日本ボンド磁石工業協会ガイドブック BMG−1000

ガイドブック総則

General rule of guide books

 

1.    はじめに このガイドブック総則は、日本ボンド磁石工業協会が作成したガイドブックの体系、及びそのリストを記載している。なおガイドブックには、ボンド磁石の製造者、関連製造者並びにユーザーが使用できるボンド磁石の試験片、推奨試験方法、用途別推奨試験方法などを体系的にまとめた。

 

2.    ガイドブックの体系

BMG−1000シリーズ  共通

BMG−2000シリーズ  磁気特性関係

BMG−3000シリーズ  機械特性関係

BMG−4000シリーズ  信頼性試験関係

BMG−5000シリーズ  用途別

 

3.    ガイドブックリスト

ガイドブック番号

名 称

参照規格

BMG−1000

ガイドブック総則

 

    1001

ボンド磁石の試験片

 

    

 

 

BMG−2001

ボンド磁石の磁気特性試験方法

JIS C 2501永久磁石試験方法

   −2002

磁石粉末の磁気特性試験方法

 

   −2003

磁性コンパウンドの磁気特性試験方法

 

   −2004

磁石粉末の磁気測定用試料の作製方法

 

   −2005

ボンド磁石の温度係数試験方法

 

   −2006

ボンド磁石の着磁方法

 

 

 

 

BMG−3001

ボンド磁石の圧環試験方法

EMAS-7006せん断打抜き試験方法

   −3002

ボンド磁石のフレキシビリティ試験方法

 

   −3003

ボンド磁石の磁気吸着力及び静止摩擦力試験方法

 

   −3004

ボンド磁石の圧縮せん断接着強さ試験方法

 

   −3005

ボンド磁石の流れ試験方法

 

 

 

 

BMG−4001

ボンド磁石の耐食性試験方法

 

   −4002

ボンド磁石の耐薬品性試験方法

 

   −4003

ボンド磁石の耐熱性試験方法

 

 

 

 

BMG−5001

自動車用ボンド磁石

 

 

 

 

4.    改定等

制定:第1版 1999年 月 日

改定:第2版     年 月 日

 

5.    作成メンバー


ガイドブック総則の解説

Comments for General Rule of Guide Books

 

1.    ボンド磁石Bonded magnetsとは

 ボンド磁石とは、磁石粉末をバインダー(結着剤)で固化成形した複合永久磁石の総称である。磁石粉末とバインダーを主な成分としているが、必要に応じて酸化防止剤や潤滑剤などが添加されている。フィラーに相当する磁石粉末の含有比率が、他の複合材料に比べて大きいことが特徴的である。バインダーを含んでいるため焼結磁石に比べて磁気性能は劣るものの、@寸法精度が高いA形状自由度が高いB機械的特性に優れる(欠け難い等)C金型で成形するため大量生産が容易 などの特徴がある。そのため応用製品は多岐にわたっており、冷蔵庫のゴムパッキン、初心者(若葉)マークのシート、パソコン周辺機器のスピンドルモータ、自動車の各種メータ、健康機器、文具、玩具などに広く利用されている。

 

2.    ボンド磁石の種類

 ボンド磁石の種類は、磁石粉末、バインダ−、成形方法、異方性付与方法によって以下のような組合せが可能となる。

 

 

 


この他にも、バインダーとして金属やセラミックのものが研究開発されており、以下のように分類される。

永久磁石(Magnets

    ボンド磁石(Bonded magnets)

       金属結合型ボンド磁石(Metal bonded magnets)

       セラミック結合型ボンド磁石(Ceramic bonded magnets)

       樹脂結合型ボンド磁石(Polymer bonded magnets)  

            ※通常ボンド磁石(Bonded magnets)という

          フェライトボンド磁石(Bonded ferrite magnets)

             リジッドフェライトボンド磁石(Rigid bonded ferrite magnets)

             フレキシブルフェライトボンド磁石(Flexible bonded ferrite magnets)

          希土類ボンド磁石(Bonded rare earth magnets)

             SmCoボンド磁石(Bonded SmCo magnets)

             NdFeBボンド磁石(Bonded NdFeB magnets)

             SmFeNボンド磁石(Bonded SmFeN magnets)

          アルニコボンド磁石(Bonded AlNiCo magnets)

                   ABの複合磁石(Bonded hybrid (A) and (B) magnets)

    焼結磁石(Sintered magnets)

       フェライト焼結磁石(Sintered ferrite magnets)

       希土類焼結磁石(Sintered rare earth magnets)

          SmCo焼結磁石(Sintered SmCo magnets)

          NdFeB焼結磁石(Sintered NdFeB magnets)

       アルニコ焼結磁石(Sintered alnico magnets)

    鋳造磁石(Cast magnets)

       アルニコ鋳造磁石(Cast AlNiCo magnets)

       FeCrCo鋳造磁石(Cast FeCrCo magnets)

    その他(Others)


