No.1

        1)ベトナムのバイオリニスト  
2)トイレの話   
       3)ホンダと神風ドライバー  
       4)ベトナムのマンパワー   


1)ベトナムのバイオリニスト
ベトナム人の芸術家はあまり日本人に知られている人はすくないですが、世界的に認められている人が結構いるようです。フランスに統治されていた時期が長いので、ホーチミン市の建物はフランスのアールヌーボー時代の美しい建物が多く残っていて、街全体が芸術家向きに出来ているのではないでしょうか。もちろん中国の時代の絵画や建物も伝統的に残されています。
そんなフランス時代の音楽堂でベトナムのオーケストラの演奏を聴く機会がありました。ベトナムの人々にはまだあまりクラシック音楽はなじみが薄いようで観客の5割方は外国人でした。オーケストラの演奏は、思っていたよりも上手な演奏を聴かせてくれました。良い楽器が無いせいか側鳴りばかりして、会場全体を包むあのオーケストラ特有のダイナミックな音響が聞けなかったことは少し残念です。
名前は忘れましたが、若いベトナム人のバイオリニストがチャイコフスキーコンクールで2位だか3位を取ったという話をベトナムのテレビで見ました。(ベトナム語のテレビだったので少し曖昧で申し訳ない)その演奏会の放映を見ましたが、これからのベトナムはこのような芸術の部門でも世界に認められていくのだなあ、と感心をしていました。
彼の父親もやはりオーケストラのバイオリニストだったそうです。当時も今も楽団員の給与は非常に安いので、みんなそれぞれ副業を持っています。彼の父親はタクシーの運転手だそうです。演奏会が終わると会場の裏から車を出してきて、会場に来ていたお客さんを乗せて商売にしたそうです。ベトナムはバイオリニストも合理的に出来ている国だなあと思いました。


2)トイレの話
ベトナムで初めてあった日本人同士でもすぐに盛り上がる話題にトイレの話があります。中国で川の上に竹が渡してあってその上でしたとか、インドネシアで海に杭が打ってあってその上にのっかて用を足したとか、何処の国でも面白い話があるもので、トイレの文化は奥が深い物だとつくづく思うのですが、ベトナムもまたしかりです。
ベトナムでの大衆用のトイレは、地方のレストランなどでよくお目にかかるのですが、四角い便器に日本の物のような穴があいていて、便器の中に足を置くような模様の入った、足場があります。但しそれが本当に足場なのかどうかはわかりませんのでうっかり足を乗せないようにして今まで使ってきました。大きな穴が奥の方に開いているのですが、その位置が日本の物とちょうど逆で、日本のように前に壁が付いていないので、私は未だにどちらが前なのか分かりません。時と場所に従って向こうを向いたりこちらを向いたりして適時使用しています。
田舎の村にあるオープンなレストランになると、トイレのデザインも革新的になります。2畳位の狭い部屋にとうとつに一つ穴が開いているだけになります。それも時々部屋の隅っこに開いている場合があります。小用の場合はそれでも、こんな物かと気にせずに使用できますが、そうでない場合は非常に困ったことになります。未だにドアを開けたとたんに前の人の物が置いたままになっていたという目にあったことがないので、なにか使用方法にこつがあるようです。
初めてフーコック島に行ったとき、タオジュ村でおなかの具合が悪くなりトイレを借りたいと申し出たところ、村はずれのトイレに連れていってくれました。四畳半ほどの広さにモルタルが敷いてあり椰子の葉で作った衝立が一枚ドンと立っているだけでした。やむなくこそこそと衝立の陰に隠れ用を足しました。用をたしている最中にざわざわするので何事かと振り向いて見たところ、鶏と豚が物欲しそうにしてたたずんでいます。なるほどこんな所でも自然の循環の法則を使って処理をしてしまうのかと、ベトナム人の優秀さに感心をさせられたひとときでした。(つまり、人が食べる→排泄する→家畜が食べる→人が家畜を食べる→繰り返すという自然の循環です)。その晩は村での歓迎会でしたが、もちろん美味しい鶏肉に舌づつみをうったのは言うまでもありません。


