セミオートマ試乗記
'01/10/11


何かと話題のセミオートマ
…と、表現するべきなのでしょうか?
要するに、オートマ(AT)でありながら、強制的にシフトアップ、シフトダウンできる、あれですよ。
具体的に、シフトレバー周りの配置を説明しますと…

一般的な3速AT 5速もしくは6速セミオートマ
もう説明しなくても解りますよね。上からパーキング、バック、ニュートラル、ドライブ、2速、1速。
Dレンジで3速まで自動的にシフトアップ。
これに、レバーに付いたボタンでオーバードライブON(結局4速か)になります。

+

←→

M

-

シフトレバーを右側にスライドさせると、マニュアル的(上に一つ押すと1速上がり、下に一つ押すと1速下がる)に使える。
このアップダウンをハンドルに付いたボタンで行うものもある

これだけを見ると、大変合理的に思えますよね?


僕らがオートマを使うとき
オートマの最大の難点は…

  1. Dレンジで使うと、アクセルを緩めたときにシフトアップしてしまう。
    例えば、カーブの入り口でブレーキを踏み、アクセルを緩めると不必要にシフトアップするんです。そのために、強制的に3→2速へとシフトするのですが…。
  2. シフトダウンの時の、タイムラグが大きい。
  3. シフトのつなぎめで、エンジン回転が車速と合わない。

等です。シフトアップのときは殆ど問題が無く、むしろオートマの方がよろしいかと思います。
そのために、どうするかというと、

  1. もちろん、左足ブレーキング
  2. 車速が落ちて、D→2速へシフトしようかなって思う瞬間に、右足でアクセルをポンと踏み、エンジン回転数を上げておく。
  3. 2速へ入る。
  4. スムーズなシフトと、タイムラグなしに立ち上がれる。

実際は、微妙なタイミングなので、表現するのが難しいのですが。


じゃぁ、新しいセミオートマはどうなのか
ま、セミオートマと言っても、実際はシフトの上限を制限しているに過ぎません。
例えば、見かけ上1速→2速とシフトアップしても、それはシフトの上限を1速にあるいは2速に制限しているだけです。
N産Sラインに試乗
新型のSライン3リッターに試乗してまいりました。
まぁ、加速はすごいし、ブレーキがまた良く効く!セダンとしては申し分ないですね。
しかしここでは肝心のセミオートマについて検証します。

例のMTモードでドライブします。
アップダウンのレバーの感触…なんか、やっぱりATレバーを動かしているような感触ですなぁ。
シフトアップ
もちろん、シフトアップは問題ないです。わざわざMTモードにする必要も無いでしょう。
しかし、MTモードに入っているのだから1速ずつシフトアップ…いやいや、そんな無駄なことをする必要はありません。
例えば、今2速だとして、2回シフトアップするとすると、シフトは4速になっている筈ですよね?
ところが、フル加速していると4速には入りません。表示は4速になっていますが、アクセルペダルの開度、エンジン回転数、負荷に応じて、3速でフル加速し、シフト点で4速へシフト、その後4速を維持…という具合です。
シフトダウン
………ATの強制シフトダウンとなんら変わりは無いじゃありませんか!タイムラグはあるし、エンジン回転数は合わないし。
これじゃぁ、前述のATドライブ法を取らなくてはいけませんね。

総合的に
やはりオートマはオートマ。セミオートというには程遠い。従来のオートマとの違いは、シフトの段数が多く、きめ細かくなっていること位でしょうか。
セミオートマが運転することの楽しさを感じさせてくれるオートマになるにはまだ時間が掛かりそうです。


本来のセミオートマ
この言葉は昔からあるものの、スポーティーな言葉として捉えだしたのは、やはりF1の影響です。なんとF1がセミオートマを採用しだしたからです。
最初はF1がセミオートマ?って思いました。しかしながら、その出来はすばらしく、F1のミッションとして十分(いや、今では殆どセミオートマですよね)です。

