003.ゴミ〜終わりなき闘い
まずは、2枚の写真をご覧いただきたい。
RAWで撮影し、まったく同じパラメータでjpegにした写真だが、右のものには、空中にまぁるく黒っぽい染みが浮いている。ご覧のモニターが汚れているわけではない、それが証拠に左のものはきれいだし、ブラウザをぐりぐりすれば、染みは画像について回って動く。
これがデジタル一眼レフの宿命、"ローパスフィルタについたゴミ"の画像である。
一眼レフカメラは、レンズが交換できる...で、交換時に、カメラ内部にゴミホコリが入りやすい。おまけにデジタル一眼となると、フィルムと違って感光部分が固定されているため、一度付いたゴミはそのままとどまり、以降の写真にすべてオノレの影を写しこむことになる...
というのは、ものすごく駆け足のおさらい。
ゴミ問題一般について、暇人閑居日誌さんのデジタル一眼レフ イメージセンサー 湿式クリーニング完了という記事が、実に要領よくわかりやすく、写真満載でしかも簡潔に、まとめておられる。文中にリンクのある姉妹記事と並んで、一読をお薦めする。
かように避けがたいゴミ問題であるわけだが、私の場合、これまで自分でローパスを拭いたことは、ない。D70を使い始めて1年半のあまり、二度ほど新宿SCのお世話にはなったが、自分ではブロワ清掃のみで済ませている。
購入直後、わくわきどきどきの初撮影からしてゴミがついており、なにも初回からゴミ問題を突きつけられなくてもよさそうなもんだとぼやいたわけだが。
(初撮影画像。カメラの時計も合わせていない...)
2005年10月の渡米にあたり、気軽にSCに持ち込んで拭いてもらうというわけにいかなくなるので、クリーニングキットプロを購入、持参している。
けれども使っているのはその中のブロワ(これは素材吟味の優れものだそうだ)のみで、無水エタノールすらまだ買っていない状態である。上記の暇人閑居日誌さんの記事を読んでおれば、高い金を払ってNikonのキットを買うことはしなかっただろうけれど、なにしろ今のところ、ブロワを吹くだけで済んでいるのはありがたい。撮影スタイルや枚数からすれば、ゴミとの闘いはごく軽い段階だといえよう。ならばこんな記事を書く必要もない、と思われようけれども...
もう一度、上の2枚の写真をご覧いただきたい。ゴミ以外は非常に似通ったカットであることにお気づきであろう。実際、右のカットがややブレている他は、そのままぴたりと重なりそうである。
さらにExif情報をご覧いただければわかるが、撮影日時は双方とも 2005:12:24 07:01:07 であり、秒単位まで同じ。
実はこの2枚は、ブレ防止で連写した連続カットなのである。年末12月24日夜明け、寒くて暗かったのだ。ISO250でSS1/10という、ぎりぎりまで妥協を排したセッティングで、しかも相変わらず三脚ないから手持ちである。ここは当然、数枚連写で少しでもブレのないものを得ようと...
その一瞬のカットの隙間でゴミがつこうとは、さすがに思いもしなかった。珍しいから、いつか光画部ができたらネタにしてやろうと取っておいたのである。
つまり、いかに撮影事前にゴミを確認/掃除しようが、撮影中のレンズ交換を自粛しようが、ゴミを完全に避けられるわけではないという実例なのである。
当然の話で、レンズ交換でゴミが入るかもしれないけれども、そのゴミがすなわちすぐに、撮像素子にくっつくわけでも、ない。ゴミはカメラ内部のどこやらに居座っていて、ある日あるときなにかの拍子(連写の最中についてしまうなど、なにかの拍子以外になんといえばいいのか)に、ローパスフィルタについてしまう、のである。
もちろん、事前確認は重要である...撮影から戻って、最初の一コマからでっかいゴミがついていたというのでは、いいわけのしようもない(もちろん、経験あり)。私はたいてい、PCのモニタに真っ白画面を表示して、それを撮影している。マニュアルフォーカス無限遠でできるだけ絞り込んで、は、もはや常識。
カメラバッグには当然ブロワが入りっぱなしなので、なんなら現場でも逐次確認し、ブロワを吹く。実録では雲ひとつない青空を撮影、背面液晶拡大表示で、気になるゴミがないことを確認した(そのあとダストオフデータの取得までしているのは、単なるモノのついでである)。屋外でミラーアップしてブロワを吹くなど愚の骨頂と思われようけれども、なにも砂漠の真ん中で嵐の最中にやるわけではなく、要は環境を読めばいい話である...といいつつ、さすがに滅多にはやらない。
それでも上の例のごとく、完璧はありえない。ならば最終的には、ゴミが写りこんでしまった画像をどうするか、という話になってくる。
Nikon Captureにはよく考えられた機能がついていて、写りこんだゴミを消してくれる。イメージダストオフという名のこの機能は、カメラのメニューにしたがって白いものを写すと、ゴミ写り込みのデータが取得できるというものである。そのデータがあれば、ゴミが写っている写真に対して、データから差し引きしてやることで、みごとゴミが消える。
制限としては、RAWで撮影された画像にしか適用できない...jpegのみの撮影では、これは使えない。私は一昨年の12月以来RAWでしか撮らないので、この点は問題ない。
問題は...当たり前のことなのだけれども..."撮影時とゴミデータ取得時で、同じゴミが同じところについていないと意味がない"ことである。
たとえばワークフローとして、撮影から帰ってきた、CFのファイルをPCにコピーしながら、機材の手入れをする、ああローパスにもブロワ吹いとくか、しゅっ...
