操作盤
舞台には吊り物や迫り(せり)など、さまざまな舞台機構があります。その中で、電動で動く物を操作するのが「操作盤」の役目です。
電動で動く舞台機構の代表的な物は、緞帳、スクリーン、反響板、オーケストラピットなどです。
この様に電動の舞台機構は、「定速運動が必要なもの」や「一定のセット位置が決まっている」「重量があり、手動では操作が不可能」と言う物がほとんどです。
小屋によっては、吊り物バトンなども電動の場合がありますが、美術バトンに関しては手動の方が使いやすいのではないかと思います。(詳しくは「吊り物装置」のコーナーをご覧ください。)
電動の舞台機構は、電動であるからには操作するためになにがしかのスイッチが必要です。そのスイッチをまとめ上げた物が「操作盤」です。
操作盤はほとんどの場合、舞台の上手もしくは下手の舞台袖にあります。綱元側にあるのが理想的ですが、ホールの構造上、そうではない場合もあります。
「スイッチ」にはいろいろな形式がありますが、この写真の操作盤の場合は「押しボタン方式」です。押しボタン方式の他には「タッチパネル方式」などがあります。
この写真の操作盤は古い形式で、「UP」「DOWN」「停止」の3つのボタンで舞台機構を操作する「3ボタン方式」です。この方式は、UPもしくはDOWNのボタンを押すと、停止ボタンを押すまでその機構は動き続けます。
この方式は、便利なようでやや危険ともいえます。
なぜか?というと、もしボタンを押したままオペレーターが操作盤を離れてしまっても機構は動き続け、危険が迫ってもすぐに停止できないからです。
もちろん、そんなオペレーターいませんが(常に停止ボタンに指をかけている)、このような装置には、二重三重の安全対策が必要です。そのため最近では、UPなりDOWNなりのボタンを押し続けている間だけ機構が動く「2ボタン方式」になっています。操作する手を離しさえすれば機構は停止するので、停止ボタンを押さなければ停止しない3ボタン方式よりは安全といえます。
さらに、操作盤全体の電源を管理する「操作主幹」のON/OFFスイッチとそのキー、機構ごとのマスタースイッチがついていると理想的です。
つまり電動機構を操作するためには、操作主幹のキーをひねり操作主幹のONボタンを押し、さらに機構ごとのマスタースイッチをONにしたうえで機構を動かすと言うことです。操作が終われば、マスタースイッチをOFFにし、さらに操作主幹をOFFにし、キーを抜いておけば万全です。
また、舞台機構には小屋ごとの「決まり」があります。特に電動の物は手引きと違い、異常時の感触が手に直接伝わらないため、異常が生じていてもそのまま動かし続けてしまう危険があります。これはその小屋の機構を熟知していないと、その危険度が遙かに増大します。反響板を組み立てる手順や異常音の聞き分けなど、小屋付きでなければなかなかむずかしいことです。
そのため、ほとんどの小屋では、操作盤は小屋付き以外は操作してはいけないことになっています。
どんなに経験を積んだ舞台監督さんでも、電動機構に関しては緞帳の上げ下げ一つから小屋付きにキューを出して行っています。
電動機構の上限・下限を「リミット」と言いますが、小屋によってはそのリミット位置をずらし、その位置を簡単にメモリーできる場合があります。特にサスペンションライトのバトンが電動の場合には非常に便利なのですが、この機構がその小屋にあるかどうかを聞くとき、「リミットありますか?」と言われることが多いのです。が、「リミット」自体はどんな小屋だろうが、電動物には必ずあります。要はそれが可変式かどうかなのですが、私も舞台担当になりたての頃そのことが分からず、可変式リミットではないのに「リミットあります。」と答えたところが意味が違い、恥ずかしい思いをしたことがあります。
電動機構のほとんどは、ある意味で「危険の固まり」です。遊園地などの遊具と違い、不特定多数を想定した安全機構はありません。ごく限られたオペレーターが限られた条件の下で操作するからです。そのため電動機構を操作するときは、操作盤オペレーターの他にその機構を直接監視する係員が必要です。前述のように操作盤は舞台袖にあるために、操作盤の位置からは必ずしも舞台全体の様子を把握することができません。特に袖幕や反響板に遮られているときなどは、何も見えないに等しいのです。このような時には操作盤の位置と視点の違う場所で機構の監視をすることが必要です。特にオーケストラピットなどの「迫り」は大変危険です。そのような機構が動いているときには、なるべくオペレーターなどに話しかけないでいただくとありがたいです。異常音や、監視係員の「STOP!」の声を聞き逃してしまうかも知れないからです。ご協力お願いします。
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