よろず部屋 品書きへ


3.呑んでる場合じゃない

 酒が好きだ。

 日本酒でもビールでもアイリッシュでもジンでもワインでもスコッチでもバーボンでも焼酎でもウォッカでもなんでも呑む。好ききらいを言うならこの中で多少の順位はあるけれども基本的にどの酒もそれなりに好きであって、どれが欠けても相当に淋しい思いをすることになるだろう。

 これだけ呑めば失敗も数限りなくあり、大体、店を一歩出ると自分がいくら払ったか覚えていないというのは殆どデフォである。もちろん直前に話した内容など記憶にありようもない。一番悲惨だったのは、中央線に乗り込んで目が覚めたら午前3時で甲府駅にいたというやつだろうか。しかも2月の冷え込みの中で。この時は缶コーヒー複数本で暖をとりながら始発までひたすら町を徘徊したのだった。

 まあそれでも、人様にからみまくってご迷惑をおかけするとか刃傷沙汰になるとかというところまでは行かずに済んでいる。周囲が私の酔っぱらいぶりを今のところ黙認してくれているからこそ、かもしれないが、とにかく事件に至ったことはない。ついでながら自分が重傷をおったということもない(軽傷は限りなくあり)。

 という呑みっぷりを続けていると、"呑みながらできることなら呑みながら済ます"ようになる。相当厄介な技術解説書でもメタフィクションばりばりの実験小説でも、呑みながら力業で読んでしまう。この場合さすがに仲間あるいは同僚と一緒というわけにはいかず一人でゆっくり(比較的)呑むわけだが、なにしろ"まず呑む"という形がデフォになる。それでも、読んだことはきちんと頭に残っているし、いい小説を読んだ時のカタルシスも得られる。行きつけの呑み屋では、"話し相手が特にいない時あるいは読みたい気分のときはひたすら読む"ということを了承してもらっていたりもする。さらに付け加えるなら、"呑みながら聴く"というのはこれは実は無上の快感であったりもする。

 だがしかし。

 やはり世の中そんなに甘いもんではない。"呑みながら書く"というのは実にやばい行為である。それがウレシハズカシ恋文だというならまあ当人同士がじゃれあっていればいいことなのでなんの不都合もないが、通信/ネットとなると話が違う。私は@Niftyにかなり多く発言している方だと思うが(最近はFPDAJのみだが以前は他の部屋でActiveだった)、呑んで書いた自分の発言というのは大抵、読み返すと愕然とする。愕然ならまだしもだが、時として慄然とする。

 要するに呑みながらモノを読んでいる時だってやはりまともではないわけで、ただそれが自分の頭の中で完結しているから平気な顔をしていられるだけの話である。ネット上で人様の話にresをつけるのに、傍若無人問答無用鬼悪魔な物言いをしゃらっとupしてしまえるあたり、酔っぱらいというのは実に始末におえない。何度かそういう経験をして、自分の"酒の上での失敗"というのはまずもってはこれだなと思い至って以来、とにかく酒を呑みながら公開するモノを書くことはできる限り避けようとしてきた。

 このサイトを開設すると同時に駄文をいくつか載せたきりではや3ヶ月、要はずっと呑みまくっていたわけである。

 まともな話では、サイトの方向について迷っていたのも確かだ。お役立ちニュースサイトを目指すのか文章系高クォリティサイトを志向するのかカルト的ポータルサイトを狙うのかあるいはもう日記公開型感情たれ流しサイトでよしとするのか。

 もともと大した哲学を持ってはじめたわけではなく、最終的な背中押しとしては単にザウポケOFFレポートを公開したかっただけという成立過程であれば、"この先のスタイル"を考えた時に、周囲を見まわしてはたと思いとどまってしまうのもやむを得なかったのだろう。かてて加えて最近では"つぶやき系"なる新派も定義され、ますます自分のスタイルに疑問を持ってしまっていた。

 というのを口実に、"呑みながら書いちゃいかん"というのを後ろ楯に、このあたりの方々からの無言の励ましにも関らず、ひたすら呑みまくって更新はさぼりまくったのであった。えらく頻繁に更新できる人(例えばこの方)というのはきっと普段は呑まないんだろうなあんまり、要するに私のようなノンベはこういうことに手を出すべきじゃないのよな、とまで考えていたのである。本当に。呑む/呑まないで話をすませようとするあたり、我ながら相当にいじましい。夏休みの宿題をやっていないことに無理やり理由をくっつけるようなものである。

 この状況に、本日午前3時に受信した一通のメールが活を入れてくれた。自称「"ザウルスノタマゴ"のオマケ君のおまけのちぴ」さんからの激励メールで、私の"配色"と題した駄文に感想をくださったのだが、いやもう過分なお言葉で、感謝の言葉もない。こともあろうにあのちぴさんに自分のサイトの色合いを気に入っていただけるとは思ってもいなかった。加えて駄文自体にもちらりとお誉めをいただいて、午前3時だというのに、私はすっかり元気になってしまったのである。

 "サイトの方向"という問題にもふんぎりがついた。要するに初志のまま、雑感部屋で行けばいいのだ。暖めているネタは実はいくつかある。これらを納得できるまで書込めたら順次上げて行けばいいだけの話。なんとかベクトルを定義しようとしたところにそもそも無理があったようだ。どうせ好きでやるんだし。というわけで、ぼちぼち腰を上げることにした。

 ところでこれを書いている現在、実は呑んでいる。でもまあ、仕上げるまでにエビスビール350mlを2杯だけである。これくらいは気付け薬ということで、なんとか、ご勘弁、いただきたい。

(2000/09/21)