BROKEN's Advanced Vehicle Laboratory

雑感 / 新聞配達のバイトに誘われて

1998年12月15日


今日は朝から雨だった。

土曜日だが、私の卒業研究があまり進んでいないので今日も研究室でプログラムを書いていた。まあまあ良い調子で書けていた。 4足歩行ロボットのプログラムが、まだ不完全であるにしても、ちゃんとアニメーションして歩いてくれた。

ある程度できたところでお腹もすいたから、一度アパートに帰って腹ごしらえをして、それからまた研究を進めよう、そう考えていた。


アパートに帰っても、食べるものは何も無い。雨が降っていて寒いのだが、しかたがないから買い物に出た。

ついでに、新聞屋さんに先月分の代金を払ってこよう。ここのところずっと忙かった。だから、集金に来てもらっても、私はアパートにいなかったのだ。

新聞屋さんに今月分の支払いに行ったら、『新聞配達のアルバイトしないか?』と勧誘されてしまった。「前向きに考えておきましょう」とごまかして、私は夕食の買い物に向かった。


夕食を済ませた後は、大学には戻らずに、HP初アップの準備をした。
ほとんどできておらず、まだ人様に見せられる段階では無いのだが、
「今度の土日にはアップするよ」
と宣言してしまった手前、無理やりアップした。

これがまた面白くない。
中身が無い。
これといって、付け足す気にもならなかったから、そのままパソコンを終了させた。
しかし、テレビを見てもおもしろくない。新聞を読んでもおもしろくない。なんだか心の中がもやもやする。

気分転換をしようと、久しぶりに真夜中のドライブに出た。


車の中で考えた。

昼間の新聞配達のアルバイトのこと。
卒研が忙しくなって、以前のバイトも辞めてしまったこと。

ちょっとだけなら、やっても良いかな?
でも、なんか、そのままそこに就職してしまいそう。
大学を卒業してからやりたいことなんて、別に決まってないし。

それじゃあ私は、何の為に大学に入って勉強をしているのだろう?
何のために勉強しているのだろう??
何のために大学にはいったのだろう???

私が大学に入った年の5月ごろに、「充実した大学生活とは何か」と考えたことがあった。その答えはなんだったろうか?

おもしろくない。やる気が無い。夢が無い。
生きる気力がない。目的が無い。生きがいが無い。
生きるって何だろう?


じゃあ、死んで見るか?

私が死んで、心から悲しんでくれる人がどれだけいるだろう?
死ぬとしたら、身の回りの整理をしておかなくては。友達、家族、お世話になった先生に、ちゃんとお別れをしなきゃ。遺書でも書いてみようかな。

「お父さん、お母さん、先立つ不幸をお許しください。
あなたが私に注いでくださった愛情は、決して忘れません。
しかし、その愛情も、私にはもう必要ありません。
のこった兄と弟に、私の分も分けてあげてください。
何に不満があったのではありません。
ただ、私は生きる希望を見失ってしまったのです。
お父さん、お母さん、私に生を与えてくださったこと、感謝いたします。」

車は行き先も定まらないまま、ひたすら6号線を北へ向かう。


今は運転中だから、対向車線にはいって、目をつぶってアクセルをふかせば、この時間帯なら大型トラックと正面衝突だろうな。
人が死ぬなんて、あっけないもんだ。

こうやって私が事故死したら、みんなはなんて思うかな?まだ遺書も書いてないし、お別れもしてないからただの事故だと思うだろうな。

ここに携帯電話があるから、一人だけでもお別れの挨拶をしておこう。
誰が良いかな? メール友のKさんかな? いや、Nさんのほうが親しいからそっちが良いかな? Hちゃんにしておこうかな?
あれ? なんで身近にいる人が先に出てこないんだろう? ネットワークを通じて得た、まだ顔も見ぬ友達が一番最初に出てきたなんて・・・。

携帯電話のダイヤルを探っているうちに、なぜか、涙がうかんできた。

車はひたすら北へと向かっている。


もし誰か、今の私みたいなことを考える人がいたら、私に電話してくれる人っているのかな? 
いないだろうな、きっと。

俺って、それほど価値の無い人間なんだなあ。無二の親友なんて、いままでいなかったし。私が死んだところで、困る人なんていないだろうな。それほど役に立った記憶も無いし。

つい半年前までいっしょにつらいことも乗り越えてきた友達にも、最近はお互い忙しくなって、ゆっくり話す暇どころか、顔を合わせることもなくなったもんな。

死ぬ前に心残りが無いように、みんなにお別れを言いたかったな。なんてお別れを言えば良いのかな?

いまは好きな人なんていないから、「愛してるよ」なんて言うことは無いんだろうな(笑)
一度言って見たかったな、そんなセリフ。

いや、今から言ってみようか? じゃあ誰に言うんだ??
とりあえず、そのセリフを言ってから死にたいな。

そうだ、どうせ死ぬなら、何かやってから死のう。
なにが良いかな? 歴史に名を残せるようなことが良いかな?
人間、死ぬ気になればなんでもできるだろう?で、なにをしよう???

そう考えつつ、車はただひたすら北へ向かう。


私は何を悩んでいたんだ?
たしか、生きる目的が無かったんだっけ。
毎日の生活で、目の前ばかり見てたから、そのさきどこへ向かえばいいのか、目的を見失っちゃったんだ。

じゃあ、今から死ぬとしたら、死ぬ目的はなんだ?
生きがいか。人間って、何の為に生きてるんだろう??

どれ、ちょっと宗教的になってみるか。人生の目的は…幸せになること、か?幸せってなんだ? 人類の平和と共存?なんかピンとこないなぁ。

私は幸せなんだろうな、きっと。
今の生活は、両親からの仕送りで充分やって行けてる。
いままで大きな怪我も病気もしてこなかったし、大きな壁にぶち当たったことも無い。
苦労らしい苦労なんて、した記憶ないしな。

だから精神的に成長しなかったんだろうな。
なんにも考えずに、この年まで生きてきたんだ。


思えば、つい先日大学に入学したような気がする。
高校時代なんて、まるで1日で終わったような感じだ。
高校、大学と、私は今日まで何をしてきたんだろう?断片的な思い出しかない。

なんにもしてこなかったんじゃないかな?
大学入試が目標だったのかな?
大学1年生のころが、一番楽しかった気がするな。
充分な時間があって。毎日厳しかったけど部活動に打ちこんで。
振られてばっかりだったけど、いくつか恋もしたし。

なにやってんだろう、いまの私は。

もう一回考えをはじめに戻してみよう。
生きる目的ってなんだ? 
その目的を探すことを目的としちゃだめかな(笑)?

そう考えたら、なんだか気が楽になった。

車は交差点を曲がり、これから帰路につく。


いろいろ考えたら、お腹がすいてしまった。
たしか、帰りの道沿いにモスバーガーがあったはず。
そこで何か食べてから帰ろう。

できたてのハンバーガーを、お店の女の子が運んできてくれた。

彼女たちはどんなことを考えながら深夜のバイトに励んでいるのだろう。店の奥から、女の子達の黄色い声が聞こえる。

なんだか元気が取り戻せそうだ。
今夜はぐっすり寝よう。
そうすれば、明日は良い日になりそうだ。


1998年12月5日