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巻の29 はたらくじどうしゃ ビッグローダー (TOMY) 2002/ 2/ 2

見てて飽きない
盆栽や庭園など、限られた空間の中にひとつの世界を凝縮してそれを愛しむのは、はるかな昔から脈々と今に至る日本人の嗜好のひとつなのかも知れません。
様々なオブジェクトの繋がりや視線の流れなども、実は緻密に計算されてレイアウトされています。それを心に留めた上で改めて見なおすと、ただボーッと見てるだけでは気づかなかった新たな発見に驚くこともあるでしょう。
玩具模型などのホビーもこういう文化の流れと無縁ではないようで、分かりやすいところでは鉄道模型(Nゲージ等)やジオラマ(情景模型)などに綿々と受け継がれていたりしますね。

組立済みのレイアウトの俯瞰


さてさて。
オモチャには大きく分けて「積極的に触れて遊ぶもの」「その動きを眺めて楽しむもの」に分かれると思っています。
今回紹介するTOMY『はたらくじどうしゃ ビッグローダー』は、典型的な後者の代表玩具です。
私の所持している商品は同梱の説明書によると1984年製なんですが、TOMYホームページ内の「トイミュージアム」によると初めて世に出たのは1977年だそうです。その頃も私が買った時も、お値段は3,000円でした。
ここだけで、このオモチャが少なくとも7年以上にわたって売られていたロングセラー商品だという事がわかりますね。




閉じたコースの中で、ダンプトラック,フォークリフト,ペイローダー(シャベルロ−ダ−)と3台の自動車がひたすら働くオモチャです。
具体的には、赤いボールをダンプトラックで坂の上まで運び降ろし、降ろしたボールをフォークリフトで離れたところまで運んでコース上に落し、そのボールをペイローダーがダンプの荷台にすくい入れ、入ったボールをダンプトラックで運び降ろし…
と、ボールをコース内であちこちあちこち、ひたすらに運搬しつづけるというオモチャなのです。

ただし、この3台の自動車はボディの皮しかありません。シャーシはないので、当然動きようがないです。
ここに1台の動力車をコースに入れてスイッチをONにすれば。
このたった1台の動力車が、ボディを指定個所で自動的に次々に入れ換えて1台3役でコース中を動き回るのです。
動力車がひたすらに次々にボディを乗り換え、前後方向を自動的に変換する、そのシステマティックな動きはいつまでも見ていて飽きる事がありません。





3種のボディと動力車
手前が単三電池2本の力でもって一台3役を受け持つ動力車です。  
後ろに並んでいるのが、左からダンプトラック,フォークリフト,ペイローダーの“皮”というか、ボディです。
動力車はコース上の特定個所にある切り替えポイントでこの3台に順次乗り換えながら各々の車両の働きをするのです。

発想そのもののユニークさが実に冴えている逸品です。
こういう発想は会議や打ち合わせ等で出た意見を重ね合わせて出来る類のものではないでしょう。
企画者さんの中に瞬間に閃いた着想をセンス一発でイメージ化して出てきたものではないか…と感じるのです。
もちろん、そのイメージを具体的な玩具の形にするにはかなりの苦労をされたのでしょう。ボディの乗り替えの仕掛けや車の向きを前後切り替えるギミック、そしてそれをコースのどこにどうやって仕組むか。
しかもその上、コースパーツの分割や共通化など、商品とするための設計だって必要です。
そして形になったこのオモチャ。パーツの状態でも、組上げてみても、動かしても。作った方々が考えに考えぬいた細やかな工夫がそこかしこに見てとれるのです。


    
実は、ウチにあるこの商品は二代目なんです。
昔出たばかり(だったかなぁ?)の頃に買って遊んでたのですが、今は亡き父親と買いこんだオモチャの事で大ゲンカとなり、やむを得ず手持ちのオモチャをムリヤリ大量処分をさせられた過去がありまして。
その前後の頃に処分されたオモチャのひとつだったのです。「あまりにも見た目からして幼児向き」だったためなのかも知れません。
その後数年。すっかり忘れてしまったはずの私の目の前に、とある店の店先でバッタリ出会った時の嬉しさはなんと言い表したらいいのでしょうか。
縁のある商品なんだなぁ、と大切に持ち帰って。その二代目は大切に今もこうして我が家に居ます。

時々いろんな知人が我が家に遊びに来ますが、年齢層のせいもあるとはいえ、かなりの知人がこのオモチャを見て「あ、これ知ってる知ってる!」と言ってくれます。
「昔持ってたのはボールが黒やった」という話も聞いたりします。多分かなり初期の生産品なんでしょう。
軽く7年以上のロングセラーとなったのも、なんとなく納得できたりします。


    
コースの中で繰り返し繰り返し、いつまでもシステマティックな動作をし続けるのをずーっと眺めていると、今でもついつい時の経つのを忘れてしまいそうになります。
夢のある発想と練られたアイディアを箱庭世界の中に見事に再現した、後世に残るだけの値打ちのある名作オモチャだといえるでしょう。
箱にこそ「対象年齢5歳以上」と書かれてはいますが、どんな大人だって5歳の頃の感性の上に今の自分を積み上げているのです。
むしろ大人となった今だからこそ。
自分の中の「子供の心」が静かに揺り動かされるのを感じるゆとりがある今の年代だからこそ。
改めてゆっくりと、落ちついて愛しみたいオモチャだと思う私なのです。


パッケージ外観     

そして、このオモチャの遺伝子はこの春にタカラからリリースされる『電動作戦 ガッタイオー』というシリーズで、レール上の3台の電動自動車が走行しながらロボットに全自動で変形合体するという玩具に、ものの見事に受け継がれているようですね。
今月取り上げた偶然に我ながら驚いておりますが(笑)市場の、特に子供達の反応が今から楽しみだったりします。


この項終わり
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