3.    ボンド磁石の製造方法

3.1.         カレンダー(圧延)法

3.1.1.   成形材料

バインダーとしては等方性磁石の場合、塩素化ポリエチレン等、熱可塑性樹脂が最も多く使用されている。一方、異方性磁石の場合には等方性の場合と同じで充填性のよい熱可塑性樹脂が一般的だが、用途によっては特に耐熱性、耐薬品性が要求される場合は、合成ゴムを用いて加硫することもある。この場合の合成ゴムとしては、NR,CRなどが一般に使われるが、EPM,EPDMを使用する場合もある。

磁石粉としては、Baフェライト、Srフェライトが用途によって使い分けられている。充填率は重量で85から90%が平均的である。加工助剤として可塑剤や熱安定剤などを少量添加する場合もある。

3.1.2.   成形プロセス

バインダー,磁石粉,加工助剤をミキシング・ロールあるいはニーダで混練したものを一軸または二軸の押出機でペレット化してカレンダー加工にまわす。カレンダー加工したシートを着磁器で片面または両面多極着磁をした後巻き取る。巻き取ったロールは原反(太巻き)と呼ばれ、注文に応じた長さにオフラインで巻き返したり、カットおよびスリットで加工する。

NR:

CR:

EPM:

EPDM:

 


3.2.         射出成形法

3.2.1.   成形材料

 射出成形には流動性さえ確保できれば、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂が利用可能である。樹脂の大きな違いは次の通りである。

熱可塑性樹脂−成形材料を加熱すると軟化し、さらに加熱を続けると溶融して流動性を示す。もっと温度を上げて加熱を続けると熱分解を起こす。熱分解を生じない範囲内では加熱すると軟化・流動し、冷やすと元にもどるという繰り返しを何回でも出来る。(可逆的反応)

熱可塑性樹脂としてはポリアミド(通称6ナイロン、12ナイロン)が最も多く使用されている。もし、不良成形品が出れば、粉砕してもう一度成形材料(再生材料)として使える。しかし、くり返し使用により、物性が少しずつ劣化するため、実際にはバ−ジン材料に少量混ぜて使われる。

熱硬化性樹脂−成形材料を加熱すると流動性を示し、さらに加熱を続けると硬化する。もっと温度を上げて加熱を続けると、固まったまま熱分解を起こす。熱分解に至らない温度内でも、一旦固化してしまうともう二度と元の状態には戻らず、流動性が無くなる。(不可逆的反応)

熱硬化性樹脂としてフェノ−ル樹脂やメラミン樹脂などが使われたこともあるが、成形体に発生するバリ取りの工数がかかることや再利用ができないなど問題が多い。したがって、熱硬化性樹脂は最近ではほとんど使われていないのが現状である。

3.2.2.   成形プロセス

 射出成形は、@成形材料を溶融し、A圧力を加えて、閉じている金型に圧入(射出)し、B冷却してから取り出すと言う繰り返しで大量に樹脂製品を作り出す生産システムで、主とする成形材料は熱可塑性樹脂である。

3.2.2.1.                          成形機の基本的なメカニズム

 メカニズムを分類すると、@成形材料を溶かし、良く混練した上で、金型に圧入(射出)する可塑化・射出機構、A取り付けた金型を開けたり閉じたりする金型開閉機構および作動させる電気・油圧・機械駆動部より成り立っている。

3.2.2.2.                          ボンド磁石の等方性と異方性

 製法は通常の樹脂成形とほとんど変わらないが、磁界を用いて成形時に磁石の粉末粒子を一定方向に配向させることによって、より磁力の強い磁石に成形することも可能である。このように、磁界を使用してより強力な磁石に成形したものを異方性ボンド磁石と称し、磁界を使用しないで通常の樹脂と同じように成形することで方向性を持たない磁石を等方性ボンド磁石称しています。

 


3.3.         押出成形法

3.3.1.   成形材料

フレキシブルボンド磁石の押出成形には、一般に熱可塑性樹脂が用いられる。主な樹脂は、NBR、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル、スチレン系、オレフィン系、ウレタン、共重合材等である。また、可塑剤、カップリング剤、安定化剤等が添加剤として用いられる。磁石粉末は、主に等方性または異方性のBaまたはSrフェライトが用いられるが、SmCo, NdFeB, SmFeN, AlNiCoなどが用いられる場合もある。

3.3.1.1.                          成形プロセス

 磁石粉末、熱可塑性樹脂と添加剤とを二軸ロールまたはニーダなど混練機に投入して混合混練することで軟化およびゲル化させ、冷却後または冷却過程で成形条件に合わせた形状にカッティングしてペレットを作製する。その後、成形機のホッパーからシリンダー内にペレットを投入して溶融し、スクリューを回転させて溶融体をダイスを使用して押し出す。

3.3.1.2.                          ボンド磁石の等方性と異方性

 押出成形によって作製する磁石は成形条件によって等方性または異方性の性質を示す。特にフェライト磁石の場合にはその粉末形状が一般に扁平であることから、押出時に機械的な結晶軸の配向が起こり異方性の磁石が得られる。したがって、等方性の磁石を作製する場合には粉末形状が等方性に近い粉末を用いる必要がある。一方、成形時に金型の上下に磁気コイルを有する磁気回路を設けて、磁界中で押出成形すると粉末形状に異方性がない磁石粉でも異方性磁石にすることが可能である。また、磁気回路なしで成形すれば等方性磁石が得られることになる。なお、これら金型から押出した材料は圧延ロールを用いて厚みの微調整が可能である。

