○有川 啓輔(東工大) 広瀬 茂男(東工大)
一般に、歩行ロボットは、その歩行姿勢によって 発揮できる移動性能が大きく異なる。この歩行姿勢と移動性能の関係を把握し、それを歩行ロボットの設計、制御に積極的に利用することはきわめて有効である。 筆者らは、GDAの概念に基づいた普及型歩行ロボットTITAN-VIIIの基本姿勢設計の背景について述べ、実機の各関節の角速度とトルクを計測し、パワーがいずれの関節も小さく抑えられていることから GDAの効果が発揮されていることを示した。
有川さんは、TITAN-VIIIの設計者です。 そして、広瀬先生は4脚移動ロボットの第一人者です。 このお二方、この業界では有名人です。 私の4脚移動ロボットの勉強は、 ほとんど広瀬先生の書かれた論文を基にしています。
さて、GDAについてですが、これは 「原理的に必要なパワーが零の場合に、アクチュエータに必要な 力(トルク)と速度(角速度)の両方を発生させることの無いようにし、 負のパワーの生成を抑制しようとするもの」 です。
(アクチュエータとは、動力源のことです。念のため。 ロボットでは、制御が簡単な直流モータを使用することが多いです。)
もう少し具体的に説明すると、 ロボットの胴体を水平方向に推進するのには、力は必要でなく、 重力に対して胴体を支えるのには、速度は必要無い、ということです。自重を支える関節を機構的にロックさせてしまえば、 ほとんどパワーの損失無しで歩行が可能になるだろう と考えているわけです。 車輪やクローラによる移動に比べて効率が悪いととかく言われがちな脚移動ですが、 機構と歩行姿勢を工夫してGDAを実現することにより、車輪やクローラに劣らない歩行効率を実現できるのではないか、 と考えられています。
ただ、このGDAですが、TITAN-VIIIでは実現できる脚可動範囲が 狭く、また、傾斜面や不整地での歩行時には、あまりこだわる必要は 無いのではないか、というのが私の感想です。
東大 ○椛澤 光隆 加賀美 聡 稲葉 雅幸 井上 博允
脚型ロボットは車輪型などの形態の移動ロボットと比べて不整地の走破性が高く、階段や段差などで行動範囲が限定されないため、実世界を移動するロボットとして非常に有利である。 また、脚型ロボットが実世界の中で活躍するには為には、実際の一般人が使用している程度の段差と勾配をもつ階段を昇降する必要がある。
筆者らは、脚型ロボットの胴体を積極的に傾けて脚可動範囲を 拡大し、更に逆台形歩容と呼ばれる傾斜面に適応した特別な手法を四脚ロボットの階段昇降に導入し、人が日常的に使用している階段での歩行を自律型四脚ロボットに行わせた。
この研究も、実機にはTITAN-VIIIを使しています。 また、この研究ででてくる「逆台形歩容」は、 先に紹介した東工大の広瀬先生が提唱されたものです。
実機を用いた階段上りのビデオを見せてもらいましたが、笑えます。というか、実機を扱う人にとっはゾッとするような場面が出てきます。 センサを用いて階段を認識しているわけではなく、あらかじめ階段のデータを入れておき、人間がロボットを階段に設置してから階段上りを行っているそうです。
質問の時に、私がTITAN-VIIIの設計者である東工大の有川さんがいる席で、
「この脚機構なら、横向きに上らせたほうが可動範囲が広いからもっとスムーズに階段を上れるのではないか?」
とか、 「実機実験の撮影はなかなか大変だが、何回くらいビデオの取り直しをしたのか?」
などという質問をして、場内を笑わせました。 質問に対する回答は、
「頭部にカメラなどの視覚センサを搭載するので、横向きでは進行方向を捉えることができなくなってしまう。
しかし、横向きも考える余地があるかもしれない。」 また、 「お見せしたビデオは、実験のうまく行ったところだけ。
はらはらするから、そう何度も行いたくない実験だった。」とのこと。回答してくださった方も、なかなかユーモアのある方でした。
さて、逆台形歩容についてですが、これは4脚移動ロボットが傾斜面を歩行する際に、 「斜面上方の二脚の水平方向の脚間隔を広げ、斜面下方の二脚の水平方向への脚間隔を狭めることによって、 重心の鉛直投影点が支持脚三角形内に入るよう補償する」 というものです。
感想ですが、私自身はTITAN-VIIIでは、機構上、人間が使うような階段を昇降することはできないだろうと考えていたのに、実際に階段を上っているビデオを見せられて、してやられた、といったところです。 くやしいですね、うちの研究室でも同じTITAN-VIIIがあるのに、 うちのは階段を上ってないんですから。
う〜ん、来年あたり、上れるようにならないかなぁ?
○加藤 宙(東大院) 久保田 孝(宇宙研) 中谷 一郎(宇宙研)
多脚型ロボットにおける基本的な歩行アルゴリズムを提案。制約条件と極めて単純なアルゴリズムにより5脚以上のどのような脚でも歩行を実現することが可能であると主張。 計算機シミュレーションにより、同じアルゴリズムで5脚でも6脚でも歩行が実現できた、と述べた。
先にお断りしておきますが、私としては、この研究発表をあまり面白いと思わなかったのです。ですから、 解説があまり客観的でなくなっていますので、 これを読まれる方は、その分を差し引いてお読みください。
多脚移動ロボットの歩行制御アルゴリズムについては、昔から非常に多くのアプローチがなされてきました。 しかし、脚の本数や機構を問わない、というものは極めてまれです。筆者らは、 「多脚移動ロボットにおいては、接地脚は全体で管理して 協調して胴体の動きにあわせて動かし、遊脚は個別に動かすことが一番自然な制御法であると考える」 と述べています。
しかし、私の感想としては、
といったところから、あまり面白くない、といったところでした。
広島大 ○金子 真 白井 達也 辻 敏夫
これまで行われている脚式機構をもつ多足歩行ロボットの研究の多くは、脚先のみを地面に接地する歩行形態をとっていた。それに対し、脚先以外(脚リンクの途中や胴体)を環境と積極的に接地させるような歩容をとると、外乱的ロバスト性が格段に向上する。
筆者らはこのような歩行形態を特に「包み込み歩容」と呼び、包み込み歩容のもつ対外乱ロバスト性をシミュレーションによって確認し、包み込み歩容の基本動作をTITAN-VIIIを用いた実機実験により確認した。
この研究も、実機にはTITAN-VIIIを用いています。 しかし、使い方には驚かされました。まさか、棒にしがみついてよじ登るようなことをさせるとは、思いもしなかったからです。 実機実験のビデオでは、ただ棒にしがみつくだけならば60度以上で滑り落ちずに姿勢を保持することができており、よじ登りでは、30度近く傾けた棒をよじ登ることができていました。
さて、この「包み込み歩容」についてですが、急斜面踏破能力の向上、重心位置に左右されにくい歩容の構築 などが利点としてあげられています。 脚を動かす順序は、
で、1,2,3 の基本動作の繰り返しです。
これは面白い、しかし、役に立つのか?胴体は引き摺ってるけど、それは引きずって良いものなのだろうか? 歩行ではなく、「ほふく」と呼ぶほうが適切であろう、 というのが私の感想です。