3)ホンダと神風ドライバー
初めてホンダドリームに乗ってサイゴンの道を走ったのは2年ほど前のことでした。ホンダドリームというと昔の人は4気筒750ccの日本の白バイを思い出すかもしれませんが、ここでいうのはタイ製の100ccホンダカブのことです。(東南アジア限定発売と思います)
こちらでは右側通行なので右折よりも左折に気をつけなければ等と緊張気味に走り出したのですが、どうしたことかベトナムでは左側通行するバイクがいます。危ないなあ、と思っていると乗用車がセンターラインをこえて追い越しをかけてきます。つまり、前からも横からも斜めからも車やバイクがおそってくることになります。大きな交差点での左折の時は気合いを入れてかなり前方から左側斜線に入り込んで、車の合間を縫うように左折するのがこつです。こんなに複雑でどうやって普通のベトナム人は運転できるのか聞いたところ、「前だけを見て走ること」がポイントだそうです。後ろからぶつけた場合はぶつけた車が全面的に悪いという約束になっているそうです。そういえば、どのバイクにもバックミラーが着いていません。初めは怖がって乗っていましたが、こつを飲み込んでからは随分と安全運転が出来るようになり、今まで事故にはあったことがありません。しかし、サイゴンでは毎日のように、事故でけがや死人が出ています。だから私はいつも20〜30kmのスピードしか出しません。
ところで、車を使って地方へ出張や遊びに出かけると、必ず1〜2回は事故を起こした車にお目にかかります。片側1車線の国道で、歩行者と自転車、オートバイに車がスピードをあげて通るわけですから、よほど気をつけて安全運転をしなければならないと思います。ところが、乗り合いバスも乗用車も時速80km以上も出して追い越し合いながら、飛ぶようにして走り抜けて行きます。サイゴンからフエ、ダナン、ハノイ等に行く長距離バスの時刻表はそのスピードに合わせて作られているようです。同様に他の車もドライバーの頭にある距離も、時速80kmで何時間かかるというのが基準のようです。昨年も外人旅行者が乗った車が死亡事故を起こしたそうです。私は車に乗ると必ずドライバーにゆっくり走るように指示しますが、「オーケー」と言うだけで相変わらずすごい早さでとばして行きます。初めはシートベルトなどをしっかりにぎって緊張して乗っているのですが、穴凹だらけの国道を走ってゆくので、がたがた揺れる車に最後には疲れてしまって、どうでもよくなりシートに寝転がってしまうのことが多いです。
ところで、長距離バスをたびたび見かけるときにいつも決まって思うことは「長時間のバスの旅で、トイレはどうしているのか」ということでした。ついこのあいだ、国道の側でそんなバスがなんでもない道の途中で止まっているのを見かけました。老若男女がぞろぞろと降りてきて草むらの向こうへ消えて行きました。瞬間的に「これはトイレ休憩に違いない」と確信しました。ベトナム人に聞いたところ「基本的にはバスは食事休憩しかしないが、ドライバーが行きたくなったら止まる」とのこと。老人の人はさぞ大変だろうななどと思いながら、ベトナムのバスの旅の別の側面を見た気がしました。


4)ベトナムのマンパワー
ホーチミン市のはずれにサイゴンプラスチックという国営会社があって、そこでFRPのボートを造ったことがあります。国営企業だけに細かい契約書を作成して双方でサインをしてから仕事にかかります。大変に急いでいたので2週間で作り上げるように交渉しました。初めは難しいと言っていましたが、最後には了承して契約書にもその内容を盛り込みました。
ベトナムでは何事も自分で確認しなくてなりませんので、一週間後に工場を訪れました。幾らベトナムでも少しくらいは作業が進んでいるだろうと思っていましたが、驚くべき事に全く手つかずの状態なのでした。頭に血が上った状態で副社長のオフィスを訪ねて怒鳴り込みました。彼は知らなかったと言い、書類が不備であったので彼の責任ではないといつもの様に責任逃れの話をするばかりです。ここで引き下がっては一生ベトナム人の言いなりになってしまうと、なかば強迫観念にかられて、日本語で大声で怒鳴りまくりました。とにかく通訳がいたのですが通訳できなかったに違いありません。気分がおさまるまで怒鳴りまくってからドアをけ飛ばしてその日は帰りました。
それから一週間して契約の日に工場を再び訪れました。驚くべき事に注文のボートが出来上がってそこにありました。こんな事はベトナムに来てから最初で最後の出来事です。
ここは安心するよりもまず、ベトナム式に自分で確認をすべきと思い、工場の前にある川にボートを浮かべてテストをする事にしました。ところで、この工場にはクレーンがありません。どうやって動かすのかと思ったら、近所の船着き場で働いている労働者40人ばかりを呼んできて人力で動かすのです。小型のボートですが80馬力のアウトボードエンジン付きでかなりの重量があるのですが、ベトナム人のちからは素晴らしく、あっという間に川まで運んでしまいました。サイゴン川の支流で快適なクルージングを楽しんだ後でようやく納得して副社長にサンキュウといいました。川に浮かんだボートを岸にあるトラックまで積んで労働者のチップは一人頭100円でした。このまま日本へ連れて帰りたくなるほど安い値段でした。






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