経過


経過は順調?

いえいえ、何分小さかったもので…。
生まれた時には『未だ内臓が出来ていない』と言う先生のお話。つまり栄養はすべて点滴で供給されます。
この、内臓が未だ出来ていない、と言う言葉が私たちにはピンと来なかった。が、そういう事なのである。

そして常に検査検査で、血液を取られる。検査用の血液の量なんて知れているようだが、たかだか1000gの赤ちゃんにとっては大変なストレス。すぐに輸血が必要となる。
輸血の際には病院から確認の電話が入るが、この電話に私たちはいちいちびびらなければならなかった。
又、輸血には常に感染の危険が付きまとう。当然検査された血液が使用されるのだが、100%無菌ではない。
100%無菌の血液とは、臓器移植や白血病などの治療に使われる希少な血液。
通常の輸血用の血液には、大人が感染しても問題ない(大方の大人はこれらのウィルスと共存しながら生きていると言う)程度のウィルスは含まれている可能性があると言う。

大人にとって問題ないウィルスでも、新生児達にとっては重大なストレスとなる。しかも、緊急を要する輸血ではこれらの血液を輸血せざるを得ないのである。
参考の為に例を挙げると、サイトメガロウィルスと言うのがその一種。我娘も輸血を頻繁に繰り返す内にこのウィルスに感染してしまい、苦しい時期があった。
『肝臓がウィルスに感染して…』と言う言葉を聞いて、もしかしたら肝臓が駄目になるかもしれない、そうしたら…生体肝移植?
数千万円と言う費用を捻出する為に街頭募金を募る私の姿が脳裏に浮かんだものでした。

ちなみに、輸血と言えばあの輸血拒否で知られるエホバの証人を思い出す。偶然とは面白いもので、こういう時期、エホバの証人のちらしやらをよく見かけたり手渡されたりする。そこにはやはりサイトメガロウィルスだの何だのの事が書いてある。
しかし、死なすわけには行かないのだ。

話は横道にそれたが、採血、輸血の繰り返しで娘の手の甲や足には無数の針の跡が今でも残っている。
他人が『このぶつぶつ何?』と聞くと、得意げに点滴や輸血の話をしてあげるんです。


妻の退院

あわただしく、妻の退院の時期が来た。本来ならこの時期、母親は子どもに会いに行って母乳を与える。
実際の授乳をしないまま、授乳の練習や入浴の練習だけで母親だけ退院すると言う事になる。
これもかわいそうな話だ。
妻を連れ帰る車の中で、妻がボソッと言った。
『あたしを怨んでるでしょう?』と。私は『いや、感謝している』と返した。
慰めではなく、それが本当の気持ちだった。子どもの為にハラハラさせられる事でさえ私にとって幸福だったのである。
(妻はこの時の私の言葉を覚えていないらしいが)

これから毎日、母乳の搾乳と冷凍が繰り返されることになる。
母乳を絞り、無菌パックに保存冷凍した後、通院の際にNICUへもっていくのだ。
病院で解凍され新生児に与えられる。
子どもにおっぱいを吸われないお母さん達はどうしても母乳の出る量が少なくなるらしい。これはどうしようもない事。
そこで、おっぱいが出なくなった時の為”もらい乳”をして良いか、あるいは十分出る場合は”あげ乳”をして良いかのアンケートが取られる。
もちろん即時了承のサインをした。
妻は、母乳マッサージやカウンセリングなどを受けながら少しでも長く母乳が出るように努めた。私がお乳がこぼれない様母乳パックを保持し、妻がお乳を搾り出すのだ。

しかし、この作業も長くは続かなかった。子どもにお乳を吸われないと言う事がホルモンに影響し、出難くなるらしい。
1ヶ月ほど経った時とうとうお乳が出なくなった。この時看護婦さん達は『しようがないね。でも良く出た方よ』と慰めてくれた。
そう言ってくれた事で少しは気持ちが楽になったようである。




娘は母乳の感触を知らない

いまでも母親のおっぱいには全く興味を示さない。
幸いな事に娘が3歳になった時、孫が生まれ息子夫婦が同居する事によって授乳を見る事が出来た。この授乳を見て多小おっぱいに興味を示したようである。
ただ、娘はおっぱいを吸う事を恥ずかしがっている様子。妻はおっぱいを吸わせようと乳を放り出し、口に押し付ける。
恥ずかしいけど吸ってみたいと言う興味から吸っては見るものの、吸い方が解らず噛んでしまうようだ。

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