電通大 ○木村 浩 福岡 泰宏 中村 弘之
本報告では、代表的な動歩行制御手法と生物規範型制御の関係について述べ、著者らの生物規範型制御による不整地適応動歩行実験の結果を従来型の力学や制御理論に基づく歩容と比較しながら「なぜ生物規範型制御を用いるのか」について述べた。
この研究では、これまで行われてきた脚移動ロボットの動歩行制御の代表的なものとしてZMP規範型と倒立振子モデル規範型を比較し、歩行を安定な振動の持続と捉えることで倒立振子モデル との類似性を見出しました。 そして、CPGと反射の組み合わせや上位中枢による調整により、不整地歩行を行うことができるのではないか と述べています。また、生物規範型制御と動力学規範型制御について比較検討をし、生物規範型制御の将来への期待を述べました。
さて、最近流行のCPG(Central Pattern Generator)ですが、これは神経生理学の実験から考察されている、 脊髄にあるであろうパターン発生器のことです。CPGの実在を裏付ける有名な実験として、 「除脳ネコの実験」があります。
ネコは脳の一部を切除しても、歩行誘発野と呼ばれるところを電気で刺激してやると歩行を行うのだそうです。 また、ベルトの上に立たせてベルトを回転させても、 自然に歩行し、速度に合わせて歩行パターンも 変わっていくのだそうです。 この実験の考察から、歩行が比較的低レベルの神経系の相互作用によって生成されていると考えられるようになりました。
では、このCPGを歩行ロボットの制御に用いることを考える訳ですが、これが一筋縄では行かないのです。私自身、 CPGなどの神経振動子の勉強をし、実際にプログラムを組んで見たのですが、パラメータが非常に多く、それらのパラメータをいかにして決めれば良いのかが解らないのです。文献等を読んでも、経験的に得た、と書いてあり、 この研究発表の質疑応答でも、ヒューリスティクス的に決めた、 と言っていました。簡単に言えば、手探りでやってみて、まあまあよさそうな値だから、これで良しとしよう、というやり方だと言うことです。
海外の研究で同様に神経系を模倣して歩行制御を行っているものもありますが、こちらは動力学規範で先に歩行を行い、 各関節の出力をデータとして得て、これを神経ネットワークに学習させる、という手法を取っていました。
お話としては面白いのですが、さあ、これから実用に足りるレベルまで研究が進むのでしょうか。
電通大 ○福岡 康宏 木村 浩
従来の動力学に基づく手法ではなく、 動的で柔軟な歩行を行う動物の神経系を参考とした制御手法により、不整地の高速歩行を実現しようとしている。
この研究は先の研究(2E11)のシリーズで、 CPGと反射の組み合わせにより歩行を実現しようとしています。 CPGはあくまでパターン発生器ですから、実際に歩行を実現させるには反射運動、とくに伸筋を動かす伸張反射が重要です。 これまでの研究では、CPGと伸張反射のみで平地の歩行を実現しています。
この報告では、さらに胴体の傾きを前庭脊髄反射としてとらえ、さらに小脳の働きとして反射のレベルを自動調整する仕組みを組み込んで、ある程度の傾斜面を歩行できるようにしました。 実機実験のビデオも見せていただきましたが、 うまく行かない場合は、なぜうまく行かなかったのかを考える材料として失敗した映像も公開していました。
質疑応答で、 「2次元の拘束のみでモデルを考えているからCPGのリミットサイクルが収束しているが、3次元になったら発散しやすく、 CPGを使うことができないのではないか?」と言う質問がありました。 なんだか専門的な用語が出てきて、神経振動子を勉強したつもりだった私ですが、ついていけませんでした。
電通大 ○中村 弘之 木村 浩
生物規範型制御に基づく不連続な不整地の歩行を実現するために、視覚の導入と、指令信号の変更 の実験方針について述べた。
これも、先の2E11の研究のシリーズです。 この報告では、視覚から運動までの情報伝達経路の生理学的モデルを参考に、 視覚フィードバック情報を基に、CPGへの入力を「いつ」、「どれくらい」変化させるかを示しました。
東工大 ○池田 貴幸 多美 勉
動物の巧みな運動をロボットで実現するには、
の3点の問題を解決することが重要である。
この研究では、動物の巧みな運動を微分方程式で記述し、運動パターンはバイオメカニクスの観点による解析結果から獲得する。また、微分方程式で記述した運動パターンを拘束条件みなし、ロボットの制御入力を運動パターンの拘束力として用いることで運動パターンを実現する。
なんだか、言っていることが難しく、私は良く理解できていません。 とにかく、説明は本人に聞くのが一番かと思います。 幸い、この研究の最新情報と実験映像が 筆者らのホームページ http://mimi.ctrl.titech.ac.jp/ で公開されていますので、詳しく知りたい方はそちらをご覧ください。
阪大 ○宮下 敬宏 細田 耕 浅田 稔
この研究では、脚式ロボットにおいて外界センサに基づく2つの反射、すなわち 「視覚目標追従に基づく揺動」と 「転倒回避のための踏み替え」の組み合わせと、環境との相互作用から生成される反射的な静歩行を提案した。
これまでも反射を組み合わせることによって適応的なロボットを作ろうとする試みは行われてきましたが、複数の反射が同時に起こったときの反射同士の干渉問題は議論されてきませんでした。
この研究では、制御器によるロボットへの指令を一度仮想出力部に送り、各反射の入出力関係を 表すヤコビ行列を共有化し、各反射のロボットへの出力を直行化することにより、干渉を取り除くことを実現しています。
視覚目標追従自体は、ヴィジュアルサーボといって広く知られている技術です。視覚目標を追従することによって、胴体のバランスが崩れそうになるのを安定余裕と支持脚多角形から観測し、踏み替え反射を行うことによって、安定余裕を一定以上に保つことをしています。ただし、脚の踏み替えには力学的拘束により2歩を要しています。
実機には、ここもTITAN-VIIIを使用しています。 足の裏には力覚センサがついています。
質疑応答では、 「生物学でいう反射は、抹消の神経と筋肉の動きのみで行われているが、この研究で主張している2つの反射を本当に反射と呼んで良いのか?」 などの質問が出ました。 私としては、生物学でも条件反射ならば、一度大脳までセンサ情報が届いて、記憶を基に行動を起こしているのだから、この研究でも 反射と言う言葉を用いて良いと思っています。
「踏み替えは2歩で」これが私の一番の収穫でした。
佐賀大 ○三隅 学 渡辺 桂吾 木口 量夫 泉 清高
この研究では、静歩行の安定判断に支持脚辺まわりのモーメントを考慮し、GAを用いて4脚歩行ロボットの遊脚の最適な軌道を生成した。
まず最初に気を付けなければいけないのは、 GA(Genetic Algorithm 遺伝アルゴリズム)では必ず最適解が得られるという保証がないと言うところです。
この研究では、GAを使ってを使って遊脚の最適軌道を生成したと言っているのですが、実際にロボットが歩行している様子が見えるわけでもなく、この手法によって安定性が増加したのかも比較検討されていないので、私はあまりよい研究発表だとは思いませんでした。