しかしながら、F1のセミオートマと市販車のセミオートマでは全く作りが違い、別のものと考えてよいでしょう。
市販車のオートマがトルクコンバーターという流体クラッチを使うのに対し、F1ではメカニカルなクラッチ。しかも電子制御でエンジン回転数も合わせ、シーケンシャルという予め次のギアを用意している(すなわち、シフトのタイムラグが殆ど無い)らしい、それはそれは自動車の技術の最先端を行っているのですから。

ですから、市販車のセミオートマでF1のセミオートマを想像しないほうが良いでしょう(誰も想像しないって)

市販車のセミオートマで優れているもの
No1=ポルシェのティプトロニック
No2=フェラーリのフェラーリマティック(だったかな?)
No3=アルファロメオのセレスピード
と言われています。この中でセレスピードはやはりオートマ的らしいですが、ポルシェのティプトロニックは群を抜いているそうです(ほぼF1のセミオートマに近いらしい)

私たちには縁の無い話ですが…


ノウハウの蓄積
どんな苦境にも、それに立ち向かっていけば素晴らしいものができる。
例えば、燃料噴射装置。
これもそもそもはレースに使われていたんです。市販車では排ガス規制の対策として導入された経緯があり、あまり良いイメージは無いのですが、大変合理的なシステムであるゆえレースに導入されていたのです。

合理的なシステム
本来エンジンは、スロットルバルブが無ければ最高回転数で回転しつづけるもので、それをスロットルバルブで制限している(つまり、回ろうとしているものの吸気を抑えている)ものです。
吸気マニホールド内の圧力は常に負圧ですが、『マニホールド無いの圧力>シリンダー内の圧力』であるとき混合気はシリンダー内に流れ込みます。
圧力の差が大きければ大きいほど流れ込みやすい状態と言えます。すなわち、シリンダー内の圧力は、スロットルバルブを閉じているときに最小で、マニホールド内の圧力は、スロットルバルブをフルに開けた瞬間が最大です。
この、フル加速状態の時に圧力差は最大になり、混合気が流れやすく、トルクが発生する→加速、ということになります。

反面、ガソリンは当然気化させなければならないのですが、ガソリンの液面に掛かる圧力が大きく、マニホールド内の圧力が低ければ気化しやすいのです。液面の圧力=大気圧だとすると、フル加速時にはマニホールド内の圧力が高めになっていますから、気化しにくいわけです。ガソリンの一部(揮発成分)は気化し、揮発し難い部分は液状となってシリンダー内に流れ込みます。
結果、薄い混合気となって、充填効率が高いにもかかわらず、トルクが得られないのです。
そのために、このフル加速時にSOLEX等では加速ポンプというものを介し、マニホールド内へガソリンを高圧で吹き込んでやります。ガソリンは高圧ですから、圧力差より、気化しやすく全体的に適度な混合比となります(厳密に言うと、適度な混合気+不揮発成分)キャブ時代にも燃料噴射装置の概念は生かされていたんですね。

と、いうことは大気圧に頼らず、ガソリンを高圧にしてそれをマニホールド内に噴射してやれば理想的な混合気が得られるのは誰の目にみても明らか。しかも不揮発成分などが生じにくく、燃費と排気ガスの状態も改善されるはずです。

それを市販車に導入するにあたって、最初はやはりキャブ仕様に比べ、性能が落ちていたように思います。しかしながら、現在ではむしろ、燃料噴射装置無くしては性能のいいエンジンが得られません。
ノウハウの蓄積によってどんなものでも良い物が開発されるのです。
FFだってそうでしょう?アレックス・イシゴニシス(ミニの開発者)が言ったように、世界の多くの車がFFを採用し、それも昔と違い癖の無い、良質のFF車になっています。


今のところ、やはりオートマはオートマ。マニュアルはマニュアル。ドライブ好きの人たちは、どうしてもマニュアル設定のある車を選ぶかもしれません。
わずか10%程のマニュアル車を製造していくのか、あるいはマニュアル好きの人を無視してオートマに走るのか。

マニュアル好きを無視して、単純なオートマ路線で行けば、多分そのメーカーはつぶれるかもしれません。
マニュアル好きを納得させるようなセミオートマ作り、これが最重要課題ではないでしょうか?

人間は、石油の最後の一滴を精製してガソリンにして、車に詰めて走らせる(ポルシェの技術者談)動物なのだから。

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