916gで出産


いよいよ陣痛始まる

1998年10月28日 午前6時頃
病院から電話が入る
『陣痛が始まりましたから、8時頃来てください』と。
いよいよかと思い支度を始める。8時くらいに病院に着く。
今でも、電話を入れてすぐ来なかった事が、妻の語り種であり、いつもその事で責められる。

先日妻を見舞って帰った後、妻はなんだか変だと感じてという。
陣痛は夜0時くらいに始まったらしく、朝になって至急来るよう連絡してと、妻が看護婦さんにお願いしたらしい。
当然看護婦さんは、出産時刻の目安を心得ているから、その頃を見計らって8時と言ってくれたのに。
事実、出産はAM11:00頃となった。


誕生

いよいよ出産となった。
分娩室の前で、やる事なく待っていた私に看護婦さんが生まれましたよ、と報告してくれた。
報告してくれてもどうして良いか解らず、その辺をうろうろ、うろうろ。

すると、分娩室から、娘が人工保育器ごと運ばれてきた。
NCIU(新生児集中治療室)の医師に付き添われて。
片方で我娘に目をやり、片方で先生の話を聞く。これからこの先生のお世話になるのだ。

『赤ちゃん916gですが、小さい声ですがちゃんと産声上げましたよ。』『これから…』う〜ん、それ以上あまり覚えていない。
とにかく、片手で酸素を送り込みながらの話だったので、ここで長話をしてはいけないなんていう気持ちもあったのでしょう。

かくして、妻にとっては第2子ではあるものの45歳と言う高齢出産。私にとっては当時37歳で初めての子供が誕生したのである。

初対面の感想

新生児の姿は他人の子供のをガラス越しに見ていた。2500gくらいの子であっても、小さいなと感じていたのだが、916gとなると…。小さい。
今でこそ言えるが、田舎の道端で見かける牛蛙程度の大きさである。
娘は見えない目でじっと私を見ていた。
パパ、菜々実はここよ。ちゃんと見て。』としっかり自己主張しているようであった。
確かにそう思えたのである。又、そう思えなかったら私はしっかりする事が出来なかったかもしれない。
書きながら、涙が出てくるね、この一節は。

おかげで、私は悲観する事なく立ち向かえたのである。

(最近、娘が片言を話すようになって、娘に問う。『ななちゃん、分娩室から出てくる時、パパ見てたなあ。覚えてる?』すると『うん、おぼえてゆ』と返ってくる。
ほんまかいな。)

いよいよ、集中治療室での8ヶ月の入院となるのである。


先生のお話

出産ご2時間ぐらい経って、NICUの受け入れが整うと、私だけ中に通された。
そこで、先生の話を聞き、つらい事も聞きました。

当面は救急救命という観点で治療を施します(それって、危ないって事かな)。
とにかく最初の2〜3日をクリアできる事が目標(???)。
1週間、2週間、1ヶ月と、危険性が少なくなります(そりゃそうだとは思うけど)。
超未熟児の場合、500g程度の場合50%の生存率で、1000g以下でも数パーセントが死亡。生存しても、数割が何らかの障害をもつ可能性があります。
血液の入れ替えなどが必要となる事があり、血管が細いので指先が死んでしまう(壊疽)してしまうこともまれにはあります。
輸血が必要となり…。
なんやなんやこれは。悲観的な事ばかりやないか。こんな事妻には聞かせられんなあ。

そりゃ、楽観的な事ばかりは医者として言えないでしょうが。でもこんだけ悲観的な事をいわれても不思議と私には大丈夫やろ、としか捉えられないのでありました。

数日後、妻も入院はしているものの元気になった為、妻を連れて娘に会いに行く事にした。
妻は最初はびびってしまい、小さな我娘を見るのが恐い、とぐずっていた。
説得して連れていったのである。
両親を前にした先生の話は先日よりややトーンダウンしたもので、母親に配慮してのことだろう。


NICU

そこは別世界。入室の際、インタホンで入室の連絡をし消毒と医療服が義務づけられる。
何かのドラマで祖母が入室するのをやっていたが、入室できるのは両親だけ。親族といえども子供や祖父、祖母は入室できない。
その子に限らず、他の子供が感染の危機にさらされるからである。
私の両親も、孫が入院中、もうたまらないから会いに行くと言い出したが、NCIUには入れないから、と説得した。息子夫婦の顔を見てもしょうがないでしょう。
NCIUの門前で、入院中の子供の祖父祖母が入室を拒否されている姿を何度か見た。

私たちにすれば、感染を考えれば当然の事と思っている。

入室すると、人工呼吸器が数十台並び、比較的静かな中にアラーム音が響き渡る。
私たちが最初に入った時にはこのアラーム音にびびってしまった。
何か、不具合が生じたんではないか。その疑問も数回訪れると解消された。
大事に至るアラーム音ではない事が理解出来たからである。
しかし、先生と看護婦さんの処置の会話中にはびびる物がある。例えば『おいおい、息しろ**ちゃん。パシパシ(お尻をたたく音です。実際には聞こえません)』等など。
でもこれはたいしたことはないようです。このNICUでこれくらいの事でびびっておってはいけません。

私たちの娘は数日後、NICUの中にあるナースセンターのすぐ横に(つまり、目が行き届くようにという意味)移されました。

ここに来る子は出世するんですよ、と言う看護婦さんの慰めと共に。


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