 


3.4.         圧縮成形法

3.4.1.   圧縮成形材料

  圧縮成形材料に使用する樹脂は熱硬化性樹脂であり、主にエポキシ樹脂やフェノール樹脂などが使用されている。熱硬化性樹脂はノボラックタイプを使用する場合には粉状混合となるので乾式法が使われ、レゾールを使用する場合には湿潤状態となるので湿式法となる。一般的にはエポキシ樹脂が接着剤として使用され、主剤のエポキシプリポリマーに硬化剤を入れることにより硬化させる。

ボンド磁石用に使用される熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂が多く使用されている。性状は、液状と粉状とがあり、一般的には分散性が重要な要素となるので、液状が使用されている。下記にボンド磁石材料の製造方法を記す。この製造方法は、現在主流となっている希土類磁石粉末の中で、NdFeB系及びSmCo系の粉末を使用した時に適用される。

3.4.2.   成形プロセス

コンパウンドは密度を高めるために磁粉の粒度調整をした後熱硬化性樹脂と混練することで作製する。圧縮成形は、@成形材料を金型内に充填しA圧力を加えてB成形品を取り出しC炉(一般的な加熱炉や真空乾燥炉)に入れて熱をかけることにより硬化させるという繰り返しで行う。材料を有効に使い、尚かつ生産性に優れている成形方法である。

3.4.3.   圧縮成形機の基本的なメカニズム

3.4.3.1.                          メカニズム

 メカニズムを分類すると、@成形材料を金型に充填し、A圧力をかけて成形するという非常にシンプルな行程により成り立っている。

3.4.3.2.                          圧縮成形機の種類

 メカニカルプレス・油圧プレスなどがある。異方性の磁紛を用いる場合は、磁界印加の装置が付与される。磁界印加の方法としては、圧縮方向に対して縦方向・横方向・ラジアル方向などが多く用いられる。

3.4.3.3.                          防錆処理について

 ボンド磁石の錆の発生を防ぐ方法としては防錆処理法があり、その中でメッキ処理や塗装処理が用いられている。特に錆が内部浸透する危険性のあるボンド磁石にとっては欠かせない処理である。

 


永久磁石の使用上の注意事項/ガイドラインとしては(社)日本電子材料工業会から19957月に発行されたEMAJ-R005がある。基本的にはそれに従うことを推奨する。

ここではボンド磁石に限って付け加えるべき注意事項を列記する。

 

注意事項

(1)     フェライト磁石粉には等方性と異方性がある。異方性粉の場合、機械配向や磁界配向などが異方性付与の方法として用いられるが、それぞれの方法に合った粉末を選択する必要がある。

(2)     フェライト磁石粉は細かいため大気中に保存すると吸湿する。使用時に問題になることがあるので保管には注意する必要がある。

(3)     希土類磁石粉には等方性と異方性がある。異方性粉の場合、一般に磁界配向が異方性付与の方法として用いられるが、配向に必要な磁界は磁石粉によって異なるので注意が必要である。

(4)     希土類磁石粉は酸化しやすいので、真空中または不活性ガス中に保存する。また、希土類合金は水素を吸収し易いことも頭に入れておいた方が良い。

(5)     希土類磁石粉は活性であり発火する恐れがある。万が一発火した場合には、ABC消火器は使用せず、金属粉末消火器を使用する。但し機種により差があるので効果を確認しておくこと。また特に、水などで消火すると水素を発生して爆発する危険があるので食塩または消火砂などをかけて処理する例がある。磁石粉取り扱いの際には食塩または消火砂などを近くに用意しておくと良い。

(6)     樹脂と磁石粉を混合したものをコンパウンドと呼んでいるが、射出成形と圧縮成形に用いられるものは樹脂や磁石粉の大きさなどが異なるので、成形方法に合ったコンパウンドを選択する必要がある。また、それぞれのコンパウンドの保存方法にも注意が必要である。

(7)     コンパウンドは吸湿性があるので、乾燥した環境に保存する必要がある。特に希土類磁石用の場合には酸化も考慮して真空中または不活性ガス中に保存しなければならない。

(8)     射出成形時には成形機のシリンダー、金型などが加熱されており、また作製直後の磁石は高温であるので火傷しないよう注意が必要である。

(9)     成形時に磁界を印加する場合、大きな磁界を用いるので付近にスパナーなど磁石に吸い付くものを放置してはいけない。

(10)   圧縮成形に用いる圧力は燒結磁石成形時に比べて一般に大きいため、成形金型のパンチが破損して飛んでくることがあるので保護対策が必要である。

(11)   希土類磁石粉を用いた圧縮成形品の場合、酸化しやすいので表面コートをして使用する場合が多い。

(12)   MSDS(マテリアルセーフティデータシート)を参考にする。

(13)   材料、製品についてユーザと取引業者や納入業者等の当事者間で取り決めがある場合にはそれを参考にする。