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| 輝く剣さん著 |
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デストニア帝国、某所。 薄暗い部屋に、人影が一つ。 紅いマントに、紅いマスク。皇帝直属の暗殺部隊、「レインブラッド」である。 彼らは、その名の通り戦場に血の雨を降らせる。 その残忍ぶりは、とても人間とは思えないほどで、彼らを知る一部の人間の間で は「レインブラッドは、魔族なのでは?」と、真しやかな噂が流れている。 そんな、レインブラットを束ねているのが、今、部屋にいる”キング"である。 キングは部屋の窓から外を眺めていた。 元々、ロクな景色の見える部屋ではないが、今日は雨が降っているということも あり、それこそ、闇が広がるばかりであった。 「・・・・・・」 キングは、無言で窓の外を眺め続けている。 その時、部屋のドアが開いた。 「ここに居たか、キング」 レインブラッド”ナイト”だ。 「・・・この部屋には我々以外、誰もいないぞ」 キングは、ナイトの顔も見ずに言った。 「そうだったな・・・マイクル」 「ふっ・・・で、何の用だ、ウェイン?」 マイクル、ウェイン・・・すべては、この二人が自らの名を隠した日から、始ま った・・・ ーーーーーー20年前 デストニアのスラム街。弱肉強食が当たり前のこの街でマイクルとウェインは 育った。 二人は、常に行動を共にし、今まで生き抜いてきた。 様々な犯罪にも手を染めた。窃盗、強盗、時には誘拐などもした。すべては「生 き抜く」ために。 しかし、「殺人」だけは絶対にしない。それが、二人の約束であり、誇りでもあ った。 「今日の稼ぎは?ウェイン?」 「上々だ、マイクル」 ウェインはボロ袋から、「稼ぎ」を床にブチまけた。 ここは、スラムにある彼らの部屋である。 「と〜・・・15200、か。結構、持ってたんだな、あのオッサン」 ウェインが金貨を手に取って言った。 「ああ、でも、明日はもっと稼ぐぜ!」 マイクルは急に立ち上がると、握り拳で言った。 「なんだよ、何か情報をつかんだのか!?」 マイクルが、あまりに自信たっぷりに言ったので、ウェインも少し興奮気味に言 った。 「明日な、皇帝が街を見学しに来るらしいんだ、だから・・・」 「だから?」 「皇帝を誘拐しないか?」 「・・・・・・!?」 ウェインは絶句した。 デストニアの皇帝と言えば、泣く子も黙るほどの残忍さで知られる「狂皇」であ る。それを、誘拐するなんて!とても正気の人間の言う事とは思えない。 「冗談じゃない!本気か!?」 「当然。ここらで、ドーンと稼ごうぜ!」 まさか、相棒がここまでバカだったとは。ウェインは開いた口が塞がらなかった。 「もちろん、無策ではないさ」 マイクルは、ポンッとウェインの肩に手をのせた。 「・・・・・・?」 翌日、二人は建物の陰にいた。 マイクル策は、こうだ。 まず、「フリーズボール」を使い、皇帝をはじめ、廻りの衛兵の足を凍らせ動き を封じる。その後、ウェインの「ブレイズ」で、皇帝の足元だけを溶かし誘拐す る。 というものだ。 なんとも単純な策だが、マイクルが言うと、何故か成功しそうな気分になるから 不思議なものだ。 ウェインも今ではすっかり乗り気で、手に汗を握る程だった。 しばらくすると、少し遠くで歓声があがるのが聞こえた。 デストニア帝国皇帝、ドミネートがやってきたのだ。 歓声が近くなるにつれ、二人の緊張も高まる。 一歩、また一歩と近づいてく皇帝の一団。 二人は飛び出す時期を窺う。 自分の心臓の音が聞こえる・・・それは、緊張しているからか、それとも興奮し ているからか・・・ 皇帝が正面に来た、その時・・・! 「今だ!!」 二人はフリーズボールを投げると同時に、自らも飛び出した! 「な、なに事だ!?」 ざわめく衛兵、しかし、フリーズボールの効果により動くこともままならない。 さらに、地面が凍ることで蒸気もあがり、視界も最悪だった。 マイクルとウェインは、ことの成功を確信していた。 なぜなら・・・ 「スラムの小僧が何のつもりだ?」 マイクルは、すでにドミネートの喉元にナイフを突き付けていた。 「あなたを誘拐します、皇帝」 淡々と言うマイクル。 