妻の退院
あわただしく、妻の退院の時期が来た。本来ならこの時期、母親は子どもに会いに行って母乳を与える。
実際の授乳をしないまま、授乳の練習や入浴の練習だけで母親だけ退院すると言う事になる。
これもかわいそうな話だ。
妻を連れ帰る車の中で、妻がボソッと言った。
『あたしを怨んでるでしょう?』と。私は『いや、感謝している』と返した。
慰めではなく、それが本当の気持ちだった。子どもの為にハラハラさせられる事でさえ私にとって幸福だったのである。
(妻はこの時の私の言葉を覚えていないらしいが)
これから毎日、母乳の搾乳と冷凍が繰り返されることになる。
母乳を絞り、無菌パックに保存冷凍した後、通院の際にNICUへもっていくのだ。
病院で解凍され新生児に与えられる。
子どもにおっぱいを吸われないお母さん達はどうしても母乳の出る量が少なくなるらしい。これはどうしようもない事。
そこで、おっぱいが出なくなった時の為”もらい乳”をして良いか、あるいは十分出る場合は”あげ乳”をして良いかのアンケートが取られる。
もちろん即時了承のサインをした。
妻は、母乳マッサージやカウンセリングなどを受けながら少しでも長く母乳が出るように努めた。私がお乳がこぼれない様母乳パックを保持し、妻がお乳を搾り出すのだ。
しかし、この作業も長くは続かなかった。子どもにお乳を吸われないと言う事がホルモンに影響し、出難くなるらしい。
1ヶ月ほど経った時とうとうお乳が出なくなった。この時看護婦さん達は『しようがないね。でも良く出た方よ』と慰めてくれた。
そう言ってくれた事で少しは気持ちが楽になったようである。
娘は母乳の感触を知らない
いまでも母親のおっぱいには全く興味を示さない。
幸いな事に娘が3歳になった時、孫が生まれ息子夫婦が同居する事によって授乳を見る事が出来た。この授乳を見て多小おっぱいに興味を示したようである。
ただ、娘はおっぱいを吸う事を恥ずかしがっている様子。妻はおっぱいを吸わせようと乳を放り出し、口に押し付ける。
恥ずかしいけど吸ってみたいと言う興味から吸っては見るものの、吸い方が解らず噛んでしまうようだ。
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