柴(さい)ちゃんへ

 真っ黒けの猫、柴ちゃん。
 きみがいなくなってもう何年になるんだろう。
 きみのつけていた首輪は、しっかりと私の手元に残っているのに。

 いつもちゃんと帰宅していたきみが帰ってこなかったあの日。
 男の子だから時々家を空けるのは仕方がないんだと気楽に考えていたんだよ。
 だって、きみとはまだ1年ちょっとしか付き合っていなかったから。
 あんなに早く別れが来るなんて思わなくて。

 月曜日のいつもの道。
 出勤途中の道できみは冷たくなっていたね。
 走っている姿のまま、頭だけが無残にくぼんでいた。
 あまりのことに何にも考えられなくなって、きみを抱きかかえて家に駆け戻ったよ。
 お父さんがきみのなきがらを土に返してくれた。

 きみのなきがらに会えなければ、私はまだきみが帰ってくるのを待ってたかもしれない。
 でも、お母さんに言われたよ。
 「柴ちゃんはあなたに見つけて欲しかったんだよ」って。

 きみがもう帰ってこないことを私は知っている。
 でも、きみのことは忘れない。
 今でもほら、ちょっぴり涙がでるけれど。
 きみがいてくれた日々は、確かに幸せだったんだから。

 何年たってもきみを思い出すと泣くけれど、でも安心して見守っていてほしい。
 きみはいつまでも私の大切な思い出だから。

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