ウェインは、ブレイズを唱えはじめている。 「誘拐?そう簡単に出来るかな・・・?」 ドミネートには余裕がある。 「出来るさ、この状況なら・・・・・・」 マイクルは言葉を止めた。いや、止めざるを得なかった。 ウェイン、そして、自分の首筋に光るモノがあった。 「・・・・・・!」 気づかなかった。いつの間にか、マイクルたちの背後に人が立っていた。 しかし、衛兵ではない。こんな奴はいなかったハズだ。 紅いマントに、紅いマスク。 「キング、ナイト、この二人を連れて行け」 ドミネートが言った。 「殺らなくても、よいのですか?」 ”キング”と呼ばれた者が言った。 「よい、連れて行け」 「はっ・・・」 マイクル、ウェインは絶望していた。 自分たちに、もう未来はない、と。 どれ位の時間が経っただろう。それすらもわからない。 手足は鎖で拘束され、身動き一つとれない。気が狂いそうだ。 「コ・・・ロ・・・セ・・・」 そんな言葉が口から洩れる。 友は、ウェインはどうしただろう・・・。 ふと、ウェインの笑顔が頭に浮かんだ。 「ウェイン・・・スマナイ・・・」 マイクルは、自らの浅はかさを呪った。 と、その時、 「生きているか?小僧」 部屋に明かりがついた。そこに立っていたのは・・・ 「ドミネェートォォ!!!」 マイクルは叫んだ。 「そう熱くなるな、今日はキサマに話があって来たのだ」 「話すことなどない!殺すなら殺せ!」 「ふふ・・・まだ、吠える気力があるか。気に入った」 ドミネートは、まるで野犬をあやすかのように言った。 「拘束を解いてやる。ついてこい」 その瞬間、手足が解き放たれた。 ドミネートは、どんどん歩いていく。マイクルも、半信半疑でそのあとを追った。 しばらく行くと、広いホールに出た。 「ウ、ウェイン!」 そこにはウェインもいた。 「マイクル!よかった、無事だったか!」 二人は再会を喜びあった。 「では、早速だが、用件を話そう・・・・・・おい」 ドミネートは、近くにいた親衛騎士に合図を出した。 すると、ホール奥の幕があがった。 そこには、手足を拘束されたキングとナイトがいた。 マイクルとウェインは状況が、よく飲み込めなかった。 「あれ・・・は?」 「奴等は『レインブラッド』といって、わたしの精鋭部隊なのだが・・・お前た ちに、あの二人が殺せるか?」 「!?」 ドミネートの言葉に、マイクル、ウェインは驚きを隠せなかった。 「何故、そんなことを聞く?」 マイクルが思わず聞き返した。 「わたしは、お前たちが気に入ったのだよ。だから、お前たちが、あの拘束され た二人を殺すことが出来たら、新しい”キング”と”ナイト”として、わたしの 下で働いてもらおうと思っている。どうだ、悪い話ではなかろう?スラムのゴミ 溜から、救ってやろうというのだ」 たしかに、悪い話ではない。拘束された人間を殺すのは簡単だ。しかし、「殺す 」という行為は、二人にとっては禁忌だ。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 マイクルもウェインも悩んだ。栄光は目の前だ。ただ一つの禁忌を破るだけで、 スラムから抜け出すことが出来る。 「さあ、殺るのか?殺らないのか?」 ドミネートは、二本の剣を床に突き立てた。 「オレは・・・オレたちは・・・」 答は出た。二人は剣を手に取る。 「ふは・・・ふはははははは!!!」 ・ ・ ・ 「別に、用があるわけでない。ただ、話がしたくなっただけだ・・・」 「話?めずらしい・・・」 レインブラッドになってからというもの、二人で話す機会など、滅多になかった。 「お前は、今の生活に満足しているか?マイクル」 「唐突な質問だな、ウェイン」 「たしかにな。で、どうなんだ?」 「それは・・・」 マイクルが言いかけた時、部屋の隅に第三者の気配が現れた。 「・・・ヤシャか」 「はい。ドミネート皇帝がお呼びです」 「わかった、すぐ行くと伝えてくれ」 それを聞くと、ヤシャは姿を消した。 「・・・では、行くか、ナイト」 「そうだな、キング」 二人は、部屋を出ていった。 そして、今日もまた、血の雨が降る・・・ |
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