テレビ版 名探偵ポワロ

求龍堂 刊 定価1800円+税
文:ピーター・ヘイニング 訳:岩井田雅行、緒方桂子

蒐集館へ戻る


 シャーロック・ホームズの「まにわ本」が出たならポワロ本は出ないのかーー!、と思っていたところ、ついに出ましたよ、NHKテレビ版「名探偵ポワロ」本が!出版社はホームズと同じ求龍堂、著者、訳者も同じというまさに狙ったような本です。

名探偵ポワロについて

 TVドラマ「名探偵ポワロ」(原題:Agatha Christie's POIROT)は、イギリスのロンドン・ウィークエンド・テレビ(LWT)が製作、1989年から1997年までの間(注1)に英国ITVネットワークで放映された番組です。「灰色の脳細胞」エルキュール・ポワロにはシェークスピア劇団出身のデビッド・スーシェ、ポワロの友人兼助手のヘイスティングス大尉にはヒュー・フレイザー、スコットランドヤードのジャップ警部にはフィリップ・ジャクソンが扮して、毎回難事件に挑みます。日本ではNHKが1990年から1997年の間に放映し、ポワロには熊倉一雄、ヘイスティングスには富山敬、ジャップ警部には坂口芳貞がそれぞれ声をあてていました。特に熊倉一雄のポワロはデビッド・スーシェの演技と相まってかなりイイ味を出しておりました。

ベスト・オブ・ポワロ 〜デビッド・スーシェ〜

 さて本書は名探偵ポワロの製作の裏話や各俳優の経歴や歴代ポワロ俳優についていろいろと興味深いことが書いてあります。中でも面白いのが、歴代ポワロ俳優の中でも最も原作のイメージに近いと言われているデビッド・スーシェに関するエピソード。スーシェは結構スリムな体型で、ポワロに扮する時はお腹や胸、肩にパッドを入れ、太った体型に見せかけるという「変装」をしていたというエピソードや、ポワロのトレードマークともいうべき「口ひげ」のエピソードも本書には記してあります。あの口ひげは1話ごとに別の業者に発注して作らせているそうですが、当然のごとく毎回違うものが出来上がってくるので、メイクのチームは苦労して同じ口ひげに見えるようにしているそうです。しかし、それでも口ひげが不自然に見えることがあるらしく、ラッシュフィルムを見て「口ひげが不自然に見える」という理由からもう一度同じシーンを撮り直すといったこともあったそうです。

ホワイトヘブン・マンションの秘密

 あと、ロケ地やセットに関するエピソードも豊富で、中でも劇中ポワロの住む「ホワイトヘブン・マンション」は、私自身「どうやって撮ったんだろう?セットでこれだけの規模のものを作るのは難しいだろうに。」と思っていたのですが、答えは簡単、フローリン・コートにある1930年代の外観を残したマンションを許可を取って撮影したそうです。このマンション、ちょうど改装が終った直後で、これから入居者を募っていたところだったそうです。しかし、一旦入居者が入ってしまうと窓にはさまざまなカーテンがかかり、しかもそれらは常に変化し画像のつじつまを合わせるのが大変になるので、週末を使って入居前のマンション(もちろん立ち入り禁止にして)の外観を昼夜合計72時間取り続けたそうです。要はフィルムのストックを作っておいたということです。そしてシリーズを通してマンションの外観が出るシーンにはこの時のバンクフィルムを使い続けたそうです。他にもコーンワールの村を再現するためにダンスターといわれる小さな町を一つ借り切って1930年代の村に作りかえてしまったり、同じくチルハムという町を借りたロケでは、クリスマスの情景にするために(撮影は4月)、「紙」で作った雪をホースで家や車や人(笑)にも吹き付けたそうです。このロケにはおまけがついていて、撮影中に雨が降りはじめ、紙で作った「雪」は徐々に濡れた団子状になっていき、ぐしゃぐしゃになる前になんとか撮影を取り終えたそうです(^^)。

総括

 …とまぁ、ホームズ同様非常にお金がかかっているゴージャスな番組だということが再認識できる一冊であると言えます。この本を読んだ後でシリーズを見直すと面白い発見があるかもしれませんよ。(関係ないですけど、私は「ジャップ警部のオフィスはさまざまなところで撮っているが、最低限の要素−−−「扇風機」を置いて「警部のオフィス」として撮影している」ということを知ってから、彼のオフィスのシーンを見るたびに扇風機をチェックするようになってしまいました(^^;。)とにかくこの本、アガサのファンの方や、TV版ポワロのファンの方は読んで損のない一冊であります。

P.S.

 この本の各章のタイトルもまた、アガサの小説のタイトルをもじったものをもってきていて面白いですよ。(「エルキュールの冒険」→「ヘラクレスの冒険」、「ビッグ3」→「ビッグ4」など)


注1)ポワロの英国での放送は今現在第45話「もの言えぬ証人」をもって、ひとまず終了しています。今のところ新作の放送は未定だそうです(;_;)。(※補足1)(でも、やはりスーシェ版で「カーテン」を見てみたいと思いませんか?)

補足1)1999年にイギリス「カーニバル・フィルム」によって新シリーズ「アクロイド殺人事件」および、「エッジウェア卿の死」が製作されております。NHK総合での放映は、2000年12月30、31日でした。
内容的には、引退していたポワロがアクロイド殺し、エッジウェア卿殺しの2件の事件で現役に復帰するという流れになっています。ちなみにヘイスティングス大尉の吹替え声優さんは、故富山敬さんから安原義人さんにバトンタッチしました。甘い感じの富山さんとは、うって違ってオットリした感じが魅力のヘイスティングス大尉になっていました。
(補足追加:2001/01/02)



蒐集館へ戻る

ホームのCONTENTSへ戻る