレベータに乗り込むと、コルゲンさんと僕の2人っきり。  僕にとっては、本当に『幼少のころから知っているオジサン』といった存在のコルゲンさんなので(勿論、一方的に知っているだけだが・・・)、『コルゲンさん、あの〜』と声を掛けると、ちょっとビックリした表情に。  



   『あのCD、コルゲン・カラー、やっと見つかったんですよ、この前、探していたんですけど』 

   『あ〜、あれね。 あれ、いやあ〜、ミスプリントが多いんだよね、あれ・・・。 恥ずかしいんだよね』

邦人ジャズメンのCDは、再発シリーズにでも含まれない限り、発売から時間が経てば経つほど手に入れ難くなってしまうものです。  96年録音の『Colgen Color』も中々手に入らず、この数日前にやっとゲットした次第でした。  確かにライナーノーツにはミスプリが目立つけれでも、素晴らしい演奏内容。  妙に感激して、この日、CDを持参してしまった程でした。

   『今日、持ってきたんで、あとで、サインして貰えますか?』

   『ええ勿論。 僕のなんかで良ければ・・・』

時間にして数十秒ながら、肩が触れ合うような位置でコルゲンさんと交わした会話は、今でもハッキリと覚えています。  エレベータがalfieのある5階に到着すると、コルゲンさんは、『どうぞ』と『開』のボタンを押してくれました。  『そんな、どうぞ、お先に』という僕の言葉を制するように、『いやあ〜、どうぞ、先に!』とシッカリした声で促すコルゲンさん。  客観的に見れば、取るに足りない小さなことかも知れませんが、何か、あそこにコルゲンさんの『ジャズ・ミュージシャン』としての心意気・・・『お客を楽しませる』・・・の真髄があったようにも思います。  

2001年1月31日、六本木サテンドールでのLIVEが、僕にとって、本当に最後のコルゲンさんになってしまいました。 既に可也痩せられていて、また病気が再発されたのかな、とも感じましたが、演奏は兎にも角にも素晴らしく、2年前と同様に、僕の不安を掻き消してくれました。  ですから、3月頭に、コルゲンさんが入院される(された)、と伺った時も、『きっと間違いなく復帰してくれるだろう』と思ったのですが・・・。  兄弟のような存在だった親友のトコさんの三回忌(5月13日)を見届けるように、マイルスと同じ誕生日(5月26日)を目の前にした最期。  本当に残念でしかたありません。 

コルゲンさんは、最初に病気が発見されてから、自ら人生を『トコちゃんがつないでくれた命』と言われていました。 以降、亡くなるまでの2年間という時間は、あまりにも短いもので、もっと、もっと沢山、素晴らしい演奏を聴かせて欲しかったです。 しかし、この2年間で、数少ないながら、或る意味、ピアニスト鈴木宏昌にとって、理想に近い最高のプレイを聴けた事に僕は感謝したいし、その経験は、これから続く自身の『音楽(ジャズ)を追い駆ける人生』の大事な財産になって行くと思います。  コルゲンさん、本当に有難う!  

  

We remember Colgen-san


2000年11月1日、六本木alfieにて
多田誠司(as)、原朋直(tp)をフィチャ―したセッション


原さんのハイノートに、『やるな〜』といった感じで
笑顔と共に視線を傾けるコルゲンさん



一切の妥協無く、力の限りピアノを鳴らしきる・・・
ピアノと一心同体化したようなプレイを聴かせてくれた



2001年1月31日、六本木サテンドールにて
長く共演してきた坂井紅介(b)、直居隆夫(g)に、若手精鋭の
川嶋哲郎(ts)、山田穣(as)、力武誠(ds)を加えたセッション





2000年10月、alfieの容子ママの誕生日を
祝うセッションに飛び入りしたコルゲンさん

まさに入魂のプレイといった凄まじいピアノに度肝を抜かれた



“COLGEN COLOR” by 鈴木宏昌トリオ
鈴木 宏昌(pf)、坂井 紅介(b)、村上 寛(ds)
1. Summer Night, 2. Little Sunflower, 3. Lament, 4. Footprints, 5. Spring is here, 6. I thought about you, 7. Alone Together, 8. Mirror Mirror

気心を知り尽くした紅介さん&寛さんとのトリオ作(96年8月録音)。 全曲ジャズスタンダードの選曲で、コルゲンさんの“ジャズ・ピアニスト”としての姿を見事に捉えた名作と言えるでしょう。 ルバートでのソロで始まる1.の雄大かつ繊細なプレイ。 上品なタッチで印象的なメロディを奏でる3.、そして緊張感と共にトリオが疾走する7.や、 8.チック・コリア曲のチャーミングさ等、聴き所が満載。  ピアノで歌い、語りつくす・・・そんなプレイとでも言えるでしょうか。 『何気なさ』が妙に魅力的なジャケット写真と、コルゲンさん自身によるユーモラスな曲解説も素敵です。





  “COLGEN WORLD” by 鈴木宏昌トリオ
     鈴木 宏昌(pf)、稲葉 国光(b)、日野 元彦(ds)
1. Prologue, 2. Ode to "Na-Me", 3. LOVE, 4. Some as Night, 5.A Little One for Young Guys, 6. Epilogue

黄金の日野皓正クインテットのリズム・セクションの3人が再会し、フュージョン・ブーム華やかなりし76年5月〜6月に録音された、アコースティック・ピアノ・トリオの傑作。 1.、6.の小品に挟まれた6曲全てコルゲンさんのオリジナルで、アルバムに一つのストーリーが流れているような、圧倒的に熱いコアを感じます。 当時まさに男盛りの36歳だったコルゲンさんのプレイの切れ味は絶品。 個人的には、10分強に亘って、緊張感とリラックス感が渾然一体となったまま、トリオが高次元の音楽的対話を繰り広げる4.の『静かなる白熱』に完全降参。  稲葉さん(当時42歳)の音楽の大きさ、トコさん(当時30歳)の驚異の瞬発力と柔軟性にも圧倒されます。  日本ジャズ界の金字塔的作品と言っても過言ではないでしょう。




  “With My Whole Heart” by 鈴木 宏昌
1. All the things you are, 2. My one and only love, 3. Someday my prince will come, 4. Round About Midnight, 5.Stella by starlight, 6. How deep is the ocean, 7. Dolphin Dance, 8. Blue in Green, 9. Little One, 10. Again and Again, 11. Solar, 12. With my whole heart

1995年8月録音のコルゲンさんにとって初のソロ・ピアノ集。 解説書によると、当初、コルゲンさん自身は、この企画に及び腰だったそうだが、プロデューサの初代コルゲン佐藤允彦さんからの『いつもの気分でプレイを』とのアドバイスに従い、弾きなれたスタンダードや、マイルス愛奏曲を取り上げ、録音に臨んだそうです。 奇をてらおうとか、格好つけようとか、そういった邪心とは無縁な、一点の曇りもない、純粋かつ円満な『スタンダード解釈』と『ジャズ・ピアノ表現』がここに聴くことが出来ます。 コルゲンさんが生涯を通じて、どのようにピアノと、そしてジャズと向き合ってきたのか・・・・その答えのようなものが、シッカリとらえられた見事な作品。  初代&2代目、2人のコルゲンさんの『男の友情』が作り上げた、『宝物』のようなアルバムです。