ホームへ
楽 器

 

 思い返してみれば、ヒーローは音楽好きだった。

 きっと邪魔になるだろうに、ギターを背負って旅する「人造人間キカイダー」ジロー。同じくギターを持った「怪傑ズバット」( 元ネタの「ギターをもった渡り鳥」は見ていないので、横に置いといて)。「キカイダー01」イチローは、トランペット。ついでに言うとキカイダー兄弟の末っ子、ハカイダーのサブローは口笛。敵役のギル博士は杖兼用の横笛を愛用していた。
 アニメでは、「ハゼドン」の横笛。「ムーミン」のスナフキンのギターは言うまでもないだろう (原作ではハーモニカか横笛だ)。

 そして、『宇宙海賊キャプテンハーロック」のオカリナ。
 このオカリナという楽器は、なぜか気に入ってしまい、音楽店で購入した。

オカリナ

 一番最初に覚えた曲がアニメの中で奏でられていた「マユのテーマ」という曲である。
 以来、二十年以上壊れもせずに手元にある。それだけ長い間持っていたのだから、さぞかし上手なのだろうと思われるかもしれないが、下手の横好きだ。暗譜している曲も片手で足りる。

 実はギターにも挑戦したことはある。小学生のころ、叔父がギターの組み立てキットをくれたので、組み立ててしばらく練習していた。残念ながら、いっこうに上達せず、ほどなく放り出してしまった。しかし、今でもギターは憧れだ。長じてから、ギターをよくする友人と数人知り合ったが、非常にうらやましかった。

 ほかにもいろいろ興味をそそられる楽器はあるが、その傾向を考えてみると、どうも「ヒーローがもっていそうな楽器」が好みらしい。そして、ヒーローが持っている楽器は、だいたいが携帯しやすく見えるもののようだ。あくまで「見える」のであって、実際に携帯しやすいかどうかは別問題である。

 いくら携帯しやすいといってもアルト笛はヒーローに向かない。だから、学校で習ったのに(あるいは学校で習い、笛のテストという嫌な思い出があるためか) あまり食指は動かない。ハーモニカも、携帯しやすさでは、一二を争うだろうが、やはり学校で習ったためか、興味がわかない。

 こうしてみると、携帯しやすく、学校では習っていない楽器に目が行くようである。そして、実際に手に入れるのは、どちらかといえば素朴な楽器が多いようだ。
 オカリナはご存知のとおり粘土を焼いて作った笛だし、今回手に入れたのも、竹に穴を開け、筒の片方に栓をしただけの笛である。

 「横笛の邦声堂」 というホームページで「篠笛の手作りセット」が売られていたので、購入する。
 以前、「日曜大工」でも書いたように、物を作るのは嫌いではない。しかも、実用可能な楽器が作れるのだ。それを購入しない手はない。
 こういうときにだけ、ものぐさの虫はどこかへ旅行に出かける。

 届いた箱を開けるときは、自然に顔がほころぶ。遠い昔、プラモデルの箱を開くときのあのときめきが蘇る。
 必要な道具も一緒についてくるので、お得だ。次に作る時は、竹だけ買えばまた作れる。
 早速、竹に穴をあける。
 穴を開ける位置は、付属の指穴メジャーで印をつけて決める。
これまた付属の三つ目錐で穴をあけて、それをナイフで慎重に広げていく。


穴あけ

 笛をつくるために穴をあけるというのは、実ははじめてのことではない。小学校のころ、ある季節になると毎日のようにやっていたことであった。

 秋になると通学路には、どんぐりが落ちていた。丸々と太ったどんぐりを拾い、とんがり頭の部分に名札の裏についているピンで穴をあける。穴をひろげて、中身をすっかり出してしまうと、笛のできあがり。下唇の下に笛を当て、唇を細めて吹くとボーッと音がする。考えてみると、これは横笛などと同じ吹き方である。
 当時は、笛を吹くというより、どんぐりの中身をくりぬいて笛をつくることが楽しかったようである。作った笛は学校に着く前に捨ててしまっていた。そして翌日、あらたなどんぐりをひろい、胸から名札をはずすのである。

 最近、とみに有名になった宮崎駿監督のアニメーション作品の一つ「となりのトトロ」の中で、トトロが夜中に木のてっぺんで笛を吹く場面がある。それを見たとき、その笛はどんぐりの笛だと思ったものである。
 人に聞くと、どうやらオカリナであるらしい。そういえば、森の精霊ともいわれるトトロが、どんぐりの実の中身をほじくりだした笛を吹くわけはないな。

 さて、竹が割れないように慎重に穴を付属のナイフでメジャーの指示する大きさまで広げ、やすりで形を整える。
 次は、竹の端の片方をコルクでふさぐ。

 ふさぎながら、「よく漫画なんかで、横笛を吹き矢にして敵を倒す場面があるけど、片方をふさいでしまったら吹き矢にならないな」と思う。
 開いている側から矢を入れるか、歌口から入れるかすれば、吹き矢になるかもしれない。その場合、息を吹くのは歌口だから、向かって右側の敵に矢を放つことになる。…こちらの方が意表をついて有効かもしれない。
 などと、馬鹿なことを考えながら作業しているのは、けっこう楽しいものだ。

 最後の仕上げは、笛の内部の塗装だ。本来は漆を塗るのだが、素人には入手も取り扱いも面倒なので、付属の手引書にはエナメルを使うことが記されていた。エナメルなら、ホームセンターでたやすく手に入る。
 そして、色だが、普通の笛は赤で塗られている。ちと変わったことをしたいので、黄色を選んだ。なぜ黄色かと尋ねられても、返答に困る。なんとなくである。なにしろ「行き当たりばったり」なもので……。

 笛の手入れは、くるみ油か椿油を笛の表面に塗るそうで、近くの薬局で椿油を買う。塗ってみると、ちょっとベタつくがつやが出た。なかなかのものである。
 キットには笛袋もついているので、かなり満足のいくものとなった。

しの笛と笛袋

 どんぐり笛をつくっていた頃よりは成長していなければならない。作っただけで放り出さず、なんとか演奏もできるようになりたい。

 笛を購入したところにも教本は売っていたが、郷文協(郷土文化協会)でしの笛教本ならびにテープ、そしてオカリナの楽譜も売っていたので、ここでしの笛入門用の教本とテープとオカリナの楽譜を購入する。

 実は楽譜はあまり読めない。示す音はわかるが、音の長さがピンとこないのだ。したがって、リズムがわからない。知らない曲の楽譜をみても、その曲は吹くことが難しい。だから、お手本のテープのあるしの笛教本を手に入れたのである。

 とりあえず、道具だては完璧だ。あとは、このものぐさ者がどこまで音楽に近づけるか、である。

 ……期待はするまい……。 


                                      2001/05/**


参考

横笛の邦声堂

「郷文協(郷土文化協会)


 


さんぽにいこう〜目次〜
本をつくろう
読んでみよう
飛んでいこう
風のたより風まかせ
ホームにもどろう