これでもう、NG。画像にゴミが写り込んでいたとしても、そのゴミはもう、カメラからは掃除されてしまった。ゴミを消し去るためのデータ取得ができないのである。
すべての画像にゴミがないことを確認するまで、機材の手入れを我慢する...あるいは、必要もないのにやたらにブロワを吹かない(これは実は、別の意味でも正解なのだけれども)としてもやはり、ゴミデータの取得は確実ではない。なぜなら最初の写真のように、ゴミは動くからである。
撮像素子は帯電しているので、一度付いたゴミは動きにくい...そのとおりだろうけれど、"にくい"のであって、動かないわけではない。実際、一日の撮影の中で、いつの間にかゴミが出ていつの間にか消えているということは、なんどか経験している。
さらに、ゴミを検出する閾値、元画像との兼ね合いといった問題もある...となると、Nikon Captureのイメージダストオフ機能は、はまれば有効だけれども、なかなか当てにはしづらい。それだけのゴミが付いてしかも付きっぱなしということはむしろ、相応に不精で相当に幸運な場合だくらいに考えておいたほうが安全だろう、と私は思っている。
では。...では、となれば、もはやお約束、Photoshopの出番である。
あの手のゴミが目立つのは、たいていは一様の...空とか雲とか水面とか、なにせ変化の乏しいところである。ならば、ゴミの隣のあたりをスタンプツールでひょいぺたっとしてしまえば、たちどころにみごとに消える。正直、Nikon Captureでダストオフデータ取得して、ちまちま演算するのを待って、挙句ゴミは消えませんでしたという思いをするくらいなら、フォトショでさくっと処理してしまったほうがなんぼか楽、である。
ただし、RAWファイルの扱いという点では、Nikon Captureが格段によい...編集し直しが自由自在で撮影情報がすべて残るというのは、デジタルデータを扱うメリットをとことん感じさせてくれる、大事なポイントなのである。Photoshopでは、汎用性および自由度と引き換えに、このあたりは一歩譲る。
だから、この5月発売予定のNikon Capture NXに、スタンプツールが付いていてほしかったなぁ、と思うのである。どうも、イメージダストオフがあるからいいでしょ、的なにおいを感じるのだけれども、前述のようにそれでは心許ないのだ。
スペックに出ていないだけで、実はそれ相当の機能はさくっと入っていそうな、気もしているのだけれども...正直いまのところ、ゴミ消しが楽になるんでなければ、NXを購入する意義もないように感じている。このあたり、実際の製品が出てから情報収集して、というお決まりの話。
ことほど左様に、ゴミ問題は厄介なのである...みんなどこかで少しずつ我慢しながら、うまく付き合うポイントを探りつつやっているというところか。
そうはいっても、ゴミが付かないに越したことはないわけで、そこはやはり普段の掃除。やたらにミラーアップするのではなく、マウント周りやレンズ後ろ玉あるいはリヤキャップに至るまで、機材周りの埃はできるだけ払い飛ばす、この習慣だけでずいぶんと、ゴミの付く頻度は下がるはずである。
苦労して撮ってきた写真にぼかっとゴミが写っていたときのショックというのは、まぁストレートに、もう写真をやめたくなるくらいなものである。上のサンプルはまだ夜明け時、これ以降2時間ほどで撮った写真に、全部ゴミが付いていた...こればかりはバッチ処理で流すわけにもいかず、泣きながらスタンプしまくったのだ。
それを思えば、いかな生来の不精を自認する私でも、こまめに掃除するのである。さぁ本日も、リアキャップにブロワ。
最後に。ローパスのゴミの話をしておいてオリンパスに触れないのはあまりに不自然なので。
数あるカメラメーカの中で、唯一ローパスゴミ問題に真正面から取り組んだオリンパスは、やはり目の付け所が違う。これまで長々書き連ねてきたことどもに、ほとんど無縁でいられるオリンパスユーザは、正直素直にうらやましい。比べても意味のないことながら、光学手ブレ補正よりもよほど、本質的な問題だと思う。
出来得ればすべてのデジタル一眼レフカメラがゴミ落とし機能を備えて欲しい、のだけれど...フォーサーズ陣営の盟友である松下電器にしても、初のデジタル一眼レフDMC-L1でゴミ落としはつけていないわけで、まぁそりゃぁオリの門外不出ってのが当たり前ではあるわいな...
残念。でもきっと、いつの日にか。
(2006/03/03)