LIVE偵察日記
November,2000



☆11月 17日(金) At 六本木alfie
『増尾 好秋 カルテット』
増尾 好秋(g、vo)、野本 晴美(pf)、山下 弘治(b)、本田 珠也(ds)


60年代末から70年代初頭にかけて、伝説の渡辺貞夫カルテット(with 鈴木良雄、渡辺文男 or 角田ヒロ or 村上寛)に抜擢されて以来、ナベサダとのモントルー・ジャズ祭への出演(日本人初)、ニューヨークに本拠を移してからのエルビン・ジョーンズやラリー・ヤングとの共演、そして、なんと言っても、あのジャズの巨人ソニー・ロリンズを、レギュラー・バンド・メンバーとして長くサポートしてきた、文字通り“日本を代表するジャズ・ギタリスト” 増尾 好秋さん。 80年代後半〜90年代は、プロデューサとしての仕事がメインだったそうだが、98年末に“ジャズ・ギタリスト”としての“復活宣言”とも言える傑作“Are You Happy Now?”(with Larry Goldings、Lenny White)を発表。  今回は、名古屋LOVELY開店30周年記念コンサートでの上記“伝説のナベサダ4”再結成などもあり、2月に続いて今年2度目の来日。  当夜のalfieは、2月の来日時にも共演した若手ミュージシャンとの再演で、さあ、どんなライブになるか!


週末ということもあり、往年のジャズ・ファンと思しきネクタイ族のオジサマ達も多数駆けつけ、大盛況のalfie店内。 否が応でも期待感で開演前から盛り上がる。  先ずは、スタンダード“You Are My Everything”でスタート。 その人柄を物語るような、増尾さんの暖かいギター・サウンドが心地好い。 程よい緊張感と、リラックス感に満ちた、この時間の流れは、実に贅沢だ。






2曲目は増尾さんのオリジナル新曲で“Wet Dog”。 ハード・ボイルドな調子の、カッコ良いブルース曲。 2月の来日時のベースは、ベテランの岡田勉さんだったが、今回は若手の好手、山下弘治さんを抜擢。 以前はズシーンとした素晴らしい音色だった山下さんのベース、何故か今宵は、ど〜も貧弱になってしまった・・・という感じが否めない。 ここ1年くらい、ピックアップを使用している影響なのか?  元々、日本には他にあまり居ない“豊かな木目の音”がするベーシストだっただけに、う〜ん・・・・。 偶々、不調だったのか、あるいは・・・今後の山下さんの活躍で判断するしかない?



3曲目は、ワルツ・タイムで“I Should Care”。 優雅な演奏が展開され、素晴らしい。  ここ数ヶ月、なんとなく“難しい事”をしようとし過ぎている印象があって、とても嫌だった野本晴美さんのピアノ・・・、しかし、当夜は別人のようにスイングし、小粋に飛び跳ねる。 瑞々しいタッチの美しさ。 演奏の中にドップリと入り込み、理解し、そこから掴み取ったものを自然に指先を通じて表現するかのような集中力。 ピンと張った背筋、演奏の流れを捉えようとする視線など、恐らく内面に大きな成長、あるいは何かしらの安定感が生まれてきているのだろう。 元オッカケのオジサンとしては嬉しい限り(何やソレ?)。  でも、山下さんの場合とは逆に、偶々、当夜好調だったのかも・・・? 今後の野本嬢の活躍からは目が離せない。




さて、お次は、お待ちかね(?)、増尾さんのボーカル。 子供の頃に大好きだったというナット・キング・コールのレパートリーから“Sweet Lorraine”を、来場していた親戚のお嬢さんに捧げて。  ちょっと、舌足らずな感じがする、素朴でスイートな歌声が堪らない。  お世辞にも“美声”とは言いづらいものがあるが、上手い下手を超越した、愛すべき歌心・・・なんて素敵なんだ!  今回は、増尾さんが亡き父上に捧げた心温まる名曲“For The Old Boys”は聴けずに残念だったが、是非、是非、ライブのたびに素敵な歌声を聴かせて欲しい!



ファースト・セットの最後もスタンダード・ナンバーで“All The Things You Are”。  増尾さんは、先ず、野本晴美嬢とのデュオで始める。  ここでの二人のインタープレイには思わず悶絶。 兎に角、増尾さんの音楽を理解しきった、といった具合に、自信に満ちて踏み込んでくる野本嬢のピアノが圧巻。 増尾さんも“晴美が、そう来るなら!”とでも感じたのか、他のメンバーに目配せし、デュオ・パートを長めに取るという憎い演出。 積極的に後輩を抜擢するベテラン、そして、それに見事に応える若手・・・、久々に“心意気”を感じさせてくれる、素晴らしい瞬間だった。



000年は“プラネットX”で待望のリーダー・デビュー、 
今、一番“旬な”ドラマー 本田 珠也
増尾さんが、嬉し恥ずかしといった風に、
「僕の同級生、本田竹広の息子!」と紹介した場面が印象的だった。


増尾さんの清々しいパーソナリティ故か、当夜のalfieは、いつにも増してとてもアットホームな雰囲気。 そこで、ついつい酒量が・・・。 休憩時間にボトルを空けてしまい、実は・・・セカンド・セットの曲目をあまり覚えていない・・・、嗚呼、失態?  マイルスの“Milestone”(パーカーと入れた古い方の曲)や、モンクの“Pannonica”(“Ruby My Dear”だったかも?)などジャズ・オリジナルの名曲をやっていたような記憶が・・・。 そう言えば、ファースト・セットでもモンク愛奏曲の“I Should Care”を演奏したり、フッと、増尾さんは、かなりモンクに影響されているのだろうな、と感じた。 もしかすると、その影響は、目に見えない“JAZZの遺伝子”として、モンク→ロリンズ→増尾・・・と繋がっているのかも知れない。 すると、次に、この連鎖に入っているのは誰になるのだろう?  珠也か? 晴美か? 弘治か?  こう考えただけでも、JAZZを聴き続けていくことが、本当に、本当に、面白くて、面白くて仕方がない。

尚、増尾さんは、2001年2月に短期間ながら、再来日してくれる、とのこと。 “これからは自分のバンドを作って活動したい”とMCでも言われていたが、当夜のメンバーが中心になるであろう今後の“MASUO BAND”には、要注意!