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自由を奪われ、檻に閉じこめられた犬にとって、飼い主の持ってきてくれる餌はほとんど唯一の楽しみといっていいだろう。 餌を持ってくる飼い主の足音が聞こえようものなら、もう待ち遠しくてよだれをダラダラ流しまして、へたすると自分のよだれで溺れてしまいようになったり。 いやぁ、畜生とはあさましいものですな。…と、笑ってもおられぬ。友人には女性を見たら、もうよだれを流して食いつきそうなヤツがおるからの。霊長類などと威張ってはおれぬ。 うん? 自分は? あはは……ここでくらいは、格好つけさせてもらえんかね。 まぁ、凡人は、犬のよだれを見ても「あさましい」か、よくても「人間も同じだよなぁ」くらいしか思わぬが、パブロフって先生はえらかった。犬のよだれから、条件反射ってものを引き出したのだからな。 餌の時にある音を一緒に聞かされた犬は、しばらくすると餌をもらわなくても、その音を聞いただけで、よだれを流すようになったのだ。 餌を食べるという刺激がなくても、音が聞こえるという条件にたいして、反射的によだれをだすという反応をしめす。これを条件反射というそうだ。 昔、ある学習漫画では、この条件反射を説明するのに、梅干しを見ると唾が出るという話をのせていた。 これを読んですぐに、家にあった梅干しを見つめまして、唾がでるのを今か今かと待っていたものだよ。 ところが、でないんですなぁ。いくら待っても、唾が。 あんまり長時間、ジッとながめてたもんで目が痛くなって涙が出てきての。 ありゃ、あの漫画は嘘だ、とか思ったものだ。 長じてから、やっと唾がでなかったわけがわかった。 その当時、梅干しが酸っぱいということは知識として知ってはいたが、口にしたことはなかったのだな。つまり、口に含んだ梅干しの酸っぱさに反応して唾を出すという経験がないので、梅干しを見ても反応しなかったのだということに気づいたのは、成人してからであった。 そのかわりと言ってはなんだが、梅の花を見ると反射的に口ずさんでしまうのが、「梅は咲いたか」である。 おそらくは、幼少の頃に見たコマーシャルの影響であろう。梅の花が出てきて、製品のキャラクターが「梅はぁ、咲いぃたか。桜は、まだかいな」とうたいながら現れるコマーシャルであった。 すぐに影響される単純な性格は、このころからすでに確立されていたものと思われる。 今回、散歩に出て、すぐに目についたのが、梅の花であった。住んでいる場所が山近くであるため、植物は豊富である。 すると、出てくるのが先の「梅は咲いたか」だ。 春になると口ずさむ、長年親しんできた「梅は咲いたか」であったが、このうたの正体に疑問を持ったのは、今年が初めてであった。 さて、このうたは、はたして何なのだろうか。コマーシャル用に作られたものなのだろうか。 雰囲気として、小唄のような気がするが。 それに、このうたにつづきはあるのだろうか。 そんな疑問が梅の花を見つめているうちに浮かんだのだった。 ところで、小唄のような気がすると書いたが、実は長唄、小唄、都々逸と名前を知っているだけで、どんなものかは知らなかった。先の梅干しと同じである。 とりあえず、このうたは昔からあるものと決めつけて、CD店に行ってみた。 すると意外にも簡単に見つかったのだな。 端唄(はうた)であった。やはり昔からあるものらしく、題名はそのまま「梅は咲いたか」であった。 ついでに、小唄や都々逸も聴いてみようと思い、端唄と小唄と都々逸が入った二枚組のCDを購入した。 興味のある方は、近くのCD店で邦楽のコーナーをさがしてみるとよろしかろう。思ったよりも簡単に見つかると思う。 さて、聴いてみてわかったことというと
ちなみに、民謡をやっている知り合いに尋ねると、民謡にも「梅は咲いたか」はあるらしい。さらに長唄について尋ねると、小唄よりもさらに眠気をさそうものであるらしい。 これからは、寝つかれない夜は、酒を飲むのではなく、小唄を聴くことにしよう。 そうしているうちに、小唄を聴かずともCDのケースを見れば反射的に、眠気が襲ってくるようになるだろう。 粋のわからない者は、なんともしかたのないものだな。 おまけ さて、「梅は咲いたか」の歌詞であるが、本文中には書かなんだ。 まぁ、昔からあるうたのようだし、たぶん、差し障りはあるまいとは思うたが、念のために著作権を調べてみた。……やはり、著作権は消滅しておる。だいたい、誰がつくったか、わからないようだからな。 そんなわけで、一番だけ書いておこう。 梅は咲いたか 桜はまだかいな 柳ゃなよなよ風次第 山吹ゃ浮気で 色ばっかり ションガイナ ちなみに、入手したCDは、これである。 |